不動産投資コラム

知らないと失敗する、不動産投資のリスクと失敗事例

2018/10/16
行政書士棚田 健大郎
知らないと失敗する、不動産投資のリスクと失敗事例

アパート経営、マンション経営をはじめとする不動産投資で失敗してしまう人は、「不動産投資のリスク」について勉強不足、理解不足であることが多いです。
しかし、すでにある程度のリスクは可視化されていて、対策さえできれば不動産投資は初心者でも難しいことではないのです。

今回は必ず知っておくべき不動産投資のリスク8種類、失敗事例について、初心者でもわかりやすく解説いたします。

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1.空室リスク

不動産投資で得られる収益の大半は「家賃収入」です。不動産投資をするために組んだローンについては、「家賃収入」で返済に充てることを想定しています。
ですから、家賃が入ってこないと、当初の返済計画は大きく狂うことになります。

部屋が空室になって家賃が入ってこないと、ローンの返済に自己資金をあてることになってしまいます。

空室リスク対策
入居者募集中-管理会社に任せっぱなしにしない

購入する物件選びの時点で、立地は賃貸需要がある地域か、また物件自体に入居がみこめる物件か、冷静に見極める必要があります。
賃貸需要の少ない地域や、競合する物件が多い地域で物件を購入してしまうと、予想よりも空室期間が長引いたり、入退室が多く発生したりするなど、空室率が上がってしまうため注意が必要です。

また、入居率を上げるためには、賃貸募集についても賃貸管理会社任せにせず、積極的に行動することも対策のひとつです。
・入居者募集の状況について積極的に賃貸管理会社に確認し、もし必要があれば近隣の不動産会社を回って募集図面を配る
・退去後の現状回復工事では最低限の掃除をするだけでなく、古くなった設備を徐々に取り替えたり、お洒落なアクセントクロスを貼るなど、他の物件との差別化を考える

時にはこういった行動も必要になるでしょう。

2.家賃滞納リスク

家賃滞納の対策というと、「入居審査を徹底すること」と言う専門家の方がいますが、決してそれだけではありません。

むしろ入居審査を厳しくしすぎると、かえって不動産会社から紹介を敬遠されてしまい、空室リスクが大きくなる危険性があります。

一昔前であれば、終身雇用が成立していたため、入居審査を徹底すれば、入居後になって突然家賃を滞納することはほとんどありませんでした。
ところが最近では、数年で転職してしまう人が増えたため、いくら入居時の審査を厳しくしたところで、滞納リスクを回避することは難しくなっています。

対策としては次の2つが有効です。

家賃滞納対策
家賃滞納督促

対策1:連帯保証人を強化する
賃貸契約で重要なことは、契約者本人と連帯保証人です。

通常であれば、連帯保証人は1人ですが、それを2人立ててもらうことで、家賃滞納が発生した際のリスクヘッジとします。
どうしても2人立てられない場合は、家賃保証会社を利用してもらうとより効果的です。家賃保証会社を利用すれば、家賃滞納は実質的に発生しなくなるため、一番のリスクヘッジとなります。
対策2:迅速な督促
家賃滞納はいくらリスクヘッジをしても完全に回避することはできません。

そのため、滞納を「回避」するという考えから、滞納を「抑制」するという考えのほうが重要になってきます。
滞納を抑制するために効果的なのが、「迅速な督促」です。

一般的には、家賃滞納が発生しても、すぐに本人や連帯保証人に連絡をせず、数日様子を見るという賃貸管理会社も多いかと思います。
ただ、それでは賃借人に家賃滞納の重大性が伝わりません

そこで、家賃滞納が発生したら即日電話をして督促する癖をつけてもらうことで、賃借人に
「家賃滞納は絶対にあってはならない」という意識を植え付けることができるのです。

実は家賃滞納の多くは、払えなくて滞納しているのではなく、払えるけれどほかの支払いを優先しているから払えない、というケースがよくあります。
人は早く督促される債務から優先的に返済しようとするため、滞納発生時の迅速な対応は、かなりの滞納抑止力となります。

