法人化。会社の株式は1人に集中させた方がよいのは、なぜ?
株式会社を設立するにあたって、株式は1人に集中させた方がよいと聞きました。
なぜ1人に集中させた方がよいのでしょうか?わかりやすく解説してください。
意思決定の停滞や将来の相続トラブルを未然に防ぎ、迅速な経営判断を可能にするため、株式は「1人への集中」が鉄則です。
1. 株式を分散させることの大きなリスク
株式会社では、重要な意思決定は株主総会で行われます。
そして、株主総会での決議は「議決権の過半数」で決まります。
ここで問題になるのが、株式を複数人で分散して持っている場合です。
たとえば、兄弟3人で株式を3等分していたとします。
設立当初は仲が良くても、時間が経つにつれて考え方の違いが生まれることは珍しくありません。
意見が対立すると、株主総会で過半数が取れず「会社として何も決められない」という状態に陥ります。
取締役の選任・解任、役員報酬の決定、重要な契約の承認など、会社運営に不可欠な決議ができなくなってしまうのです。
そしてこの膠着状態が続くと、最終的には会社を解散せざるを得なくなります。
せっかく設立した会社が、株主間の対立によって立ち行かなくなるのは、非常にもったいないことです。
2. 不動産賃貸業に求められる迅速は判断
不動産賃貸業は、現場での迅速な判断が求められる事業です。
空室が出たときの募集条件の決定、設備故障時の修繕対応、賃料改定の判断、金融機関からの借入など、日常的に様々な意思決定が必要になります。
株式が分散していて「株主間の合意が取れないから動けない」となると、入居者対応の遅れや機会損失につながります。
賃貸経営において、この「動けない」という状態は致命的です。
3. 相続が発生すると問題はさらに複雑に
株式分散の本当の怖さは、相続が発生したときに現れます。
当初の株主が亡くなると、その株式は相続人に引き継がれます。
すると、会社とは直接関係のない親族が株主になることがあります。
世代が進むにつれて株主の数は増え、関係性も薄くなっていきます。
連絡先がわからない、住所が不明、そもそも会ったこともない親族が株主になっているというケースも出てきます。
こうなると、株主総会の開催すらままなりません。
4. 分散した株式を集約するのは大変
「後から株式を買い集めればいい」と思われるかもしれませんが、これが非常に困難です。
まず、所在不明の株主を探し出すだけでも膨大な労力と費用がかかります。
戸籍を辿って相続人を特定し、一人ひとりに連絡を取る作業は、想像以上に手間のかかるものです。
仮に株主を見つけ出せたとしても、株式の買取交渉がスムーズに進むとは限りません。
「会社に関わってきたわけでもないのに、なぜ手放さなければならないのか」と難色を示されたり、相場からかけ離れた高額を要求されることも少なくありません。
5.まとめ
株式を1人に集中させる理由は、シンプルに言えば「会社の意思決定を滞らせないため」です。
設立時は問題がなくても、時間の経過とともに人間関係は変化し、相続によって株主構成も変わっていきます。
将来のトラブルを防ぐためにも、最初から株式は1人に集中させておくことをお勧めします。
2026/05/22
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士