賃貸経営で法人化するメリット①個人の税金を節税
「法人化した方がよいのでしょうか?」
賃貸経営で法人化をしたいという相談は後を絶ちません。
そのときに最初に聞くのが「なぜ法人化をしたいのでしょうか?」ということ。
「法人にした方がよいと聞いたので…」
「節税になると思って…」
漠然とした回答が返ってきます。
法人化するとどんな効果があるのか、節税以外にも目的があるのか。
私は法人化の目的は6つあると思っています。
ひとつひとつ解説しながらまとめていきます。
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個人の税金(所得税・住民税・事業税)の節税
「法人化すると節税になる」ということはわかっていても、どのような仕組みで節税になるかをほとんどの方が理解していません。
ここを理解しないと、どのくらいの規模になると法人化による節税メリットが出るのか判断できないのです。
個人の税率と法人の税率の差を利用する
個人の所得税は超過累進税率です。
所得が高くなればなるほど、高い税率で課税されてしまいます。
また、不動産賃貸の所得だけではなく、給与や年金、事業での所得が全て合算された所得で、税率が決まります。
賃貸物件が増えて、所得が増えれば増えるほど、高い税率で課税されます。
もともと高い年収のサラリーマンの方が、賃貸物件を持つことで、さらに所得が増えると、高い税率で課税されます。
所得税の税率表
課税される所得金額 | 税率 | 金額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(※)住民税は一律10%です。
それに対して、法人税の税率はどうでしょうか?
平成30年度の資本金1億円以下の普通法人の実効税率(法人税、法人事業税、法人住民税など実際に負担する税額の所得金額に対する割合)は下記になります。
所得金額 | 税率 |
---|---|
400万円以下 | 25.99% |
400万円超800万円以下 | 27.57% |
800万円超 | 33.59% |
計算式が複雑なので、省略しますが、大ざっぱには、3段階の税率しかないのです。
しかも、所得800万円を超えた場合には、超えた部分には一定の税率になり、それ以上あがることはありません。
個人の場合、所得が330万円を超えると所得税・住民税で、30%を超える税率になるため、所得が高くなればなるほど、法人の方が有利になります。
具体例で比較してみましょう。
【例】所得2,000万円の人が、法人化により1,000万円移転した場合
個人で所得2,000万円の場合
個人の所得税・住民税・事業税の合計 約817万円
個人で所得1,000万円、法人で所得1,000万円の場合
個人の所得税・住民税・事業税の合計 約316万円
法人の法人税・住民税・事業税の合計 約270万円
個人・法人合計586万円
節税額(差額):231万円
※役員報酬は支出していない所得で計算しています。平成30年4月1日以後事業年度の税率で計算しています。
このように低い税率を使うことで節税になるのです。
所得分散による税率の差を利用する
個人事業主の場合、基本的には実際に使った経費しか控除することはできません。
一方法人の場合は、給与を支給することで、支払った給与は原則、法人の損金にできます。そして給与を受け取った個人は、給与所得で課税されます。
給与所得の場合、給与額に応じた「給与所得控除」という一定額を差し引いた額に税金がかかります。
法人化して自分自身に役員報酬を支給し、家族に給与を支払う形にすれば、給与所得控除を受けることが可能になるのです。
つまり、実際に経費を使わなくてもそれぞれの給与から給与所得控除額を差し引くことができ、課税対象となる所得額が少なくなるというわけです。
さらに、所得税は所得が上がるほど税率も上がる超過累進税なので、給与を支払う人数を増やして所得を分散すれば、税率を低く抑えることができます。
ただし、名ばかりの役員に給与を支払うと、税務署から否認される可能性があります。役員としての実態が必要になります。
どのくらいの規模で法人化するとメリットが出るのか
正確には数字でシミュレーションしてみないとわかりませんが、目安としては「所得800万円以上」と言っています。
所得というのは、収入金額-必要経費(減価償却などを含む)で計算されるものです。
よく収入規模(例えば2,000~3,000万円くらいの家賃収入)で法人化の目安を図ろうとする方がいらっしゃいますが、私はナンセンスだと思っています。
家賃収入が5,000万円あっても、減価償却が大きく必要経費が4,500万円あれば、所得は500万円です。
家賃収入が1,000万円でも、減価償却が少なくなって必要経費が100万円しかなければ、所得は900万円です。
あくまでも税金は所得に対して課税されるものなので、所得で判断をするべきなのです。
まとめ
- 法人化の目的は節税だけではありません。まずは目的をしっかりと持ちましょう。
- 法人化による節税の理由は、低い税率と所得分散です。
- 法人化の目安は、所得で800万円以上。家賃収入で判断するべきものではありません。
不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは
第1回:賃貸経営で法人化するメリット①個人の税金を節税
- 第2回:賃貸経営で法人化するメリット②法人特有の節税
- 第3回:賃貸経営で法人化するメリット③相続税の節税
- 第4回:賃貸経営で法人化するメリット④事業承継について
- 第5回:法人化するメリット⑤ 認知症対策⑥資産拡大