3.金利上昇リスク

日銀の施策により低金利がつづいているため、変動や、5年や10年の期間固定金利で事業融資を組んでいる投資家も多くいると思われます。その際にリスクとなるのが、金利の上昇です。

諸外国と比較すると日本の金利はまだ低い状況が続いています。
しかし、金利が上昇して利回りが悪化しても返済が厳しくならないように、収支計画は余裕をもった返済シミュレーションが大切になります。

4.修繕費用リスク

とくに中古物件で注意したいのが修繕費用リスクです。
エアコンや給湯器、キッチンや床材の交換、壁紙の張替え、トイレの修繕など、10年前後でリフォームが必要となることが多いです。
大規模なものでは屋上防水工事や鉄部塗装、外壁工事や雨漏り工事など多額な修繕費用がかかることがあります。

修繕費用リスク対策

対策としては、ワンルームマンション投資の場合は、管理組合に大規模修繕の予定を確認し、事前に修繕費用を見込んでシミュレーションすること、アパートなどの一棟投資では購入前に修繕履歴をよくチェックするようにしましょう。

修繕履歴についてはこちらの記事をご覧ください。
中古の修繕履歴を見落とすな!区分マンションの場合
中古の修繕履歴を見落とすな!一棟アパートと設備

5.家賃下落リスク

空室とおなじく、ローンの返済にこまることがあるのが、「家賃下落リスク」です。

当初見込んでいた金額では、部屋が埋まらずに家賃を下げて入居者を募集した場合、見込んでいた家賃収入を得られず、ローンの返済が苦しくなる場合があります。
特に、新築の物件は相場よりも高めの家賃設定をしている場合があり、数年経過後に家賃が下落することがあります。

家賃下落リスク対策

最近はインターネットで周辺物件の家賃を調べることができるので、自分が買おうとしている物件の家賃が相場より高く設定されていないか、家賃が下落した場合でもローン返済ができるか、自身でシミュレーションすることが大切です。

ローン破綻しないためには、あらかじめ空室や家賃下落を想定し、万が一のときにも自己資金でローンが返済できるよう、「余裕のある資金計画」を立てておくことが重要です。

6.債務リスク

債務リスク アパートローン

不動産投資最大のリスクそれは「債務リスク」です。
このことは、不動産会社の営業マンはほとんど教えてくれません。債務リスクとは簡単に言うと、「借金をすることによるリスク」のことです。

不動産に投資するためには、投資家の名義で金融機関から融資を受ける必要があります。
その金額は数百万円という単位ではなく、数千万円から億を超えることもあります。
いくら投資とはいえ、このような多額の借金を背負うことになるのは、大きなリスクであると言えます。

債務リスク対策

債務リスクを回避するためにすべきこと、それは綿密な「返済シミュレーション」を事前に行うことです。

アパートローンは、債務ではあるものの「返済するあてがある債務」でもあります。
というのも、アパートローン返済の原資となるのは「家賃収入」であり、自分の給料ではありません
この点が、普通に銀行で借り入れする点と違います。

毎月の返済に充てる収入の目処がある上での借金のため、返済計画がしっかりしていれば、債務リスクは十分リスクヘッジが可能なのです。

ポイントとしては、毎月得られる家賃収益、不動産の維持にかかる経費、借入金利や返済方式などを盛り込んで正確な返済シミュレーションを立てることです。

なお、不動産投資に失敗する投資家のなかには、
「銀行が融資してくれる=この投資にお墨付きをもらえた」勘違いするケースがあります。
銀行がアパートローンの審査を通す基準は、投資が成功するから融資をするのではなく、万が一失敗しても不動産を売却すれば最悪回収できると判断したからです。
この点を勘違いすると、返済シミュレーションがおろそかになりますので注意しましょう。

7.火災リスク/災害リスク

購入した物件で火災が出た、水害や事件などの不測の事態がおきるリスクもあります。

災害リスク対策

この辺りは初心者の方がよく懸念するリスクの一つですが、保険である程度カバーすることができます。
また、管理を管理会社に任せている場合、管理会社で対応してくれることが多いです。

