【法改正】大家が不利に?修繕義務高まる
今年は民法の大改正が行われ、宅建試験でも非常に注目を集めました。
そんななか、実務でも多方面にわたって影響が出ていますが、なかでも不動産投資家や大家に直接的な影響を及ぼしているのが「修繕義務」に関する法改正です。
実は、賃貸人側の修繕義務が法改正前よりも高まっていることをご存じでしたでしょうか。
そこで本記事では、民法改正によって大家の修繕義務がどう変わったのか、とるべき対策は何かについて詳しく解説します。
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手配が遅れると家賃が下がる?
物件を他人に貸して家賃という収入を得る以上は、物件を正常に使用できる状態を維持しなければなりません。
仮に雨漏りが発生した場合は、即座に修理を手配して改善するなど賃貸人には法改正前から修繕義務がありました。
「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」
この点については同じです。
むしろ、次のように賃貸人側にとって有利に改正がされています。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
修繕が必要になった場合でも、賃借人にその原因があるのであれば賃貸人に修繕義務はないと明文化されたのです。
ただこの点については、すでに賃貸借契約書において同様の条文を特約として盛り込んでいるケースが多いため、実務上は特に大きな変化は起きないでしょう。
今回皆さんにお伝えしたいのは、賃借人に責任がない雨漏りのような事情によって修繕が発生した場合の取り扱いです。
一部滅失による賃料減額
雨漏りについてはすぐに業者を手配したとしても、原因箇所の特定が難しいため改善までにヵ月かかることもよくあります。
特に区分マンションの場合、鉄筋コンクリート造のため雨漏り箇所を目視で確認することが難しく、推測しながら修繕をするケースも多いのでなおさら時間がかかります。
このように改善までに時間がかかるケースの場合、旧民法では次のような規定がありました。
「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。」
このように賃借人には使えなくなった割合に応じて「賃料減額請求権」が認められていました。
あくまで請求ができるというだけなので、賃貸人側からすると請求されても応じないといった姿勢で対処することも可能だったので、この条文がそこまでネックになる状況は起きませんでした。
ところが次のように民法が改正されました。
「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」
一見表現の違いがある程度にしか思わないかもしれませんが、実はこれ賃貸人にとってすごく大きな改正です。
重要なのは最後の「減額される。」ここです。
改正前は請求できるにとどまっていたため、応じないという選択肢もあったのですが、改正によって減額されると結論が書かれてしまったため、一気に賃貸人にとって不利になってしまったのです。
雨漏りで一方的に家賃減額を主張された事例
法改正の影響はすでに実務でも発生しています。
私あてにも、雨漏りが発生した不動産会社から、賃借人が民法改正を持ち出して減額した家賃で支払うといってきた、などの相談が寄せられました。
減額が認められたとはいえ、減額の割合などについては交渉の余地はありますが、改正前よりも条文が大幅に踏み込んだことで賃貸人にとって不利なことは間違いありません。
私が不動産会社(賃貸人)に相談された事例では、次のような対処を行いました。
・一方的に値下げした家賃で振り込むことは認めない
・仮に一方的に減額されたら、すぐに家賃滞納扱いで督促する
・修繕の手配状況、修繕工程などを細かく説明する
これらの対処を行った結果、当初4割減額を主張していた賃借人に対して修繕の手配は最善を尽くしていることがわかるよう、細かな状況説明を行った結果、減額の話は主張してこなくなり、その間に修繕も完了しました。
まとめ
民法が改正されたとはいえ、素直に減額に応じる必要性は、私はないと考えています。
本当に減額が妥当なのか、割合が妥当なのかについては十分交渉の余地があるでしょう。
不動産投資家、大家業をしている方にお伝えしたいのは、改正前よりもさらにスピーディーな修繕対応が求められるということです。
すぐに改善できれば、賃料減額という面倒な状況は回避できますので、雨漏り、水漏れ、設備故障が発生した場合の手配先について予め選定してスマホに登録しておくといいでしょう。
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