不動産投資コラム

物件の解体工事費はいくら?業者選びと見積もり項目

不動産鑑定士堀田 直紀
物件の解体工事費はいくら?業者選びと見積もり項目

収益物件を長期間保有し続ける場合、将来的に考慮しなければならないものに建物や工作物の解体にかかる費用があります。
解体に関しては、事業者によって作業内容や見積の方法が異なり、なかなか分かりにくい部分があると思います。ここでは基本的なチェックポイントを挙げていきたいと思います。

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解体業者はどうやってみつける?

解体業者

解体工事を発注したいと思った場合、どのようなところにお願いしたらよいのでしょうか。

皆さんのなかで、解体事業者の知り合いがいらっしゃるということは少ないと思いますので、基本的には、新築建物を依頼するハウスメーカー、近所の工務店などにお願いすることになります。

もしくは、自分で解体事業者を探して直接連絡をするか、一括見積サイトに登録して見積もりを出してもらい工事を依頼するというケースが考えられます。

1.ハウスメーカー、工務店に頼む

ハウスメーカーや工務店の場合は、自社で解体工事を行わず、協力業者や下請け会社に投げることが多いと思われます。
その場合、元請けに手数料が入ることになりますので、当然、直接解体事業者に発注する場合にくらべ、工事費は割高になるものと考えられます。

反面、メリットとしては、何かトラブルあったときには、ハウスメーカーなど元請けの責任になりますので、スムーズに対応してもらえるという安心感はあります。

2.自ら解体事業者を探す

インターネットなどで、自分で探す場合のメリットとしては、あいだに誰も入っていないので、余計な中間手数料を省くことができるということです。

他方で、デメリットとしては、解体に関して知識がない状態で依頼すると、事業者に足元を見られたり、かえって高い見積もりを提示されたりする可能性もないわけではありません。
仲介者がいないということはトラブルがあった場合も直接交渉しなければならないので、特に事業者の見極めが重要になってきます。

3.一括見積サイトを利用する

検索

最近、中古車の査定や保険料の見積もりと同じように、解体費用についても、一括見積を提供するサイトが増えてきました。

簡単な登録をするだけで、複数社の見積もりを一度に依頼できるので、手軽に利用できるというのがメリットです。

見積もり自体は無料でしてもらえることが多いので、まったく仲介手数料が発生していないと思われがちですが、当然、サイトを運営している事業者の収入は必要なわけですから、工事を受注した事業者から何らかの手数料が支払われることになります。

したがって、その手数料分は、解体工事代金に加算され、結局は依頼者が負担することになります。

サイトの中には、掲載する事業者を過去の実績や資格などにより選別し、優良な事業者が多いことを利用者に伝え、安心を売りにしているようなものも見られます。

そもそも、解体工事業者とは?
まず、大前提として解体工事を行う事業者にはその資格が欠かせません。
これには、「建設業の許可」「解体工事業の登録」というものが必要となります。
 

1.建設業による解体工事業の許可

建設業許可が必要な業種には、土木一式工事業、建築一式工事業、大工工事業、左官工事業…解体工事業など29種類があります。

このうち解体工事の実施には、「土木一式工事業」、「建築一式工事業」、「解体工事業」のいずれかの許可を受けていなければなりません

事務所が1つの都道府県にある場合は、その事務所地の知事の許可が、複数に所在する場合は、国土交通大臣の許可が必要となります。

※従来、工作物の解体を行う工事については、「とび・土工工事」の区分とされていましたが、平成28年6月1日法改正により、新たに「解体工事業」という区分ができ、「とび・土工工事」から分離されました。
なお、これまで「とび・土工工事業」を営んでいた場合については、3年間の猶予が設けられていましたが、平成31年5月にこの猶予措置は終了しています。
 

2.建設リサイクル法による解体工事業の登録

解体工事の場合、500万円未満の工事を請け負う場合に限っては、建設業の許可までは必要とせず、建設リサイクル法による解体工事業者への登録をすればよいことになっています。
したがって、請負金額が500万円に満たない戸建住宅やアパートなどの小規模建物の解体を専門に行っている事業者に関しては、この登録のみを受けていることがあります。

