不動産投資コラム

契約更新の季節!大家が知っておきたい更新料の相場

2019/03/25
行政書士棚田 健大郎
契約更新の季節!大家が知っておきたい更新料の相場

3月、4月は引っ越しシーズンですね。この時期、引越しはもちろん、賃貸借契約の契約更新も多くあることでしょう。

更新の時期には、大家さんから更新料や家賃の値上げ、または値下げについての相談が多い印象です。

そこで今回は、賃貸借契約における「更新」「更新料」そして、更新にあたっての家賃の変更について、2回に分けて解説いたします。

【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら

賃貸借契約における「更新」とは

一般的な賃貸借契約は2年間の契約期間となっているため、2年ごとに契約の更新が必要となります。

法律上、2年間と決まっているわけではありませんが、借地借家法で「1年未満の契約期間を定めると、期間の定めがない賃貸借契約とみなす」という賃借人を保護する規定があることから、契約期間を2年間とすることが一般的となっているのです。

「更新料」とは

契約更新をする際に、賃借人が大家に対して支払う費用を「更新料」といいます。
わかりやすくいうと、更新時に支払う礼金のようなものです。

更新料は必ず必要というわけではなく、賃貸借契約書に更新料を支払うという規定がなければ、支払いの必要はありません

関東エリアについては、賃貸の客付けを不動産会社や管理会社に依頼した場合、賃貸借契約書の雛形に最初から更新料について記載があるケースが一般的です。

更新料は大家に入る?管理会社に入る?相場は?

更新料については、原則として「大家」に受け取る権利があります。
賃貸借契約書にも、賃借人が賃貸人である大家に対して支払うと記載があるはずです。

ただ、実務上、更新の手続きについては、管理会社に依頼するのが一般的なので、更新料の振込先は管理会社になります。その後、更新の手続き費用が差し引かれて大家の口座に残金が着金する流れです。

管理会社に支払う手続き費用については、概ね、更新料の50%が相場です。

そのため、賃借人の更新を促す目的で更新料をあえてゼロで賃貸借契約を結んでいる場合、大家は管理会社に対して、手続き費用を実費で負担しなければならないため注意しましょう。

詳しくは後ほど解説します。

保証料・火災保険料/入居者が支払うその他の費用

更新のタイミングで入居者が支払うその他の費用としては、火災保険料保証料があります。

火災保険料

火災保険

火災保険については、当初の入居と合わせて2年間で契約を結んでいる場合が多いため、更新のタイミングで同時に火災保険についても更新が必要です。

通常は、更新の手続きをしている不動産会社が、火災保険の代理店であるケースが一般的なので、更新の契約書と一緒に、火災保険の更新書類も送られてきます。

火災保険料については、保証内容や保険会社によって料金が異なりますが、2年間で15,000円~20,000円が相場です。

法的には強制的に火災保険に加入させることはできませんが、大家としては賃借人が無保険で入居することは非常にリスクが高いため、通常は「入居条件」として、指定の火災保険への加入を義務化することが多いです。

保証料

入居時に保証会社を利用している場合については、保証会社との更新も必要になるため保証料がかかります。

ただし、保証料については2年ごとではなく、1年ごとに発生する場合もあるため注意が必要です。
相場としては、1年で1万円前後が目安となります。また、保証期間中に家賃を滞納すると、保証料が値上がりするという場合もあります。

「更新料ゼロ」の物件の場合

更新料については、必ずしも必要ではありません
例えば、賃貸経営の戦略上、できる限り長く入居してもらうために、更新料をゼロとするケースは珍しくありません。

更新料なしの場合

ただし、先ほども少し触れましたが、管理会社の更新手続き費用についてはかかることに注意が必要です。

通常、更新料は管理会社が受け取ったのち、手続き費用として概ね50%を差し引いて大家に対して送金されます。

つまり、更新料の実質的な取り分は以下のようになっています。
大家50%:管理会社50%

ところが、更新料をゼロにすると手続き費用だけがかかることになるため、次のようになります。
大家-50%:管理会社50%

更新料をゼロにしても、手続き自体は行うことが一般的なので、大家が手続き費用を実費で負担して管理会社に支払う必要があるのです。管理会社によっては手続き費用を下げてくれるケースもありますが、手続きをする以上費用がかかることを頭に入れておきましょう。

更新料の設定の仕方

更新料の金額については、法的に明確な規定があるわけではないため、金額については自由に設定することができます(※高額過ぎると、裁判で争われる場合もあります)。

あまりにも高い金額を設定すると、賃借人がどんどん退去してしまうため、賃貸経営が安定しません。そのため、通常は家賃の1ヶ月分程度で設定することが一般的です。

更新料については地域差があり、東京都の物件については更新料1ヶ月分が主流となっていますが、埼玉県、神奈川県、千葉県などについては0.5~0.8ヶ月程度と若干割安に設定する傾向があります。

また、関西地方や九州地方、北海道などについてはそもそも更新料を取るという慣習自体が薄く、更新料を取らないケースが多いようです。

ここまでは、更新料に関する基本的な知識について解説してきました。
次回 は、更新手続きの具体的な流れや、更新にあたっての家賃の変更(値上げ、値下げ交渉)のポイントについて解説します。

関連記事

普通借家と定期借家の違いは?賃貸借契約のキホン
更新契約前に受け取った更新料の計上方法は?

手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?

棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

記事一覧