不動産投資コラム

物件購入時に気を付けたい、3つの地盤チェック

一級建築士市村 崇
物件購入時に気を付けたい、3つの地盤チェック

収益物件の購入検討時には、当然収支が合わなければ事業になりませんから、投資金額(イニシャルコスト)が重要視されます。

しかしながら、売値が破格であれば、「何かある」可能性があります。
相場よりもかなりの安価提示であれば気を付けたい、地盤チェックの3つのポイントをご紹介します。

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チェック1:敷地が道路や周辺地盤と高低差がないか

物件購入前に気を付けたいのが、敷地が道路や周辺地盤と高低差がある場合です。

知見を持ち合わせていない場合には、特に注意が必要です。
見かけの金額だけに目を奪われると、後々大きな出費が発生して、想定した収支計画が水の泡になることもあります。

まず建物が建っている地盤についてできる限りの情報を取得し理解しておきたいところです。

近年心配されている大きな地震災害では、収支以前に建物倒壊の可能性も大いにありうるのです。
高低差がある場合は、崖崩れなどの懸念もあるので入念に情報を集めましょう。

チェック2:地盤構成を見分ける/古地図・ハザードマップ

良好な地盤かどうかは、その地盤が形成された時間、そもそもの地盤構成によります。

まずは地名から推察できる場合があります。

「川」や「谷」、「沢」など水に関係している地名の場合には地盤が軟弱なケースが多いです。
「台」や「坂」なども高低差が存在すると予想されます。

地盤が軟弱な場合には、適切な地盤改良や補強工事を実施していれば、建物自体は大きな問題はありませんが、地盤そのものが崩落してしまうと大事になってしまいます。

東京都目黒区では「碑文谷(ひもんや)」という地名が存在しますが、例にもれず地盤が弱いケースが散見されます。

開発エリア(いわゆるニュータウン)などは、昔の地名を改め、響きの良い名前に変えているケースもあります。
古地図を見れば昔の地名がわかりますので、一度見ておくことをお薦めします。

目黒近辺古地図

上の画像は、既出の目黒近辺古地図です。

近年の大きな災害による被災状況はご存知かと思います。
行政では、ハザードマップを作成していますのでそちらも参考になります。

次のハザードマップは液状化に関するものと、津波時の水面上昇に関するものです。

液状化ハザードマップ
ハザードマップ 津波 液状化

このような資料も必ず確認をしておくことが大切ですね。

また、地盤調査会社は膨大なデータを持っています。現在ではネットで、周辺の地盤データが見られることも多いので、検索してみてもいいでしょう。

地盤の判定は「これを見れば一発でわかる」というものはありませんから、さまざまなデータをもとに危険度を推察していきます。あくまでも参考データですが、情報は多いに越したことはありません。

ボーリング調査 柱状図

国土地盤情報検索サイトKuniJiban

チェック3:現地調査は天候の悪い日に

実際に現地を見にいくときには、天気が悪い日にも見に行きましょう。

・雨がどのように流れるか
・雨水が溜まりやすいか
・台風の時はどんな感じか

などがイメージしやすくなります。
時間があれば周辺聞き取りを実施して、過去の様子などがわかれば購入に際して有益な情報となります。

周囲の道路のひび割れなども地盤判定の参考になります(単なる施工不良の可能性もありますが…)。

道路のひび割れ

高低差がある土地でアパートを建てた事例

高低差がある土地に、アパートを建てる場合には特に注意が必要です。

以前は役所(建築指導課)が確認申請審査をすべて実施していましたが、現在では民間の審査会社に委ねられるケースが大半です。

民間会社では、当然に収益が上がらなければ事業継続が難しいため、顧客(建設会社や不動産業者)獲得に躍起になっていることもあります。

多少無理な計画でも、設計者の安全判断やグレーゾーンの法解釈で建築許可を出すケースも見受けられます。

下の写真はかなりの高低差がある敷地に建つアパートですが、ぎりぎりに建設されています。
崖下のお宅から危険を感じるという事で、役所に通報があり役所から指導が出ていますが、このような状況では打つ手は限られてしまいます。

高低差のあるアパート

高低差に擁壁を新設するだけで数千万円かかってしまうことになれば、もともと期待していた収支計画は当然に絵空事になってしまいますね。

売値だけでは判断せずに、安価な場合こそ第三者の冷静な意見を求めることが重要になってきます。

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市村 崇

一級建築士

市村 崇

一級建築士

10年間で500棟以上の施工管理を行う。現在は(社)住まいと土地の総合相談センター代表理事として、多数のクライアントの相談に乗り厳しい目で現場を検査・インスペクションしている。

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