空室にあえぐ物件を救う?セーフティネット住宅とは
高齢単身者や生活保護受給者などの住まい探しに困っている人たちのために、住宅セーフティネットという制度があることをご存知でしょうか。
これは、住宅を確保することが通常よりも難しい「住宅確保要配慮者」の住宅を確保するためと、全国的に増えている空室を活用させることを狙いとした取り組みです。
そこで今回は、「住宅セーフティネット制度」のポイントと「住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅」として物件を登録することで、大家さんが得られるメリットとデメリットについて全2回に分けて解説します。
空室対策に行き詰まっている大家さんは、ぜひ参考にしてください。
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住宅セーフティネット制度とは
人口減少による賃貸物件の空室増加が懸念される一方で、高齢者や低額所得者、子育て世帯などについては、トラブルや家賃滞納などに対する懸念から入居審査において貸主から入居を断られやすいという傾向があります。
そこで国は、「住宅セーフティネット法」を制定し、このような住宅の確保に一定の配慮が必要な人たちを「住宅確保要配慮者」と位置づけ、賃貸物件を借りやすくする取り組みを行っているのです。
増え続ける高齢者問題
内閣府の平成29年版高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者の単独世帯は2000年には307.9万世帯だったのが、2015年には624.3万世帯と2倍以上に増加しているそうです。
さらに、65歳以上の者のいる世帯総数に占める単独世帯の割合で見てみると、2000年には19.7%だったのが、2015年には26.3%とこちらも上昇しており、単に高齢者が増えているだけでなく、一人暮らしをする高齢者の割合が増えていることがわかります。
高齢者が一人暮らしで賃貸物件を借りる際に最もネックとなるのが、孤独死です。
高齢者の単独世帯については、自宅で体調を崩しても、家族がいないためすぐに気がつく人がおらず、貸主が発見した時にはすでに亡くなられて数日経過した後だった、ということも珍しくありません。
貸主としては、所有物件で亡くなられると、いわゆる事故物件として扱われ、家賃相場が下落する可能性があるだけでなく、発見が遅れると死体の腐乱によって室内の原状回復に多額の費用がかかるといったリスクが懸念されます。
▼65歳以上の者のいる世帯数及び構成割合と全世帯に占める65歳以上の者がいる世帯の割合
内閣府 平成29年版高齢社会白書
一人親世帯の低所得問題
離婚や死別などの一人親世帯については、低所得になる傾向があり、賃貸物件を借りる際にもなかなか入居審査が通らないという現状があります。
社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会の資料によると、2017年における母子世帯の生活保護受給世帯は9.9万世帯もあったそうです。
一人親世帯については、親が仕事をできる時間が限られるため、所得が低くなる傾向があり、賃貸物件の入居審査においても家賃滞納リスクが懸念されます。
公営住宅から空き家の活用へ移行
これまで国は、こういった住宅の確保に配慮が必要な人たちのために公営住宅の提供などで対策を講じてきましたが、人口減少が続く日本において公営住宅を積極的に増やすことは難しくなってきました。
そこで、改正住宅セーフティネット法では、新たに公営住宅を建築するのではなく、空き家など賃貸物件の空室を活用する方向にシフトしたのです。
登録制度の開始
2017年10月に施行された改正セーフティネット法により、住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度が開始しました。
東京都の場合、次の登録基準を満たす物件について、高齢者や低所得者(生活保護受給者)、被災者、障害者、子育て世代などの住宅確保要配慮者の入居を拒否しない物件であることを登録することができるようになったのです。
- 床面積が25㎡以上(シェアハウスの場合は別途基準あり)
- 耐震性を有すること
- トイレ、バスルームなどの設備が完備していること
- 周辺の家賃相場と均衡を失しないこと
住宅セーフティネット制度に登録するメリット
住宅セーフティネット制度で物件を登録すると、不動産投資においてはどのようなメリットがあるのでしょうか。
専用ホームページに掲載されることによる空室対策に
住宅セーフティネット制度で登録をすると「セーフティネット住宅情報提供システム」という専用ホームページに物件情報が掲載されます。
同サイトは、低額所得者、被災者、高齢者、身体障害者、知的障害者、精神障害者、子育て世帯、外国人などの住宅確保要配慮者を対象とした賃貸物件検索サイトで、ほかの一般的な賃貸物件検索サイトとは完全に差別化されているため、物件情報が掲載されることで効果的な空室対策となることが期待できるでしょう。
競合物件が少ない
賃貸物件検索サイト大手の「LIFULL HOME’S」の場合、東京都の賃貸物件だけで約14万8000件もあるのに対し、住宅セーフティ制度に登録して掲載されている物件数は、2019年1月時点において東京都で281件と非常に少なく、物件が競合してユーザーの目にとまらないというリスクがかなり減ります。
一般サイトで多数の競合物件を相手に空室募集をするよりも、住宅確保要配慮者というニッチ層をターゲットとして絞り込むことで、早期成約の可能性が高まるでしょう。
改修費用に補助金が出る
セーフティネット制度に登録すると、国や地方公共団体から改修工事について一定の補助金が出ます。
例えば、シェアハウスの改修費補助であれば、改修するシェアハウス内の住戸数×50万円を上限として国から補助を受けることが可能です。
また、昨今社会問題となっている空き家をシェアハウスに用途変更するための改修工事の場合であれば、改修する住戸数×100万円を上限として補助を受けることができます。
スマートウェルネス住宅等推進事業 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業 Q&A
借主に対するサービスがよい
登録物件に入居する住宅確保要配慮者については、都道府県が指定する居住支援法人などから、入居に関する相談や生活相談、見守りサービスといった独自のサービスを利用することが可能です。
また、家賃や保証料の減免や補助も受けられるというメリットもあります。
借主にとって魅力的なサービスがあることで、成約率のアップが期待できるでしょう。
このように、住宅セーフティネットに登録することで、独自の空室対策を講じることができる点が大きな魅力です。
次回 は、住宅セーフティネット制度を利用するにあたって知っておくべきデメリットや、事前に検討しておくべき対策などについて解説したいと思います。
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