不動産投資コラム

年収850万円以上は増税へ!平成30年税制改正とは

2018/11/29
行政書士棚田 健大郎
年収850万円以上は増税へ!平成30年税制改正とは

平成30年の税制大綱で、政府は増税を発表しています。
主要な改正点のうち、高所得者が影響を受ける増税の詳しい内容と、増税の前後でどの程度の違いがあるのかについては、正しく理解しておくことが大切です。
その他、年収850万円超えのサラリーマンへの影響と、今後取るべき対策についても具体的に解説します。

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1.2018年の税制大綱について

政府が発表した2018年税制大綱の中で、個人に影響がある改正ポイントは以下の5つです。

1-1.配偶者控除の見直し

「配偶者控除」及び「配偶者特別控除」については、世帯主と配偶者の「年収」に関する規定が見直されました。
これまで世帯主の年収に基づく適用条件は設定されていませんでした。

今回の見直しによって、平成30年以降については世帯主の合計所得金額が1000万円(給与収入のみの場合は年収1220万円)以下という適用条件が設定されました。

また、配偶者の年収については以下のような見直しが行われました。

改正前:配偶者の年収103万円以下で配偶者控除(38万円)、それを超える場合は配偶者特別控除(配偶者の年収が141万以上になるまで段階的に控除額を設定)

改正後:配偶者の年収150万以下で配偶者控除(控除額は世帯主の年収により段階的に変化します)、それを超える場合は配偶者特別控除(配偶者の年収が201万6000円以上になるまで段階的に控除額を設定)

以上のように、世帯主の年収については適用条件が設定された一方で、配偶者の年収については範囲が拡大されました。

1-2.消費税10%

延期が続いていた消費税の増税ですが、平成31年10月1日から8%から10%に増税となります。
これに伴い、一部の商品(飲食料品)やサービス(新聞の定期購読)について消費税の軽減税率制度(消費税8%)が実施されます。

1-3.所得税増税

今回の税制改正で非常に多くの注目を集めたのが、所得税の増税です。
具体的には、以下の点が改正になりました。

・給与所得控除の一律10万円減
・基礎控除の一律10万円増(従来の38万円から48万円)
・基礎控除を所得2400万円超の所得者から縮小
・給与所得控除の上限が以下のように改正

改正前:年収1000万円220万円控除が上限
改正後:年収850万円195万円控除が上限

※家族に22歳以下の子供や介護が必要な人がいる場合は増税対象から除外

給与所得控除とは、サラリーマンの「経費」とイメージすれば良いでしょう。
給与収入から給与所得控除を差し引いた金額をベースに所得税が計算されます。

給与所得控除の年収上限が850万円になったため、今後年収850万円以上のサラリーマンについては実質的な増税となります。

1-4.酒税(第3のビール・ワイン)の増税

ビール系のお酒について、酒税額を統一する方向になりました。
現在は350ml缶の場合、ビール77円、発泡酒47円、第3のビール28円とそれぞれ税額が異なります。
これらのお酒の税額を5年以上かけて段階的に調整し、全て55円に統一することになりました。
よってビールは値下がりする一方で、発泡酒や第3のビールについては増税となります。

1-5.森林環境税

2018年の税制改正で創設された税金で、2024年度から課税されることになります。
「地球温暖化防止」や「森林整備」などの環境対策のための財源の確保を目的としています。
課税の対象となるのは「個人住民税」の課税対象者で、1人あたり「年間1000円」が徴収されます。

以上が2018年の税制大綱の主なポイントとなります。

2.年収別の増税金額について

では、実際にどの程度の増税になるのかシミュレーションしてみましょう。
年収900万円の場合、改正前と後で給与所得は次のように変わります。

改正前:900万円—給与所得控除210万円=給与所得690万円
改正後:900万円—給与所得控除195万円=給与所得705万円

ここまでで給与所得に15万円の差がみられます。
後はここから実際は、社会保険料、生命保険料控除、扶養控除、基礎控除などを差し引いた金額が「課税所得」となります。

今回の改正で基礎控除は10万円増額されたため、同じ条件であれば、課税所得の差は改正前後で5万円となり、税額にすると所得税と住民税でおよそ15000円程度の増税となります。

また、年収500万円の場合で計算すると次のようになります。

改正前:500万円—給与所得控除154万円=給与所得346万円
改正後:500万円—給与所得控除144万円=給与所得356万円

このように10万円の差のみとなります。

基礎控除の増額でこの10万円の差を補填していますので、実際に増税の影響がないことがわかります。
増税が影響するのは、あくまで年収850万円超えの給与所得者となります。

3.サラリーマンの増税への対策

このように年収が高いサラリーマンについては、今後増税のターゲットとなっていく可能性が考えられるため、早めから対策を講じる必要があります。

増税に対する一番の対策は、「給与所得を引き下げる」ことです。

給与所得の引き下げに効果的な対策が、不動産投資による「損益通算」です。
不動産投資をすると、「減価償却費」が計上できるようになるため、キャッシュは黒字でも帳簿上は赤字を作ることができます。

そして、不動産所得の赤字は給与所得と損益通算(相殺すること)ができるのです。

節税しながら、賃貸物件という重要な資産を形成することにもつながるため、老後の年金対策としても注目されています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
2018年の税制大綱では、基本的に増税の話が多いですが、特に高額所得者の税負担が重くなる見込みです。

この傾向は今後も継続していく可能性が予想されますので、早い段階から別の方法で給与所得を抑えるための対策を講じていく必要があるでしょう。

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棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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