不動産投資コラム

インバウンド需要拡大を背景に広がる民泊・旅館業

2020/02/16
行政書士石井くるみ
インバウンド需要拡大を背景に広がる民泊・旅館業

来年に迫ったオリンピック開催、2025年の大阪万博など、インバウンド需要拡大を背景に、日本全国で拡がりつづける民泊。

2018年に出版した「民泊のすべて」(大成出版社)が日本不動産学会賞・著作賞(実務部門)を受賞した行政書士の石井くるみ先生に、8回にわたり民泊や旅館・建築などについて解説していただきます。

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インバウンド需要拡大を背景に広がる民泊

銀座、横浜、名古屋、京都、大阪、札幌など日本全国でホテルの建築ラッシュが続いています。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2018年の訪日外国人旅行者数は、前年比8.7%増の3,119万2千人となり、初の3,000万人を突破し、統計を取り始めた1964年以降で最多となりました。

日本政府観光局 訪日外客数(2018 年 12 月および年間推計値)

訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンドの増大により宿泊施設が不足しています。

出張や旅行でホテルを予約するとき、以前に比べて宿泊料金が高くなっていると感じている方も多いのではないでしょうか。

一方で、国内不動産市場では人口減少による空き家問題が大きな問題となっています。
賃貸経営においても、すでに一部の大都市圏を除いては空室対策が課題となっており、世帯数減少に転じる2018年以降、ますますの深刻化が懸念されます。

そこで、シェアリングエコノミーの普及とIT技術の進展により注目されるようになっているのが、既存住宅を賃貸ではなく、ホテルのように宿泊に利用する「民泊」です。

今回から始まる連載では、拡大するインバウンド宿泊需要の受け皿として注目される「民泊」について、その基本知識から、運営実務ノウハウまでを総合的に解説します。

民泊とは?

賃貸経営としての民泊

ここ数年ですっかり耳慣れた言葉となった「民泊」ですが、改めて「民泊」とは、どういうものか整理しましょう。

民泊とは、住宅を活用して提供される宿泊サービスをいいます。

自宅の空き部屋や所有する別荘、マンションの空室を、他人(旅行者)に提供することはもちろん、お盆や正月に親戚を自宅に泊めることも民泊にあたります。

「学生時代、旅行先で友人宅に泊めてもらった」または「自宅に友人を泊めたことがある」という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このような行為は、広義の民泊に該当します。実は、民泊は新しい概念ではなく、以前から私たちの生活の中で行われてきたものでした。

その民泊が、いまビジネスとして注目されているのです。

新しい旅行のスタイル、インターネットで民泊仲介サイト

一昔前、旅行といえば、新聞や電車の吊革広告で宣伝されており、旅行会社の店舗(または代理店)に出向いて申し込みをするスタイルが主流でした。

しかし、近年、インターネットを通じて旅行者に1泊単位で住宅への宿泊者を募集する「民泊仲介サービス」(例:Airbnb、Booking.com)が登場しました。

▼「民泊仲介サービス」のイメージ図
▼「民泊仲介サービス」のイメージ図

民泊仲介サイトでは、インターネット環境さえ整っていれば誰でも手軽にアカウント登録ができ、自分の家や部屋を掲載することで、世界中から宿泊者を募集することができます

ホテルよりもリーズナブルな価格で現地の住生活を体験できる民泊は、世界中で一大ブームを巻き起こし、日本においても、訪日外国人旅客の急増を受け、東京・大阪といった大都市圏を中心に、民泊が急速に普及しました。

自宅や自己所有のマンションで行う民泊から始まり、中には、賃借した複数の部屋をオーナーに黙って次々と民泊仲介サイトに掲載し民泊運営を始める人も出てきました。

オーナーの許可がない、または分譲マンション(区分所有建物)の一部で行われる民泊は、所有者や近隣住民とトラブルに発展するケースもあり、社会的に問題視されるようになっていきます

ビジネスとしての民泊

民泊を反復継続して有償でビジネスとして行う場合、我が国においては旅館業法の許可が必要となります。

不特定多数の人を、反復継続的に受け入れる宿泊サービスの提供は、公衆衛生の観点から厚生労働省が管轄・規制しています。

伝染病に罹患した人が施設を利用した場合、施設の従業員や、周囲の宿泊者に感染の恐れがあるため、その管理を把握するという趣旨からです。

近年急増したインターネットを通じて宿泊客に住宅を提供する民泊は、多くの場合、反復継続的に有償(宿泊料を徴収)のサービスに当たるため、旅館業法の許可が必要です。

次回は、日本の制度上、民泊がどのように整理されているのか体系的に説明します。

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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