不動産投資コラム

賃貸経営で法人化するメリット④事業承継について

税理士・司法書士渡邊 浩滋
賃貸経営で法人化するメリット④事業承継について

大家さんの相談を数多く受けているなかで、ここ最近で多くなってきた相談内容は、「賃貸経営を、どう子どもに引き継がせればいいの?」ということ。

大家さんの事業承継に最適なのが法人化です。今回は事業継承について解説いたします。

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大家さんの二極化

事業承継した2代目オーナーさんは、大きく2つに分かれる傾向にあります。

ポジティブ大家さんとネガティブ大家さんです。

ポジティブ大家さんは、賃貸経営には積極的で、厳しい賃貸経営を、自らの(サラリーマン)経験を使って、創意工夫をしようとする方です。
ネガティブ大家さんとは、賃貸経営には消極的で、早めに売却して手放すことを考える方です。
この二極化が進んでいるのです。

できれば2代目さんにもポジティブ大家さんになってもらい、不動産を守っていってもらいたいと思うでしょう。
では、どのような方がポジティブ大家さんになって、どのような方がネガティブ大家さんになるのでしょうか?

それは、今まで賃貸経営にタッチしてこなかった方が、ネガティブ大家さんになりやすい傾向にあります。

なぜなら、親御さんが賃貸経営をやっていたことはわかっているけれども、自分の(サラリーマンなどの)仕事に追われて、賃貸経営をやってこなかったのです。
そのような方が、相続を機に、賃貸経営をやることになったとしても、何をしたらよいか戸惑ってしまうのです。

すると、「修繕費の支出が多く面倒」「管理会社・入居者さんとのやり取りが面倒」「借入金が多く残っていて面倒」といって、売却を考えてしまうのです。

ポジティブ大家さんになってもらうには、早め早めに、承継者に賃貸経営に触れてもらうことが必要なのです。

事業承継の残念な現状

遺言書をつくる
しかし、今巷で言われている事業承継対策は、相続「税」の対策がメインで、いかに相続税を引き下げて…というような話なのです。

それで上手く事業承継できるのでしょうか?

例えば、事業承継でよく聞くのが、「遺言書を作りましょう」ということです。

確かに、相続争いを防ぐためには、遺言書は必要だと思います。
しかし、遺言書を作っただけでは、上手く事業承継できるかと言えば、私は全くできないと思っています。

遺言書と事業承継は全く視点が異なるのです。

遺言書が事業承継にならない4つの理由

①遺言書を書こうと思っても、そもそも誰に承継するのか決められない

遺言書には、「◯◯に△△の財産を相続させる」と記載するのが一般的です。

しかし、このように承継の仕方を明確に決めている方は少ないと感じています。
お子さんが2人、3人といた場合に、明確に分けられますか?
親からすれば、子どもは全員かわいいはずです。
優劣は付けられないからと、平等にアパートを兄弟の共有で相続させるようになるのではないでしょうか。

共有は、一見平等そうに思えるのですが、上手くいかないことが、私の経験上多いです。

アパートが共有だから、一緒にアパートの管理をするのかというと、そうではありません。
兄弟のうち、どちらかが一生懸命管理して、もう一人は何もしない場合があります。
しかし、アパートは共有なので、賃料収入は平等に分けなければなりません。
すると、一生懸命管理をしている人にとっては、不満がたまります。

②遺言書の内容を相続人全員に公表しない

遺言書を作っても、内容を表に出さない方が多いのではないでしょうか。
今公表すると、相続争いが勃発してしまうことを懸念するのでしょうが、相続人は、一体誰が何を相続するのかわからない状態では、事業承継の準備ができないのです。

③どう経営していいかを書いていない

遺言書は、法律に沿って書かれることなので、基本的には、必要最低限のことしか書かれていません
当然、賃貸経営をどうやって経営すればいいか、なんて書いているはずもありません。

しかし、相続人は、相続があった瞬間から、賃貸経営を始めなければならないのです。
何を拠り所に賃貸経営をすればよいのか、困惑して当然です。

④遺言書は後ろ向き

遺言書の必要性は頭でわかっていても、書く方は少ないのが現状です。
やはり、自分の死を意識しないといけないという意味で、後ろ向きの話しなのです。
それを積極的に書こうとは思わないのです。

法人化で事業承継とは

法人化で事業承継とは
このような現状の大家さんの事業承継は、「事業」承継ではないと思っています。
「資産」承継です。

真の事業承継をするためには、「経営とはどういうものか」を承継者に伝えることです。

具体的には、生前のうちから賃貸経営をお子さんに経験させ、相続してもスムーズに経営できるようにしてあげることです。

その方法の一つとして、会社組織を作り、お子さんを役員に加えておくのです。
役員にすることで、無理やり、賃貸経営に巻き込むのです。

役員(株式会社の場合には取締役)にすることで、会社法上の責任が生じます。
「あなたは、役員として、会社の資産を守る義務がある」と目に見える形で現実化すれば、「自分が何とかしなければ」と自覚が生まれます

すると、徐々に賃貸経営に興味が湧いてきます。
興味を持てば、賃貸経営の現場に参加させていくのです。
現場とは、管理のための見回りや清掃だけではなく、賃貸経営の判断が迫られる現場です。

経営は、一つ一つ、自分の責任で判断することです。
判断一つで、結果が変わってきます。

それは、非常にシビアな部分でもあれば、やり甲斐に感じる部分でもあります。
空室を埋めるための判断・実行が、良い結果になったとき、経営が楽しくなります。
「賃貸経営とは何か」「どう経営すればよいのか」いち早く経験させることが本当の事業承継です。

法人化は、事業承継には最適な場作りと言えるでしょう。

まとめ

  • 大家さんの事業承継は深刻な問題!
  • 遺言書を書いただけでは事業承継にはならない。
  • 法人化をして子供を経営に巻き込むことが事業承継の場になる。

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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