不動産投資コラム

大家さんのための税制改正 2019年度版

税理士・司法書士渡邊 浩滋
大家さんのための税制改正 2019年度版

平成30年12月21日に閣議決定された、平成31年度税制改正大綱から、賃貸経営に影響がありそうな税制改正を、ピックアップして解説していきます。

税制によって賃貸経営に大きな影響が与えられます。
どんな改正がされるのか。どのような対応をすればよいのか。解説していきます。

なお、税制改正は、まだ正式に決定されておりませんので、ご注意ください(例年3月の国会承認で決定されます)。

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1.消費税還付の規制はあったのか?

2019年10月から消費税が8%から10%に増税されることもあり、住宅用の建物などの消費税還付を規制するような改正があるのではないかと囁かれていました。
しかし、平成31年度税制改正の中には、直接規制をするような改正は盛り込まれていませんでした

ただし、金の売買の密輸を防ぐために下記の改正が行われます。

平成31年4月1日以後の金の売買について、密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。

平成31年10月1日以後の金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を仕入税額控除の要件に加える。

2.法人税率の軽減の延長

中小法人の年800万以下に対する軽減税率を19%から15%にする措置を平成33年3月31日まで2年間延長されます。

したがって、平成31年度の資本金1億円以下の普通法人の実効税率は引き続き、下記になります。

所得400万円以下 21.42%
所得400万円超800万円以下 23.20%
所得800万円超 33.59%

個人の場合、所得が330万円を超えると、超えた部分の所得税・住民税の税率が30%を超えます
個人の税金が増税傾向にあるなか、法人で物件を購入するニーズはまだまだ高まると思います。

3.ふるさと納税の見直し

ふるさと納税
ふるさと納税の返礼品が年々高額になっていると批判され、規制される改正になり、返戻割合が3割を超えるようなものや、商品券を返礼品にするなど地場産品でないものは、対象外となりました。

平成31年6月1日以後に支出された寄付金(ふるさと納税)については、総務大臣が指定する、次の基準に適合する都道府県等を、ふるさと納税の対象とする。

(イ)返礼品の返礼割合を3割以下とすること
(ロ)返礼品を地場産品とすること

なお、平成31年5月31日までに寄付した分は、上記の規制はありませんので、駆け込み的にふるさと納税することも可能です。
ただし、平成31年度の所得状況で上限金額が決まりますのでご注意ください。

4.空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の延長及び要件緩和

相続人が、一定の要件のもとに、相続により生じた古い空き家を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円を特別控除できる制度について、次の改正がありました。

(1)期間の延長
平成35年12月31日まで4年間延長する。

(2)適用要件の拡大
次の場合も適用対象とする(平成31年4月1日以後の譲渡)。
被相続人が要介護認定を受け、かつ、相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していた場合(老人ホーム等の入所から相続開始の直前まで、本人の一定の使用があり、かつ、事業用、貸付用、本人以外の居住用などがない場合に限る)。

被相続人が居住していた自宅が対象になるのですが、老人ホームに入所した場合には、自宅に住まなくなってしまうため、対象から外れてしまうという問題点がありました。

今回の改正で、老人ホームに入所した場合でも対象になるようになったのでこの適用を受けて売却される方が増えると思われます。

老人ホームに入所した場合であっても、賃貸したり、別の親族に居住させたりすると対象から外れてしまいます
また、要件が緩和されるのは、平成31年4月1日以後の売却が対象になるので、売却時期に注意してください。

5.その他延長項目

●土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を平成33年3月31日まで2年間延長する。
土地の売買による移転登記 2%⇒1.5%
土地の信託による移転登記 2%⇒0.3%

●サービス付高齢者向け賃貸住宅に係る固定資産税の減額措置及び不動産取得税の減額措置の適用期限を平成33年3月31日まで2年間延長する。

6.その他改正のトピック

直接賃貸経営とは関係ありませんが、税制改正のトピック的なところを解説していきます。

住宅ローン控除の拡充

消費税が10%になって購入した自宅については、住宅ローン控除を13年目まで控除できるようになります。

個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

事業用で使われている資産について、事業承継手続きをするものについて、相続税を全額免除する制度が創設されます。
しかし、不動産貸付事業は除かれているので、原則大家さんはこの制度が使えません

相続税の特定事業用宅地に係る小規模宅地等の見直し

平成31年4月1日以後の相続から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地を適用除外とする。
ただし、次の宅地については、適用対象とする。①平成31年3月31日以前から事業の用に供している宅地
②当該宅地の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地の相続税評価額の15%以上である場合は、適用対象とする。

※不動産貸付業に供されていたものは対象になりません。

今年の税制改正で大きく影響するものはあまりなかった印象です。

しかし、2020年には高所得者の増税が控えています。2019年中に増税に向けた準備をしておかれるとよいでしょう。

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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