不動産投資コラム

売却にはどんな税金がかかる?譲渡所得の計算方法

税理士・司法書士渡邊 浩滋
売却にはどんな税金がかかる?譲渡所得の計算方法

前回の記事 でも解説したとおり、不動産投資は、出口戦略が重要です。
とはいうものの、実際に売却した場合にどうやって税金がかかっていくのかがわからなければ、売却のイメージが湧かないと思います。
そこで今回は、譲渡所得の計算方法について解説していきます。

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1.譲渡税の計算方法

譲渡収入

個人が不動産を売却した場合には、不動産に係る譲渡所得として課税されます。

不動産に係る譲渡所得は、分離課税といって、ほかの所得(不動産所得や給与所得など)とは分けて個別に計算をします。

給与所得や不動産所得は、総合課税といって、合計した所得金額に応じて税率(超過累進税率)が決まります

しかし、分離課税は、所得に応じて税率が決まることはなく、決まった税率で課税されることが特徴的です。

このことが有利に働くこともあれば、不利に働くこともあります。

譲渡所得の計算は、下記の算式で算出していきます。

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

(1)譲渡収入

譲渡収入とは、売却代金のことです。
固定資産税の精算金は、売却代金の一部に該当するので、売却代金に含めないといけません。

ここが間違いやすいポイントですが、固定遺産税の精算金は、税金と思いがちですが、違います。

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されるものになります。
年の途中で売却したとしても、課税されるのは、1月1日時点の所有者です。

しかし、所有権を持たないにもかかわらず固定資産税を負担するのは、酷になります。
そこで、商慣習上で、所有していた期間に応じて負担するように、固定資産税の精算をすることにしています

したがって、この固定資産税の精算金は、商慣習上のものであり、固定資産税そのものではありません

税務上は、この固定資産税精算金は、売買代金の一部として取り扱うことになっています。

(2)取得費

取得費

取得費は、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料などですが、建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

なお、賃貸物件の場合には、購入時の登記費用や不動産取得税は、すでに必要経費とされているため取得費にはなりません(自宅などの非事業用の場合は、これらを経費にしていないことから、取得費に該当します)。

なお、自宅など非事業用で使用していた場合の減価償却費の計算は、下記の点が異なります。

  • 旧定額法で計算する
  • 耐用年数を法定耐用年数の1.5倍にした耐用年数を使う(中古であっても、新築の耐用年数を使う)
  • 経過年数を6ヵ月以上切り上げ(6ヵ月未満切捨て)て計算する
(例1)木造の建物を2,000万円で購入して、10年間自宅として使用していた場合

木造(住宅用)の法定耐用年数22年×1.5=33年(1年未満切捨)
2,000万円×0.9×0.031(33年の耐用年数)×10年=558万円
2,000万円-558万円=1,442万円(取得費)

(例2)木造の建物を2,000万円で購入して、10年間自宅として使用した後、5年間賃貸していた場合

非事業用と事業用の利用が混在している場合は、それぞれの期間ごとに減価償却費を計算して取得費を算出することになります。

1.非事業用の期間の減価償却費
上記(例1)参照 558万円

2.事業用の期間の減価償却費
2,000万円×0.046(22年の償却率)×5年=460万円

3.減価償却費の合計

558万円+460万円=1,018万円

2,000万円-1,018万円=982万円(取得費)

(3)譲渡費用

譲渡費用は、譲渡のために直接かかった費用に限られます。

  • 売買契約書に貼る印紙代
  • 仲介手数料
  • 売却に際して行ったリフォーム費用
  • 更地で売却する場合の家屋の取壊し費用
  • など

    なお、資産の維持管理のために行った修繕費や所有期間中の固定資産税、(根)抵当権の抹消費用は譲渡費用になりません

    譲渡所得がプラスになれば、譲渡益になります。
    つまり、売却した結果いくらもうけたのか(キャピタルゲイン)に対して課税します。

    これがマイナスになれば、譲渡損(キャピタルロス)となり、課税されることはありません

    2.譲渡所得の税率

    税率は、所有期間によって短期譲渡か長期譲渡に区分され、それぞれ税率が決められています。

    短期譲渡とは、譲渡する年の1月1日時点で5年以下の所有で税率が39.63%(所得税30.63%、住民税9%)

    長期譲渡とは、譲渡する年の1月1日時点で5年超の所有で税率が20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

    期間は、譲渡する年の1月1日時点で判定します。

    例えば令和2年4月に売却した場合、平成27年7月に取得した不動産は、期間は5年を超えているのですが、譲渡する年(令和2年)の1月1日時点では、5年以下になるので短期譲渡になります。

    計算例
    【7年前に1億円で購入した賃貸物件(土地7,000万円、建物3,000万円)を1億3,000万円で売却した場合】

    譲渡費用は、収入印紙6万円、仲介手数料394万円。
    売却した時点の建物の未償却残高は、600万円。

    1億3,000万円(7,000万円+600万円+6万円+394万円)=5,000万円(譲渡所得)

    5,000万円×20.315%(長期譲渡)=10,157,500円(所得税、住民税)

    まとめ

    • 固定資産税の精算金は譲渡収入に含める
    • 購入した金額が取得費ではない。減価償却費相当額を控除する
    • 短期譲渡か長期譲渡かで税率が変わる

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    渡邊 浩滋

    税理士・司法書士

    渡邊 浩滋

    税理士・司法書士

    経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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