いずれにしても解体事業者が資格を有しているかということは最低限確認しなければなりません

参考:環境省ホームページ「建設リサイクル法の概要」

解体工事見積書の内訳

見積もりの依頼先が決まり、実際に見積書を入手したとき、いったいどのようなところに注目したらよいのでしょうか。
事業者によっては、ざっくりと「解体工事一式」として合計金額だけを記載したものや、工事内容の明細を載せているものなど、統一されておらずバラバラです。

ここでは、基本的な項目について説明していきます。

仮設工事費

解体の準備にかかる費用です。
近隣住人にかける迷惑をできる限り抑えるため、足場を組んで、防音・防塵シートを張ったり、仮囲いを設置したりする費用です。

建物本体の解体工事費

建物本体の解体にかかる費用です。
建物の構造により金額が異なり、一般的に木造が一番安く、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に高額になっていきます。
単価×面積(坪、㎡)で記載されていることが一般的です。

付帯工事費

建物本体以外の解体撤去にかかる費用で、塀、土間コンクリート、カーポート、庭石、井戸などがあげられます。
ここには、アスベストが含まれている建材がある場合の除去費用を計上していることがあり、場合によっては高額になっている可能性があります。

アスベスト

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廃棄物処分費

解体というと直接建物を取り壊す費用がメインだと思われがちですが、解体工事で発生する廃棄物の処分に意外と費用がかかります。
解体工事によって生じるコンクリートガラや金属くずなどは、産業廃棄物に該当し、適切に処理しないと、行政処分の対象になります。
そのため、他社とくらべ、極端にこの項目が安い場合には、不法投棄など適切に処理していない事業者の可能性も否定できませんので注意が必要です。

重機回送費

これは建物解体に使用する油圧ショベルなどを作業現場まで運搬するための費用です。
重機回送費については、諸経費の項目に含まれている場合もありますので、項目がない場合にはどこに含まれ、どのくらいの費用が見積もられているか確認するようにしましょう。

官公庁への届け出・手続き費用

建築物の解体工事では床面積80㎡以上のものには建設リサイクル法に基づく事前届け出が必要となります。
そのほか、公道を利用するための道路占用許可申請などがあり、官公庁への届け出や手続きにかかる費用がこの項目で計上されます。

諸経費

上記項目に含まれていない費用です。事業者によって千差万別ですので、どのようなものが含まれているか直接内容を聞いてみるのがよいでしょう。

解体工事見積書のチェックポイント

作業の範囲

見積書を比較するときは、あたりまえのことですが、同様の作業範囲となっていることが重要です。
各項目は単価×面積・体積などで計算されていることが多いですが、その数量が大きく違っているときは、その差の理由を把握しておきましょう。

見積もり除外項目

トラブルの原因で多いのが、当初の見積もりに入っていなかったために、追加で請求されるケースです。

別途費用が発生するのはどのような場合があるかをはっきりとさせて、内容に相違がある場合には、口頭ではなく再度見積もりをもらうなどの対策をしておきましょう。
考えられるトラブルは以下のようなものがあります。

  • アスベストを含む建材や地中に埋設物が、工事の途中に見つかった場合の費用や対応はどうなのか
  • 近隣への挨拶は費用に含まれているか
  • 交通整理など安全対策に要する費用は含まれているのか
  • 建物撤去後はどのような状態まで整地してくれるのか
  • 家具や家電などの残置物の撤去はどこまでしてくれるのか(通常、残置物の撤去は解体費用とは別で見積られることが多い)

まとめ

昨今の人手不足による人件費の上昇や、環境対策などの法整備に伴う手続きの煩雑化などで、建物の解体にかかるコストは高騰しています
そのため、収益物件の出口として、建て替えや更地として売却をするために解体を検討している方は、少しでもその費用を低く抑えたいと思われるでしょう。

ただ、見積もりの合計額だけを比較して、解体費用を安く済まそうとしたばかりに、かえって追加で請求をされるということも考えられます。
そのような後悔をしないためにも見積書は個々の内容まで細かくチェックし、十分に納得をしてから事業者を選ぶようにしたいものです。

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堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

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