不動産を売却する際の譲渡申告と節税法
前回 は、賃貸物件を売却した場合の譲渡所得の計算方法について説明しました。
今回は、譲渡所得の節税策の大枠について解説します。
【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら
1.譲渡税の節税策
法人の場合
法人の場合、個人のように不動産の売却が分離課税といった別計算ということはありません。
すべて合算での計算なので、売却の利益を賃貸経営の赤字、他事業の経費などと合算して計算されることになります。
個人の場合
個人の場合、譲渡所得の節税策はかなり限られています。
というのも、譲渡所得の計算で解説した通り、譲渡収入から控除できるのは、取得費と譲渡費用のみ。
取得費は、購入金額から減価償却費累計額を控除したものなので、ほぼ動かしようがありません。
譲渡費用は、譲渡のために直接かかった費用に限られているため、何でも控除できるということではありません。
また、譲渡に直接かかった費用だからと言って、金額を大きくすればよいというわけでもありません。
例えば、仲介手数料を100万円と150万円では、150万円のほうが譲渡費用として多く控除できますが、キャッシュアウトするものなので、税金は少なくなったとしても、売却後の手残りが少なくなります。
売却であっても、賃貸しているときと同じく手残りが大事なのです。
個人の譲渡所得の節税策
個人の譲渡所得の節税策としては、大きく3つです。
(1)特例が使えないかどうか検討する。
(2)売却年の減価償却をするかしないか検討する。
(3)他の不動産の売却損と相殺できないか検討する。
このうち(1)は、次回以降で詳しく解説していきます。
今回は(2)(3)をみていきます。
2.売却年の減価償却をするかしないか検討する
売却する年については、1月1日から売却するまでの期間の減価償却をしなければならないのでしょうか?
減価償却するのであれば、不動産所得の経費になるし、減価償却しないのであれば、譲渡所得の経費(取得費)になります。
減価償却とは、その年12月31日において有する減価償却資産について行うこととされています。
つまり、年の途中で売却し、12月31日まで保有していないものについては、減価償却しないことが「原則」になります。
ただし、所得税法基本通達49-54において
「年の中途で譲渡した減価償却資産の譲渡までの期間に係る減価償却費については、譲渡所得の計算に含めずに、不動産所得などの必要経費に算入しても差し支えないものとする」
と規定されています。
つまり、原則は、減価償却せずに、譲渡所得の取得費になるけれども、減価償却して不動産所得の経費にすることもできることになります。
どちらでも自由に選択できることになりますので、有利な方を選択すればよいことになります。
その判断基準としては、税率です。
短期譲渡所得は所得税・住民税・特別復興所得税をあわせると39.63%です。
不動産所得を含む総合課税の税率(超過累進税率)が、39.63%以下であれば、減価償却しない方がよいということになります。
なお、長期譲渡所得は、所得税・住民税あわせて20.315%なので、減価償却して不動産所得の経費にした方がよいという選択になる可能性が高くなります。
有利不利の判定は、実際に計算してみないとわからない問題です。
確定申告の際に選択すればよいことなので、実際に計算してみてどちらが有利かを判断すればよいことになります。
3.他の不動産の売却損と相殺できないか検討する
個人の譲渡税の計算は、給与や不動産収入とは別で計算し(分離課税)、不動産所得の赤字とは相殺はできませんが、同じ年に売却した不動産の譲渡益と譲渡損は相殺することができます。
譲渡益が出る売買をした年は、譲渡損が出そうな物件を損切りするチャンスでもあります。
売却損にはなるけれども、どうしても手元に残しておきたい不動産であれば、自分の法人(同族法人)へ売却するという方法もあります。
この場合は、勝手に売買金額を決めてはいけません。同族法人との売買は時価で行わなければなりません。
できれば不動産鑑定士に鑑定評価してもらい、その金額で売買することが望ましいです。
住民税の節税策としての海外移住は有効か?
住民税は、1月1日時点の住所地の市区町村で課税されます。
譲渡所得の住民税は、短期譲渡は9%、長期譲渡は5%です。
大きな税率ではないものの、金額が大きくなる譲渡所得では、住民税も大きくなることがあります。
そこで、この住民税だけでも節税したいということで、売却した年の12月31日までに海外に移住したら、翌年の1月1日には日本にいないことになり、住民税が課税されないのではないか、と疑問に思われるかもしれません。
結論は、住民票などで海外転出の手続きをとれば、住民税の課税は発生しません。
しかし、海外居住期間が1年を超えない場合は帰国日が翌年1月1日以降であっても課税が発生することになります。
海外居住期間が1年を超えることができれば節税できますが、なかなかハードルは高いと思います。
5.まとめ
●譲渡した年の減価償却はするかしないかを選択できる。
●売却益は売却損とだけ相殺することができる。
●海外居住期間が1年を超えられれば、住民税を節税することができる。
あわせて読みたい
東京圏人口一極集中さらに加速…不動産投資は、立地で決まる。解説本無料プレゼント