要注意!中古マンションの高額な修繕工事の実態とは
これまでの「中古マンションの落とし穴」シリーズで解説した、中古マンションのなかには、十分な修繕積立金がストックされていないものもあり、購入後のメンテナンスに大きなリスクを抱えていることはお分かりいただけたでしょうか。
最終回では、実際にどのような修繕が必要になるのかを具体的にみていきましょう。
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高額な費用がかかる配管のメンテナンス費用
鉄筋コンクリートのマンションの場合、建物の躯体よりも建物自体に付随する設備の方が耐用年数は短いため、先に交換などの費用がかかり始めます。
なかでも高額なのが「配管」のメンテナンス費用です。
配管とは、マンションの各部屋へ給水し、そして排水するための管のことで、各部屋のメーターボックスまでの縦管が管理組合負担、メーターボックスから居室の床下の横管が所有者負担となるケースが一般的です。
給排水管の2通りのメンテナンス
給排水管のメンテナンス方法としては、大きく分けると「配管更生」と「交換」の2種類があります。
「配管更生」
最近のマンションについては、樹脂管を使用しているため錆びる心配はほとんどありませんが、築古マンションの配管は「硬質塩化ビニルライニング鋼管」や「亜鉛メッキ鋼管」といった素材が使用されているため、築15年〜20年くらいで配管内部が錆びるケースが一般的です。
配管内部の錆びを落とすために行う施工を「配管更生」といいます。
具体的には、給排水管に高速で気流を流して、特殊な砂や石などの研磨剤を投入して配管内部を研磨し錆びを落とすのです。
その後、エポキシ樹脂を投入して配管内部をコーティングすることで、15~20年程度はそのまま使用できます。
費用としては1戸あたり給排水管合わせて60万程度かかるため、戸数が増えれば施工費用も多額になります。
「交換」
配管更生が行われていないマンションについては、築30年ほどで給排水管の交換が必要になります。
配管を交換するためには、室内の床材を剥がす必要性が出てくるため、多額の費用が必要です。
具体的には、共用部の配管交換で1 戸あたり70万円程度、専有部の配管交換で1戸あたり100万円程度の費用がかかるため、非常に重い負担となります。
給排水管は費用が捻出できないからといって放置していると、水漏れが発生してさらなる修繕費用が必要になるため、時期が来たら借入をしてでも施工しなければなりません。
エレベータのメンテナンス費用
高さが31mを超えるマンションについては、エレベータの設置が義務付けられています。
そのため、およそ6階以上のマンションには、エレベータが設置されていると考えてよいでしょう。
エレベータはマンション設備の中で最もメンテナンス費用がかかるともいわれており、修繕積立金の残高が乏しいマンションにとっては命取りとなることも少なくありません。
エレベータにかかるメンテナンス費用としては、主に「維持」と「リニューアル」に区別されます。
エレベータの2種類の維持費
エレベータは建築基準法によって、毎月定期検査が必要になるため、メンテナンス会社との契約が必要です。メンテナンス契約には次の2つの種類があります。
フルメンテナンス契約
毎月の定額料金の中に、消耗品の交換費用や修理費用など、かなり広範囲にわたってカバーされる契約です。
突発的な修理が発生しても、別途費用がほとんどかからないというメリットがありますが、月額料金は割高になります。
POG契約
(P)パーツ、(O)オイル、(G)グリスなどの交換、補給、塗布のみ定額料金に含まれますが、その他の費用についてはその都度実費でかかる契約です。
月額料金はフルメンテナンス契約の半額ほどに抑えられますが、修理が発生した際は実費を負担しなければなりません。
築古マンションでPOG契約になっている場合は、修理費などが発生した時に備えて一定の予備費を貯蓄しておく必要がありますが、修繕積立金に余裕がないと、その都度持ち出しになってしまう恐れがあります。
エレベーターリニューアル工事
エレベータの寿命は25〜30年程度といわれていますが、早期に部品の供給が停止してしまうケースもあるため、それよりも早めにリニューアル工事が必要になる場合もあります。
エレベータのリニューアル工事にかかる費用は、1台あたり1,000万円を超えることも珍しくないため、十分な修繕積立金が貯蓄されていないと大変なことになります。
築30年以上のマンションで、過去にエレベータのリニューアル工事履歴がない場合、購入直後に多額の費用が必要になる可能性がありますので十分注意しましょう。
修繕積立金がないとどうなる?
今回ご紹介した配管やエレベータについては、たとえ修繕積立金残高が足りなかったとしても、安全上の問題から施工を先延ばしにすることはできません。
では、不足する金額はどのように工面することになるのでしょうか。
一括拠出金で高額負担
不足する金額を戸数で割って各戸の所有者が「一括拠出金」として負担するやり方です。
不足する金額にもよりますが、総戸数が30戸にも満たないような小規模なマンションになると、1部屋あたり100万円以上の負担となる可能性も十分ありえます。
管理組合で借金をする
一括拠出金を集めることが難しい場合は、管理組合名義で借金をするしかありません。
毎月の返済額が発生するため、当然修繕積立金は値上がりすることになります。
また、借金を抱えているマンションについては資産価値も下がってしまうため、今後売却しようと思っても相場よりも安い金額でなければ買い手が見つからなくなってしまいます。
中古マンションを購入する際に必ずチェックすべき2つの書類
今後の修繕費用をまかなえる十分な修繕積立金がない「限界マンション」を見分けるためには、少なくとも売買契約を締結する前に下記2つの書類を確認する必要があります。
重要事項調査報告書
区分マンションの管理会社が発行するもので、現在の修繕積立金の月額及び、積立金の残高を確認できます。
また、今後修繕積立金が値上がりする予定が決まっている場合もその旨が記載されていますので、見落とさないよう確認しましょう。
長期修繕計画書
今後15〜30年の修繕計画と工事予算が記載されていますので、その金額と重要事項調査報告書に記載されている残高を比較して、現在の修繕積立金で十分足りるのか、それとも大幅な値上げが必要なのかを見極める必要があります。
まとめ
築古マンションは、ものによっては非常に安い金額で手に入るため、初心者投資家の方はつい買い急ぐ傾向があります。
誤って限界マンションに投資してしまうことのないよう、上記2つの書類は確認しましょう。
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- 第1回:築古の中古マンションが「スラム化」する理由
- 第2回:「スラム化」するマンション…あるはずの〇〇がない
- 第3回:買ってはいけない!築古の「限界マンション」
第4回:要注意!中古マンションの高額な修繕工事の実態とは
- 第5回:ローンが通らない!建築基準法違反の中古一棟
- 第6回:住宅ローンが通らない中古マンションの特徴
- 第7回:買ってはいけない!築古の「雨漏りマンション」
- 第8回:中古マンションにひそむ水漏れ、故障リスク実例
- 第9回:「限界マンション」が抱える負のスパイラルとは
- 第10回:神戸市に建つタワーマンションの深刻な「残高不足」
- 第11回:神戸市は管理放置された限界マンションを救えるか