不動産投資コラム

築古の中古マンションが「スラム化」する理由

行政書士棚田 健大郎
築古の中古マンションが「スラム化」する理由

不動産投資において比較的購入しやすくサラリーマン投資家からの人気も高いのが「築古区分マンション」です。

1棟もののアパートやマンションに比べて、築古区分マンションは価格が手頃でローンが組みやすいため、不動産投資の初心者の方が試しに買ってみる、というケースもよくあります。

しかし、実は近年、築古区分マンションの「スラム化」などにより、思わぬリスクが高まっているので注意が必要です。

ここでは、築古区分マンションが抱えるリスクと不動産投資をする場合の注意点などについて解説します。

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進む築古区分マンションの高齢化

1棟丸ごと自分で所有するアパートとは違い、1部屋ごとに所有する区分マンションについては、建物全体を管理組合という集団で維持管理していくことになるため、他の部屋をどのような所有者が、どのような目的で所有しているのかを知ることはとても重要です。

国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現場」の調査によると、区分マンションに居住する70歳以上の世帯主の割合が、平成11年から以下のように変化してきています。


国土交通省/平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状より作成

このように右肩上がりに居住者の高齢化が進んでいるのです。
また、築年数別で見てみると、以下のように築年数が古ければ古いほど、世帯主の高齢化が著しいことがわかります。


国土交通省/平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状より作成

平成元年よりも前に建てられた築古区分マンションについては、所有者のおよそ3割以上が70歳以上の高齢者であることを示しています。

バブル期のマンションブームで買った人たち

昭和と平成を境に、区分マンションの高齢者割合が非常に高くなっている理由の1つは、バブル期のマンションブームにあると推測できます。

いわゆるバブル経済の影響で、昭和61年~平成元年にかけて地価が急激に高騰したことにより、郊外にファミリー物件が多く建築され、都市部にはワンルームマンションがキャピタルゲイン(売却益)を目当てにした投資家向けにどんどん建築されました。

この頃はマンションの高額化、ハイスペック化が進み価格が高騰していたため、その後バブルがはじけて価格が暴落した後も、売りたくてもローン残債が多すぎて売れずにそのまま保有し続けているケースが多いのです。

その結果、築古区分マンションの高齢化につながっていると考えられます。

進む高齢化が不動産投資に与える影響

築古区分マンション世帯の高齢化が進んでいることはデータを見ても明らかですが、それが不動産投資にどのような影響をもたらすのでしょうか。

トラブルへの対応力の低下

区分マンションの維持管理については、区分所有者で組織する管理組合が主体となって行っていきますが、区分所有者の高齢化にともない、迅速な対応ができなくなっているケースがあります。

特に、高齢化が著しい築古区分マンションは、老朽化の影響で修繕トラブルが多く発生するため、なおさらその影響は大きくなります。

また、管理会社に管理委託している場合でも、積極的に相見積もりなどをとって修繕費用を低く抑えようと動く人がいないと、割高な修繕が多く発生し、管理費会計や修繕積立金会計を圧迫してしまうのです。

相続人が放置して管理費、修繕積立金を滞納

高齢化が進むと、やがてやってくるのが相続の問題です。

区分マンションも相続の対象となるのですが、相続をした相続人がその後の管理費や修繕積立金を支払わず放置してしまうケースがあります。

修繕積立金の滞納については、管理組合が主体となって督促しなければならないのですが、高齢者ばかりだとフットワークも重くなり、十分な督促が行われないまま、滞納額だけが増えていってしまうのです。

賃貸化と空室化

同じく国土交通省のデータによると、築年数が古いマンションほど賃貸に出されている戸数の割合が20%を超えるマンション割合が次のように多くなります。


国土交通省/平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状より作成

区分マンションの賃貸割合が多いことは、決して悪いことではありません。
実際、新築のワンルームマンションなどについては、投資目的で買う人がほとんどなので、100%近くが賃貸戸数となるケースも少なくありません。

ただ、築古マンションの場合は、始めから投資目的で購入した投資家ではなく、単に古くなって自分では住まなくなったから賃貸に出しているだけ、というケースが多く、賃借人が決まらず空室ばかりが増えるという状況が発生しやすいのです。

実際、国土交通省のデータから区分マンションの空室状況を築年数別で見てみると、古くなればなるほど空室戸数が20%を超える割合が高くなることがわかります。


国土交通省/平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状より作成

空室のまま放置されていたり、賃貸に出しても決まらなかったりするとスラム化につながり、最終的には修繕積立金の滞納へと発展してしまうのです。

次回は、築古区分マンションの抱えている課題と、「限界マンション」と「掘り出しもの物件」の見分け方についてお話しします。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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