不動産投資コラム

地価に影響?不動産鑑定士が気になる3大ニュース

不動産鑑定士堀田 直紀
地価に影響?不動産鑑定士が気になる3大ニュース

「令和」という新しい時代の幕開け、今年10月の消費税率引き上げ、2020年の「東京オリンピック」、2025年の「大阪・関西万博」など、日本の景気を左右する大きなニュースがありますね。
そこで今回は、私が注目する最近の不動産に関するトピックを挙げてみたいと思います。

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東京オリンピック・パラリンピック後の再開発

中央区・晴海の選手村跡地は分譲マンションへ


HARUMI FLAGプレスリリースより

少し先の話になりますが、来年の東京オリンピック開催後の、再開発計画がすでに発表されています。

場所は中央区晴海五丁目で、約18ヘクタールの敷地に、
・住宅5,632戸(分譲住宅街区4,145戸、賃貸住宅街区1,487戸)
・店舗、保育施設、介護住宅、商業施設

が建設される予定です。

「HARUMI FLAG(ハルミ・フラッグ)」と名付けられ、大手デベロッパー11社が参画するこのビッグプロジェクトは、分譲される戸数が膨大であるために、首都圏のマンション市況に少なからず影響を与えるのではないかと言われています。

公式ホームページによりますと、この分譲マンションは、2019年7月下旬から段階的に販売される予定で、すでに完全予約制の事前案内会がスタートしています。

特徴的なのは、最多供給面積が85㎡と都心部にしては広いことです。
価格は未定ですが、戸数が多いことと、都営大江戸線「勝どき」駅から、最も近い棟でも徒歩約16分とやや距離があることから、現在売り出し中の周辺の物件に比べ、分譲単価が抑えられることが予想されます。

都心に近接する新たな街に魅力を感じる購入者層をうまくキャッチし、順調に販売を進めることができるのか。
それとも、現状の交通利便性の難点や先行きに不安を感じる需要者層も予想されることから、膨大な分譲戸数を消化するのに苦戦することになるのか、今後の販売状況が注目されるところです。

続々発表される日本橋の再開発計画


日本橋一丁目中地区イメージ/東京都/日本橋一丁目中地区市街地再開発組合の設立より

東京・日本橋エリアが大きく変わりそうです。
下の地図のように、日本橋地区では、5つの再開発が計画され、徐々に動き始めています。

地理院地図を加工して作成

東京都のホームページによると、地区面積が約3ヘクタールと大きい「日本橋一丁目中地区市街地再開発組合」の設立が、2018年12月14日に認可されています。

土地の集約化と街区再編による土地の高度利用を図り、業務・商業機能等の一体整備による高規格な複合機能集積地の形成や、歩行者ネットワークの強化による回遊性の創出、日本橋川沿いの良好な水辺環境の創出などにより、国際競争力を備えた良好な都市空間の創出を図るとしています。

また、日本橋地区で注目したいのは、首都高速道路の地下化プロジェクトです。
東京オリンピック後の着工を目指し、神田橋JCT~江戸橋JCTの約1.8㎞を地下化とする巨大プロジェクトです。

江戸時代の安藤広重の有名な絵画にも描かれ、日本の道路の起点である「日本国道路元標」が埋め込まれた「日本橋」が空を取り戻すということで、とても興味深いと思います。
オリンピック後の建設需要として、広範なエリア及ぶ複数の日本橋エリアの開発計画については注目したいところです。

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シェアリングエコノミーの拡大

「シェアリングエコノミー※市場調査 2018年版」(一般財団法人シェアリングエコノミー協会・株式会社情報通信総合研究所と共同調査)が発表されました。

※シェアリングエコノミーとは、物、場所、サービスなどを多くの人と共有する仕組みのこと。

この調査によると、2018年度のシェアリングエコノミーの経済規模が、過去最高の1兆8,874億円を超えたことが分かりました。
さらに、シェアリングエコノミーの認知度が低い点や個人が提供するサービス利用への不安などの課題が解決された場合、2030年度には約6倍の11兆1,275億円になると予測しています。

不動産の分野で関係してくるものは、スペース(場所、空間)のシェアというところでしょうか。
Airbnbなどの民泊や、スペースマーケットなどの貸会議室、Akippaなどの時間貸し駐車場がこの分野に含まれます。

このようなスペースシェアは、シェアリングエコノミーの中でも市場規模が大きく、2018年度で5039億円となっています。
そして、下のカテゴリ別のグラフでみた場合、今後の拡大が最も予測されている分野でもあります。