火災保険については下記の記事を参照下さい。
不動産投資に必要?大家さんの火災保険[前編]
注目すべき3点!大家さんの火災保険[後編]

また、地震や災害についても、どのような対応が必要になるかですが、こちらも管理会社が対応することが多いです。
ただ、大家としても入居者の安全には配慮が必要なので、災害につよい場所、建物を選ぶことは大切です。

不動産投資における「地震リスク」と「耐震基準」
大地震発生!事前の対策と発生時に大家がすべきこと
何をどこまで補償?投資家が知っておくべき地震保険

物件オーナーとしては、投資物件で損失がでないように、保険でカバーしつつ、カバーできない部分については自身で把握しておくことが必要です。

8.入居者の死亡のリスク

物件を複数所有し、長年保持していると必ず出てくるのが、入居者の死亡です。
こちらは事件として扱うこともあれば、病院で亡くなることもあるので、対応が異なってきます。

入居者死亡の対応

入居者が死亡した際の対応については下記の記事を参照ください。

入居者が亡くなったら【前編】必要な対応と賃借権

他殺や事件が起きた際は、その後の入居付けに苦労したり、家賃を下げるといった対応が必要になってくるでしょう。
この辺りは、確率論になるのでどのあたりまでリスクに備えるか、「余裕のある資金計画」を立てておくことが重要になるでしょう。

失敗事例

続いては、不動産投資の失敗事例についてです。
不動産投資に失敗するほとんどの人には、ある「共通点」があります。
それは下記2つの「よくある失敗事例」を読むことでおわかりいただけます。

失敗事例1

投資用のワンルームマンションを販売している不動産業者から「家賃10万円は取れる中古マンションだから」と言われ、それをベースにしたローン返済計画を立てて購入。
ところが実際は賃貸物件が供給過剰なエリアで、家賃8万円程度がやっとの状況だった。結果、不動産投資開始直後から赤字キャッシュフローになってしまった。

失敗事例2

不動産業者から割安な「掘り出し物中古アパート」があると言われ、確かに相場よりも安かったためローンを組んで購入。
ところがその物件はメンテナンス状態がひどく、屋上防水や、給湯設備などの改修工事などにかなりの修繕費用がかかってしまった。
MEMO
なぜ不動産投資に失敗してしまったのか

この2つの事例の共通点、それは不動産業者や営業担当者のトークの中で「メリット」だけを「鵜呑み」にしている点です。

そして、このように鵜呑みにして失敗した人は、必ずと言っていいほど「〇〇会社に騙された」「〇〇さんに騙された」などと言い訳をします。

そもそも不動産業者は営利企業ですから、メリットだけを強調して営業をする不動産業者は数多く存在しています。
成功している不動産投資家は、このような営業トークを参考にはしても、絶対に「鵜呑み」にはしません。

先ほどの事例1で言えば、必ず自分自身でも周辺の家賃相場を地元の不動産業者に聞いて回る、事例2で言えば、実際に現地まで建物の状態を確認しに行く、などといったことをしていれば、失敗は未然に防げたはずです。

このように、不動産投資の失敗事例の多くは、不動産業者の言うことだけを「鵜呑み」にした結果であるということをよく覚えておきましょう。

おわりに:初心者でも失敗しにくい不動産投資の仕組み

本に腰掛けるビジネスマン
不動産投資はリスクを事前に理解しておくことがとても重要です。

費用的にも大きな投資になるので、空室や家賃下落も加味したシミュレーションをたてて、不測の事態には損失が出ることがないように保険などでカバーし、しっかりとした対策を行いましょう。

不動産投資の知識と、具体的なリスクを理解して適切な対策を施しておけば、初心者でも失敗しにくい不動産投資の仕組みつくりが可能になります。

初心者の方はぜひ下記の記事も読んで、知識を深めてください。

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棚田 健大郎

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棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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