コラム

何をどこまで補償?投資家が知っておくべき地震保険

2018/08/11
何をどこまで補償?投資家が知っておくべき地震保険

最後となる第3回目の今回は、不動産投資における地震リスクを軽減させる「地震保険」について詳しく見ていきたいと思います。
大地震で自分の所有物件が損害を受けたら、なにをどこまで補償してくれるのでしょうか。

すでに地震保険に加入している人も、まだ加入していない人も、万が一のときのためにぜひこの記事を読んで参考にしてください。

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地震保険とはなにか

地震保険とは火災保険に付帯して加入する保険のことで、必ず「火災保険とセット」でなければ契約ができない方式となっています。
すでに火災保険に加入している場合は、途中からでも地震保険を付帯することが可能です。

では、火災保険と地震保険のそれぞれの補償範囲について詳しく見ていきましょう。

火災保険の補償範囲

火災保険は、次のような原因によって被った損害に対して、保険金が支払われます。

  • 火災
  • 落雷
  • 破裂、爆発
  • 風災、雪災、雹災
  • 飛来物等の落下
  • 水漏れ
  • 床上浸水

※実際の補償範囲は、保険会社、契約内容によって異なります。

このように火災以外にもさまざまなケースにおいて保険を適用することができます。
ただし、地震が原因で発生した火災による損害や、地震による延焼・拡大した部分の損害については、火災保険では補償対象外となることに注意が必要です。

地震保険の補償範囲

一方、地震保険では次のような場合に保険金が支払われます。

  • 地震や地震による火災
  • 地震や噴火による津波

地震の損害に対する補償というイメージがあるかもしれませんが、地震による火災、噴火、地震による津波も補償範囲となります。
地震保険の補償対象となるのは、建物と家財(生活用品など)です。

大家として地震保険に加入するのであれば、建物部分の補償だけでも十分でしょう。
家財については、入居者自身が地震保険に加入していれば補償されます。

保険金額については、セットとなる火災保険の保険金額を基準として、30%~50%の範囲で設定が可能で、建物が5000万円、家財は1000万円が限度です。

金額を聞いて、「あれ、少なくない!?」と感じた方もいるでしょう。

巨大地震が発生すれば、この程度の保険金額では足りないような気がしますよね。
実はこの点が、火災保険と地震保険の補償に対する考え方の違いでもあります。

火災と地震による被害の違い

火災と地震による被害の違い
火災の場合は、近隣が類焼することはあっても、街全体が火災で焼失することはほとんどありません。

対して地震の場合は、東日本大震災の教訓からもわかるとおり、東北地方から関東地方にかけて非常に広範囲で大きな被害が発生するため、保険金は莫大な金額になります。

火災保険の場合は新たに同程度の建物を立て直すのに必要な金額(再調達価格)をベースにして保険金が支払われるため、損害自体を保険金で回復することができます。

ただ地震保険については、再調達価格で補償をしていくとすると、大地震が発生した場合にとてつもない保険金額が必要になることは簡単に予想できるでしょう。

地震保険については民間の保険会社の力だけでは対応しきれないため、巨額な地震損害が発生した場合については、足りない部分を政府が再保険によって支える仕組みになっています。

財務省のホームページによれば、大地震が発生した際に、民間の保険会社と政府によって支払うことができる保険金額の限度額は11.3兆円とのことです。

よって、この金額の範囲内で地震保険加入者に保険金を支払わなければならないため、火災保険のような手厚い補償はできないということになります

そのため、地震保険は被害の根本的な回復ではなく、「被災者の生活の安定に役立てること」を保険金支払いの目的としているのです。

地震保険は保険会社ごとに違いがあるのか

地震保険は火災保険とは違い、政府と連携して被災者を補償する仕組みのため、どの保険会社を利用しても、保険料や補償内容は同じです。

ただ、セットとなる火災保険については保険会社ごとに違いがあるため、火災保険の補償内容や保険料によって、加入する保険会社を選ぶことになります。

地震保険の保険料について

地震保険の保険料は、「都道府県」「建物の構造」によって金額が統一されています。
例えば、東京都の場合、1,000万円あたりの1年間の保険料は以下のとおりです。

耐火建築物:22,500円
非耐火建築物:36,300円

仮に栃木県の場合は、以下のように金額が変わります。

耐火建築物:6,800円
非耐火建築物:11,400円

このように、地域によって地震保険の保険料は大きく変わります。
詳しくは、下記財務省のホームページから確認できますので、自分が物件を所有している地域を確認してみるとよいでしょう。

リンク:財務省 地震保険制度の概要

地震保険の保険金の支払い方法について

地震保険は、損害のすべてを補償する保険ではないことは、お分かりいただけたかと思います。
では、どのような「基準」で保険金が支払われるのでしょうか。

ここでは、地震保険の保険金の支払い方法について解説します。

MEMO
4つの地震保険の支払い基準について

地震保険は、個別の損害に対して損害額の見積もりをとって補償するのではなく、次の4つの基準のうちどれに当てはまるのかによって、支払われる保険金額が決定します。

全損

以下のいずれかに該当する場合、時価を限度として地震保険で設定した保険金額の100%が保険金として支払われます。

  • 地震等による損害で、主要構造部の損害額が、時価額の50%以上となった場合
    ※主要構造部とは建物の土台や壁、柱、屋根など建物にとって重要な部分のことをいいます。
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合

大半損

以下のいずれかに該当する場合、保険金額の60%が保険金として支払われます。

  • 地震等による損害で、主要構造部の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合

小半損

以下のいずれかに該当した場合、保険金額の30%が保険金として支払われます。

  • 地震等による損害で、主要構造部の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合
  • 焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合

一部損

以下のいずれかに該当した場合、時価額を限度として保険金額の5%が保険金として支払われます。

  • 地震等による損害で、主要構造部の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合
  • 建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合

このように、地震保険は「主要構造部分の損害」や「損害を受けた床面積の割合」に応じて、一定の保険金が支払われる仕組みになっています。

ですから、わずかな損害ですと一部損にも該当せず、保険金が支払われない場合もあるということをよく理解しておく必要があるでしょう。

終わりに:不動産投資で地震保険は必要か

全3回にわたって不動産投資における地震のリスクについて解説してきました。
耐震基準を満たしている物件であれば、倒壊や崩落することはあまりなさそうです。

ただ、復旧にはそれなりの費用がかかることになるため、その原資としてやはり地震保険があるとないとでは大きな違いがあるでしょう。

また、地震保険料については、不動産所得の「経費」として計上することができますので、一定の節税効果もあります。

まだ加入していない方は、これを機会にぜひ検討してみることをおすすめします。

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棚田 健大郎

棚田 健大郎

行政書士

行政書士・マンション管理士・宅地建物取引士・管理業務主任者・敷金診断士・ファイナンシャルプランナー。大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。行政書士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得し、棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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