不動産投資コラム

不動産鑑定士の戸建て投資/買付~引渡し編

不動産鑑定士堀田 直紀
不動産鑑定士の戸建て投資/買付~引渡し編

「戸建て投資」シリーズ、第3話。
前回 ご紹介した物件について、最近、鍵の引渡しを受けてきました。

物件を取得するまでには、いろいろな手続きをしなければなりません。

そこで、今回は、この物件を見学してから、買付(申込み)→契約→引渡しを受けるまでの流れをご紹介したいと思います。
また、これに加え、実際に付保した火災保険の内容についてもお伝えしていきます。

【1分で分かる!新築一棟投資の魅力とは?】東京圏・駅徒歩10分圏内の物件紹介はこちら

1.買付(申込み)

投資用の戸建てこの戸建て物件を見学した後、とても気に入ったので買えたらいいなと思っていました。

ただ、一方でいまの売出価格のままでは、地域の賃料相場やリフォームにかかるコストなどを考えた場合、投資の利回り的にはあまり魅力的ではないとも感じていました。

そのため、不動産仲介業者の方を通して、売主さんと価格交渉をすることにしました。

買主側はなるべく安く買いたい、売主側はなるべく高く売りたいというのが基本ですから、お互い納得する価格の妥協点を見つける必要があります。
ただやみくもに強引な価格交渉をすることは、売主や仲介会社の方にも嫌われますので一番やってはいけないことです。

購入する目的によって、出してもいいと考える金額は変わってきます。
私の場合、今回は投資用ということで、以下の算式を根拠に交渉をしました。

想定賃料÷利回り-想定リフォーム費用=購入してもよい金額

想定賃料は、地域の相場や個別の物件の競争力を判断したうえで、貸せそうと考える賃料の年額
利回りは自身が期待する利回り(ここでは表面利回り)は、それぞれ人によって基準が異なります。
古家戸建投資で、高利回りを狙う人は、物件の状態や売却するときのリスクを考えたうえで、物件によっては20%、それ以上でないと魅力がないと考える人もいるでしょう。

今回の物件は多少リフォーム費用が掛かりますが、建物の状態が良好で特に気になった問題点がなかったので、利回りが12~15%程度あればよいかなと思いました。

私の提示した希望額については売主さんから若干の差し戻しがあったものの、許容範囲内の金額だったので、正式に私のほうから買付申込みを入れました。

2.売買契約

不動産契約書・重要事項説明書それから2週間ほどして、物件代金の1割程度の手付金を差し入れて、売買契約を締結しました。
この手付金はその時点ではまだ預かり金のようなもので、売買契約が結ばれた後に、売買代金の一部に充当されます。

売買契約に際しては、重要事項説明書という書面の交付を受けて、宅地建物取引士の方から、契約にあたって大事な事項の説明をしてもらいました。

20年ほど前ですが、前々職で私は新築マンション販売の営業をしていました。
この時は逆に私が重要事項説明をする立場でしたが、契約が成立しなかったらどうしようと、毎回プレッシャーを感じていました。
今回は買主という立場でしたが、このイベントは説明をするほうも受けるほうも、やはり少し緊張してしまいますね。

説明を受けた後、物件の状態についていくつか質問をしましたが、問題がクリアになったので、納得してそのまま売買契約書と重要事項説明書に押印しました。

売買契約の後は、契約の条件に基づいて、まだ、物件に残っている家具や庭にある物置などを売主さんに撤去してもらいました。

3.火災保険

火災保険の設定
次は鍵の引き渡しなのですが、その前に、忘れてはいけないのが火災保険の手続きです。

万が一に備えて、保険期間の開始日を引渡しと同じ日になるように設定しました。
ちょうど先日、大きめの地震があったばかりだったので、保険は大事だなと感じていました。

保険の内容は、火災(落雷、破裂・爆発含む)に加え、風災(雹災、雪災含む)のプランにしました。あとは物体の落下、飛来、水濡れ、盗難などをプラスしました。
本来は建物の評価額の満額について掛けると良いのですが、その分保険料も高くなってしまいます。
そこで、割増料率がかかるギリギリのところをいくつか、保険代理店の方にシミュレーションしてもらい、相談しながら付保額を決めました。

また、地震に伴う火災は火災保険では補償されませんので、念のため基本契約の30%だけ地震保険を掛けることにしました。
一方で、水災については悩むところですが、物件の場所が海抜の低いところではないので、特約は付けませんでした。
保険の難しいところは、補償が手厚いほど良いのですが、収益目線で考えた場合、そういうわけにはいかない点です。

保険料を大手の保険会社と比較したところ、保険料に大きな隔たりがあったので、今回は中堅の保険会社を選ぶことにしました。
そして、期間は年払いより、割安になる5年契約を選びました。
これで年間の保険料は2万円を切る水準になりました。

4.引渡し

保険のあとはいよいよ物件の引渡しということで、先日、鍵の引渡しを受けてきました。
私のメインバンクの多治見支店で、決済場所を借りて手続きを行いました。

当日の出席者は5名。売主さん、売主さん側の仲介会社、司法書士さん、買主側の仲介会社、買主の私です。

この手続きでは、本人確認、残代金の入金確認、固定資産税の精算などが行われます。
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるものなので、引き渡しまでの期間に応じて日割計算をした額を、買主から売主へ支払う形になります。

不動産の登記については、今回はローンがありませんので、抵当権設定登記などはなく、所有権の移転登記だけになります。

すべての手続きを終えた後、司法書士の方にはその足で法務局に行っていただくことになります。
決済、引渡し手続きは1時間ほどで何事もなく完了して、無事に建物の鍵を受け取ることができました。

今日は物件の引渡しまでの流れをご説明しました。
次回はいよいよリフォームに関することを話題にしていきたいと思います。

【今回の登場人物】
<火災保険> 有限会社リムピア 伊藤正博さん

<不動産登記> 司法書士HANA法務事務所 戸松泰志さん

<不動産売買仲介> センチュリー21加盟店 株式会社サグチ不動産 花澤亜紀さん

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

堀田 直紀

不動産鑑定士・宅地建物取引士

不動産鑑定士試験合格後、民間最大手の大和不動産鑑定株式会社にて約11年間、収益物件をはじめとした鑑定評価業務に従事。平成29年10月、ミッドポイント不動産鑑定株式会社を設立。

記事一覧