現物出資で個人の不動産を法人に移転したい。注意点は?
個人で所有しているアパートを法人に移転したいと思っています。
現物出資というものであれば、法人の資金を使わずに移転できると聞きました。
現物出資で移転してもよいでしょうか?
現物出資とは、出資するときに現金ではなく、金銭以外の物を会社に提供することを言います。
手元の現金を使わなくても法人に物件を移転できるという意味でメリットがあると言えます。
しかし、現物出資には税金上の落とし穴があるため、気をつけなければなりません。
譲渡所得税の問題
現物出資した場合、税務上は譲渡(売却)した扱いとなり、譲渡所得税が発生する可能性があります。
個人と法人間の売買は、時価で行わなければなりません。
Q:現物出資でも時価で行わなければならないのでしょうか?
A:現物出資も、時価で行うことが原則です。
時価よりも低い金額で現物出資した場合、
所得税では、時価の2分の1未満まで低く金額を設定しても問題ありません。
しかし、受け入れる法人側では対価が時価の2分の1かどうかに関係なく、その法人税の計算上
「時価-対価」について受贈益課税がなされることになります。
鑑定評価が必須
では、その時価とはどの金額になるのでしょうか?
現物出資に際しては、原則として裁判所が選任した検査役の調査を受けなければなりません。
ただし、次の場合は検査役の調査が不要になります。
基本的には、鑑定士の鑑定評価が必須となり、その金額で現物出資することになります。
時価は市場価格を反映した金額になるということです。
均等割の問題
不動産を現物出資すると、資本金が大きくなる傾向にあります。
資本金が1000万円を超えると均等割の金額が毎年7万円から18万円(東京都の場合)になります。
1,000万円を超えると倍以上の均等割の金額になってしまうのです。
均等割は毎年かかってくるものです。
ランニングコストが上がるデメリットよりも、メリットが大きいかどうかを検討する必要があります。
優遇税制の問題
資本金1億円を超えると、税務上の中小企業ではなくなります。
所得800万円以下の軽減税率(法人税15%)や、交際費の全額損金算入、欠損金の全額繰り越し控除の対象、などの優遇税制が受けられなくなります。
不動産を現物出資する場合には、金額が大きくなるため1億円を超える可能性も充分にあります。
消費税の問題
現物出資による資産の移転は、消費税の課税対象になります。
土地の移転は非課税なので、建物の移転が課税の対象になります。
現物出資する年が消費税の課税事業者であれば、消費税を納める必要があります。
現物出資する年が消費税の課税事業者でなくても、建物の移転価格が1,000万円を超えると
2年後に消費税の課税事業者になりますので、注意が必要になります。
まとめ
現物出資の税務上の扱いは売買による移転とほぼ変わりません。
現物出資は鑑定評価が必須である点を捉えると、売買よりも厳密な手続きとなります。
また、売買であれば資本金が増えないため均等割にも影響しません。
現物出資でなければならない理由がないのであれば、売買での移転でよいのではないかと考えます。
2023/06/23
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士