不動産投資コラム

ワンルームマンション条例を知っていますか?

2020/02/16
一級建築士遠田 将徳
ワンルームマンション条例を知っていますか?

都市圏を中心とした自治体では、ワンルームマンションの建築に対して、専有面積の下限、駐車場・駐輪場の附置、隣地間距離、目隠しの設置、ファミリー向け住戸の一定割合の設置、建物使用規則の確認等、様々な規制を設けています。 

これをいわゆるワンルームマンション条例と呼びます。みなさんはご存知でしたしょうか。
マンションなどの共同住宅の建築を検討している方や、区分マンション購入を考えている人は理解しておきましょう。

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ワンルームマンション条例とは

ワンルームマンション条例とは、総称名であり各自治体により様々な名称で条例を定めています。例えば、千代田区であれば「千代田区ワンルームマンション等建築物に関する指導要綱」、大田区は「地域力を生かした大田区まちづくり条例」、港区では「港区単身者向け共同住宅の建築及び管理に関する条例」。

荒川区にはこれに該当するものはありません。その代わり、一定割合のファミリー向け住戸を設ける条例があります。

ワンルームマンション条例の条件とは

ワンルームマンション条例、この名称だけ聞くと…

「私は関係ないです。建築予定の物件は1Kですから。」
「ちょっと小さめでも、1LDKと2LDKの組み合わせなので問題ないです。」

こんな言葉が聞こえてきそうです。
実際はどうなのでしょうか?

  • 「1K」→ ワンルーム形式へ該当の可能性あり
  • 「1LDK」→ ワンルーム形式へ該当の可能性あり
  • 「2LDK」→ ワンルーム形式へ該当の可能性あり

えっ!?ワンルームってなんなの?って、思いませんか?
実は「間取り(居室数)」だけの話ではないのです。
どちらかというと「専有面積」の話なのです。

「ワンルーム(形式)」=「単身者向け」と読み替えるとわかりやすいでしょう。

実はこの「専有面積」が曲者です。

東京都内だけでも規制は実にさまざまで、40㎡未満をワンルーム形式の規模に設定しているケースもあります。

例えば文京区、ここでは専有面積40㎡未満であればワンルーム形式です。
38㎡程度のこぢんまりとした2LDKでも、「単身者向け」に該当してしまうのです。

ワンルーム条例というのは、
「単身者向けの面積の住戸」に対して設けた規制と考えて頂くのがよいでしょう。
ちなみに、寄宿舎(シェアハウスなど)も併せて規制をしております。

では、なぜ単身者向けの共同住宅に多くの規制を設けているのでしょうか。
これには規制の目的をみていくとよいかもしれません。

規制の目的

各自治体により規制の目的は違いますが、大きく4つあるようです。

  1. 近隣とのトラブル防止(良好な近隣関係の形成)
  2. 良好な生活環境の形成
  3. 家族世帯向け住戸の供給
  4. 高齢者の居住の安定

個々のマナーもあるのかもしれませんが、単身者用共同住宅とファミリー向け共同住宅では同じ規模の共同住宅でも世帯数が大きく違うためトラブルが目立つようです。 
また、投資向けの単身者向け住戸では収益向上の為、戸数優先でプランニングすることも多く、誘導居住面積水準からかけ離れたものが多いのが現実にあります。この是正も目的としています。

ワンルームマンション条例…各自治体の例

ここまでワンルームマンション条例と一括りにご説明してまいりましたが、次はその中でも他の自治体とは少し異なるアプローチをしている自治体をご紹介したいと思います。

品川区…他の区と比べて建築しやすい

用地地域により、ワンルーム形式の最低専有面積を変えています。

  • 「第1種低層住居専用地域」 → 25㎡以上
  • 「その他」 → 20㎡以上

また、「寄宿舎(例:シェアハウス)」の各住戸の床面積を18㎡以上と定め、他の区と比べ、建築しやすくしております。

豊島区…1戸あたり50万円の課税

単身世帯が全世帯の約56%、区内の住宅で30㎡未満の共同住宅の割合が約40%の「豊島区」は、他にはない少し強めな規制です。
30㎡未満の狭小住戸1戸につき、50万円の課税をしています。
※総戸数が8戸以下など、課税免除の条件もあります。

豊島区 狭小住戸集合住宅税(通称「ワンルームマンション税」)

これにより、ワンルームマンション着工減少!といけばよかったのですが、簡単に減少とはいかなかったようです。
逆にいえば課税されても、単身者向け住戸が成り立つエリアだったのでしょう。

こんな特殊な規制も含め、実は条例の適用には規模(世帯数、階数、割合)を条件にしてあります。

不動産投資の視点でみたワンルームマンション条例

ワンルームマンション条例について理解し、条例の適用を受けない新築となれば、小ぶりの共同住宅となる為、少額での投資となります。

中古物件については、ワンルームマンション条例により狭小物件は今後は戸数が減っていく見込みです。
専有面積の小さい物件でも家賃を安くして住みたい方には一定のニーズがあると思われるので、希少価値が出てくるかもしれません。

ワンルームマンション条例を投資にうまく活かすということではなく、こういった条例があることを理解して、投資に最適な物件を検討していただければと思います。

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遠田 将徳

一級建築士

遠田 将徳

一級建築士

戸建住宅・賃貸住宅の新築、リフォームの見積り、外構工事と幅広く手掛け、許認可業務、実施設計、デザイン、コーディネートまで、建築に関わる様々な目線からの適切なアドバイスを得意とする。

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