上記2グラフの出所:一般社団法人シェアリングエコノミー協会/プレスリリースより

少し前までは、民泊というと抵抗があり、利用者も限られていました。
しかし、今では、ホテルと並び、宿泊施設を選ぶ際の選択肢のひとつになってきています。

インバウンドの増加とともに急拡大してきた民泊のように、世の中の趨勢と人の価値観の変化によって、ますます成長が期待されています。

当然のように、このようなスペースを有効に利用できるということは不動産の収益性を向上させることにもつながります。
今まであまり価値がないと思われていた物件でも、使わない部屋や空いている駐車場をうまく活用することによって、不動産の価値を高めることができます。
不動産の価格を判定する不動産鑑定士にとっても、注目していきたい分野です。

増え続ける空き家について 平成30年の調査結果

近年、空き家のニュースを至るところで聞くようになってきました。
総務省統計局は、日本の住宅と、そこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地などの実態を把握し、その現状と推移を明らかにする住宅・土地統計調査を行っています。
これまで、全国的な空き家の実数を把握できるデータは少なく、古いデータを使うしかなかったのですが、この調査結果が5年ぶりに発表されたので、平成30年の結果を見てみましょう。

まず、総住宅数ですが、6242万戸と、平成25年と比べ179万戸(3.0%)の増加となっています。
平成25年からの総住宅数の増加数を都道府県別にみると、東京都が31万戸と最も多く、次いで神奈川県、千葉県、埼玉県で、この1都3県で全国の増加数の4割を占めています。

次に空き家数ですが、846万戸と、平成25年と比べ、26万戸(3.2%)の増加となっています。
また、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)でみると、13.6%と0.1ポイント上昇し、過去最高となっています。

上記2グラフの出所:総務省/平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果の要約より


地域別では、甲信、四国地方で空き家率が高くなっています。
都道府県別にみると、最も高いのは山梨県の21.3%、次いで和歌山県の20.3%、長野県の19.5%、徳島県の19.4%、高知県及び鹿児島県の18.9%と続きます。

なお、この調査では家庭生活を営むことができないような「廃屋」は、調査の対象外となっていますので、皆さんのイメージする空き家は、この調査の数字よりもっと多いのではないかと思います。

空き家の放置は、老朽化すると倒壊の危険性や防犯面などで地域に負の影響を与えます。
放っておくと環境悪化によるイメージの低下を招き、地域の衰退にもつながっていきます。
今後ますます増えると予想される空き家の増加は、不動産価値を判断するうえで、看過できない問題となるでしょう。
総務省/平成30年住宅・土地統計調査・住宅数概数集計・結果の概要より

建物老朽化により市有地がマイナス入札へ

皆さんはマイナス入札という言葉を聞いたことがありますか?

どうしようもない物件について、ゼロ円で落札したというのは私も聞いたことがあったのですが、マイナスというのは少し驚きました。
これは売主が売却代金を受け取るのではなく、売主が建物の解体費相当額などを代わりに支払ってあげるということです。
まさに売主からしてみれば、マイナスということです。

最近、2件のマイナス入札が話題となりました。
1件目は、昨年12月に埼玉県深谷市が全国で初めて実施した入札です。
旧小学校の体育館と敷地を、跡地に住宅を建てることを条件にマイナス795万円で譲渡しています。これは、実際に住宅が建設されれば、固定資産税などの税収が10年間で約1730万円入ると見込んだためです。

もう1件は、北海道室蘭市が今年3月初めに実施した入札です。
旧総合福祉センターの建物と土地が881万円を市が支払う形で落札されました。落札した事業者は跡地に有料老人ホームを建設する予定で、土地評価額が建物の解体費を881万円下回ったということです。

老朽化した公共施設を処分するには、多額の解体費が必要になりますが、手元資金では賄えないため、このようなマイナス入札が行われます
所有しているよりは建物の安全性や今後の税収を考えると、マイナスでも手放した方が良いという苦肉の策です。
以前のコラムで書きましたように、人口の減少などで地価が下落している地域は多く見られます。
今後このような入札は頻繁に行われるのではないかと思われます。

まとめ

最近のニュースを見ていると、東京、大阪などの都市部では、イベントの開催、地価の上昇など明るい話があるのとは対照的に、地方圏では人口減少や建物の老朽化など、早急に対応しなければならない問題が山積しています。

今後の不動産価値を見極めるうえで、このようなニュースになっている事象の背景を常に意識することは重要となってきます。
以上、今回は地価に影響を及ぼすかもしれない、気になったニュースを取り上げてみました。

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堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

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