不動産投資コラム

法人化するメリット⑤ 認知症対策⑥資産拡大

税理士・司法書士渡邊 浩滋
法人化するメリット⑤ 認知症対策⑥資産拡大

連載「不動産投資で法人化の目的とタイミングを知る」いよいよ今回で最終話になります。
6つある法人化の目的の5つ目(認知症対策のため)と6つ目(資産拡大のため)をお伝えします。
※法人化の目的1~4は、連載ページからご覧ください。

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法人化の目的その⑤認知症対策のため

昨今、認知症になる方が増加傾向にあります。
65歳以上の認知症の方は、10%を超えているとも言われています。

認知症になると、賃貸経営はどうなるのでしょうか?
賃貸経営は、自動的に家賃が入ってくるだけだから、認知症になってもあまり関係ない?

そんなことはありません。賃貸経営において認知症は、以下のようなリスクが考えられます。

1.契約ができない

賃貸契約・更新契約の締結、家賃交渉、リフォームなどの請負契約、売買契約、借り入れ(金銭消費貸借契約)などの契約行為は、意思能力が必要です。
認知症となり、意思能力が不十分と判断されると、契約は無効になります

つまり、賃貸経営にかかわる契約行為ができなくなります。

2.本人でないとできない大家業務がある

預金の引き出し、定期預金の解約、アパートのクレーム対応、滞納家賃の督促など、本人または権限がある代理人以外できないものがあります。

預金の引き出しができないと大規模修繕ができないなどの支障をきたします。

3.悪質な業者に騙される危険性がある

認知症になると、判断が不十分となり、契約を理解しないまま契約してしまうこともあるようです。
高齢者を狙った高額リフォームなどでお金を騙し取れられるなどが考えられます。

つまり、安心で健全な賃貸経営ができなくなる可能性があります。

対策としては、本人でなくても、意思表示ができる人に名義を変えておけばよいことになります。

事業継承

賃貸物件を生前に、法人を設立して、法人に移転することで、賃貸経営を自分から切り離すことができます。
相続人に経験がなく、完全に任せられる状況でなければ、法人の役員として賃貸経営に関わり、徐々に、賃貸経営を任せていくこともできます。

最近は、民事信託が認知症対策に効果的と注目されていますが、まだまだ普及していません。
民事信託をするためには、専門的な知識が必要で、専門家に頼むと高額な費用になる場合があります。
また、金融機関でも民事信託に対応していないところが多く、信託をしたくても、できないことがあります。

法人化であれば、信託ほどの費用はかからず、節税効果も見込めます
民事信託だけが、認知症対策ではないということは覚えてもらいたいことの一つです。

※民事信託とは、信託のひとつで、受託者を金融機関などにせず、相続人となる家族が営利を目的とせずに引き受ける信託のことです。

法人化の目的⑥資産拡大のため

「物件を増やしていきたいなら法人で購入した方がよい」とアドバイスをしています。

資産拡大には、金融機関から融資を受けて物件を購入していくことが必要です。
個人での融資は、上場企業にお勤めだとか、公務員などの属性が高い方は受けやすいですが、3棟くらい購入した途端に、融資が出なくなる方をよく見ます。

絶対に法人の方が融資が受けられると断言はできませんが、個人よりも法人の方が、融資が受けやすいポイントが3つあります。

1.融資上限額

個人の場合、「サラリーマンの年収の◯倍まで」とか、「◯億円まで」などの上限がある金融機関があります。
上限まで一杯になってしまうと、それ以上は借りられなくなってしまうのです。

法人であれば、上限がない場合がほとんどなので、よい決算書にしていけば、融資を受けて資産拡大することも可能になります。

2.年齢制限

個人の場合、借入金の返済期間の最長を、「80歳になるまで」等と制限されることが一般的です。
地主さんが相続対策でアパートを建築する場合には、子供を連帯保証人にすることで、借りられる場合はあります。
しかし、土地から購入する不動産投資は、80歳を超える返済期間の融資は難しいです。

法人の場合には、個人に相続が発生したとしても、存続することになるため、年齢によって借りられないことはありません
ただし、代表者の方がご高齢の場合には、承継者を役員に入れて、連帯保証をしてもらうことで融資できることがあります。

3.融資担当者のやる気

金融機関では、一般的に法人融資に力を入れています。
個人の融資額を伸ばすよりも、法人の融資額を伸ばすことが求められ、評価されるのです。

したがって、個人の融資よりも法人への融資の方が、金融期間の担当者が積極的になります。
融資ができるかどうかは、最終的には、担当者が「貸したい」と思う気持ちが強いかどうかで決まると言っても過言ではありません。

多少、属性や物件条件が厳しくても、稟議書をしっかり書いて上司を説得できる担当者であれば、融資してもらえる可能性が高まります。

まとめ

  • 認知症になると賃貸経営ができなくなることもある。
  • 個人よりも法人の方が融資に積極的なことがある。
  • 5つの目的を明確にして法人化をすすめよう!
法人化6つの目的
その1 個人の税金(所得税・住民税・事業税)の節税のため
その2 法人特有の節税のため
その3 相続税の節税のため
その4 事業承継のため
その5 認知症対策のため
その6 資産拡大のため

手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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