不動産投資コラム

不動産投資の自然災害リスク ハザードマップも有効

行政書士棚田 健大郎
不動産投資の自然災害リスク ハザードマップも有効

甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨から2ヵ月が経とうしています。
地震に台風、洪水、津波…日本は自然災害の多い国ですから、投資家は自然災害リスクについても知っておくべきでしょう。

そこで今回は、不動産投資における自然災害リスクと対策についてお話しいたします。

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自然災害リスクの種類について

自然災害と一言で言っても、さまざまな災害がありますが、不動産投資に影響を与えるものとしては、どのような自然災害があるのでしょうか。

雨に関連する自然災害について

水害の種類
西日本豪雨のときもそうですが、水災については建物に非常に大きな影響を与えます。
不動産投資に影響を及ぼす可能性がある災害としては、以下のとおりです。

  • 大雨(豪雨)
  • 台風
  • 洪水

降水量が相当な量になると、それに伴う崖くずれ河川の氾濫などのリスクが考えられます。

最近では、局地的に突然大雨が降る「ゲリラ豪雨」や、短時間に集中的に雨が降る「集中豪雨」が各地で発生しているため、雨に関連する自然災害は避けて通れないと言えるでしょう。

不動産投資においては、「床上浸水・床下浸水」、さらには台風による「建物の破損」などの被害が想定されます。

西日本豪雨においても、約1万7,500棟が床下浸水、約1万3,600棟が床上浸水の被害を受けました。浸水被害が発生した場合については、水の排水、乾燥、消毒(消石灰など)、リフォーム工事といった費用が、投資家に重い負担となってのしかかります。

地震に関連する自然災害

東日本大震災や熊本地震の際にも、地震の怖さは再認識させられましたが、不動産投資においても非常に大きな影響があります。
地震に起因する災害として忘れてはならないのが、「津波」です。

1995年に発生した阪神淡路大震災のときは、地震の揺れなどによって約24万9180棟が全半壊しましたが、東日本大震災においては、地震による全半壊は非常に少なく、被害のほとんどが「津波」によるものであったそうです。

これにより、不動産取引の重要事項説明においても、対象となる物件が津波災害の警戒区域かどうかについて、盛り込まれることになりました。

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自然災害による二次被害

自然災害によって所有している賃貸物件が損傷すれば、当然その復旧費用は投資家の負担となってのしかかります。
ところが、被害はそれだけにとどまりません

自然災害による不動産投資家にとっての二次被害、それは「不動産価格の下落」です。

水害や地震によって、地盤が緩いことや、河川の氾濫リスクがあることが知れ渡ると、その土地や土地に建っている建物の相場はどうしても下がる傾向にあります。

東日本大震災のときもそうでしたが、大規模な津波被害が発生した後は、しばらくの間沿岸部の物件については、なかなか買い手がつかない状況が続きました。

ですから、自然災害の被害を被った後に、リスクがわかって売ろうと思っても、思うような金額ではなかなか売れないというのが現実のため、事前に一定の対策をとっておくことがとても重要になるのです。

自然災害に対する2段階のリスクヘッジ

不動産投資において自然災害と向き合うためには、物件購入前と購入後の2段階に分けてリスクヘッジをすることが重要です。

購入前のリスクヘッジ:ハザードマップの活用

まずは、自然災害のリスクが低い地域の物件に投資することが、リスクを回避するために最も重要になってきます。

そこで活用したいのが、自治体が作成している「ハザードマップ」です。

ハザードマップとは、過去の災害データなどをもとにして、被害範囲を地図化したもので、例えば、台風などの大雨によって発生する浸水の深さなどについて、地図上に色分けして記載されています。

土地勘のない場所に投資をする場合については、ハザードマップを活用することで、購入を検討している物件周辺の洪水、地震、津波リスクについて知ることができるため、とても重宝します。

平成30年の西日本豪雨において、岡山県倉敷市真備町で小田川の堤防が決壊した事例では、倉敷市が作成していたハザードマップと実際の浸水域がほぼ同じだったそうです。

このことからもわかるとおり、ハザードマップを活用すれば、高い精度で被害を予測することができますので、購入前のリスク回避対策として、とても有効であると言えるでしょう。

ハザードマップポータルサイトはこちらからどうぞ▼
国土交通省ハザードマップポータルサイト

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購入後のリスクヘッジ:保険を活用する

自然災害と火災保険
自然災害については、完全に回避することは難しいため、万が一被害を受けたときの担保として「保険」に加入することがとても重要です。
また、被害を受けた時には、必ず証拠となる画像や動画を撮影することです。のちの保険請求の際にとても役立ちます。

水災に対する保険について

大雨による床上浸水などの被害については、火災保険によって補償を受けられます。

ただし、火災保険にもいくつか種類があり、水災が補償対象外になっている住宅火災保険と補償対象になっている住宅総合保険があるため、加入する際には必ず水災が補償対象になっているかどうか確認が必要です。

また、補償についても、損害の実費を補償するタイプと、一定割合を支払うタイプがあるので、そのあたりについても、加入する前に確認しましょう。

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地震に対する保険について

地震の被害については、火災保険では補償されないため、地震保険に加入する必要があることを忘れてはいけません。
地震保険は単体での加入ができず、火災保険に地震保険を付帯させる形で加入します。

地震保険は地震による被害以外にも、火災保険では補償されない以下のような災害にも対応しています。

  • 地震による火災
  • 噴火
  • 津波

地震保険については、下記記事で詳しく解説しています。

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損害賠償責任に対するリスクヘッジの必要性

自然災害による建物の損壊が免れたとしても、ある程度のダメージを受けている可能性は十分にあります。

度重なる災害で建物の設備が劣化し、外壁の落下や水漏れ等によって、入居者や第三者に損害を与えた場合は、大家として損害賠償責任を負わなければなりません。

損害賠償リスクを回避するためには、「施設賠償責任保険」に加入する必要があり、火災保険に付帯させる形で加入できます。詳しくは、保険会社に問い合わせてみましょう。

保険金を請求すると保険料はあがる?

保険というと、損害が発生して保険金を請求すると保険料が値上がりするというイメージがあるかと思います。

確かに、自動車保険の場合は保険料が値上がりすることがありますが、自然災害については、大家側に過失はないため火災保険で保険金を請求したとしても、基本的には保険料は値上がりしません

また、加入している間は災害に見舞われた都度、保険金を請求することが可能ですので覚えておきましょう。

まとめ

不動産投資において自然災害は、リスク対策を講じていないと出費が多額に上ることもあるため、致命傷となる恐れもあります。

まずは投資家として、自然災害にしっかりと向き合い、本記事を参考にしてリスク対策の重要性について理解することが大切です。

今回ご紹介した「ハザードマップ」や「保険」を活用すれば、自然災害リスクを大幅に軽減させることができるでしょう。

また、最近では自然災害発生時に、空室を被災者に無償提供することで「社会貢献」する風潮も出てきていますので、そのあたりも含め、投資家として自然災害にどう向き合うべきか、一度考えてみることをおすすめします。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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