不動産投資コラム

いくら払う?払う必要は?不動産広告料(AD)とは

行政書士棚田 健大郎
いくら払う?払う必要は?不動産広告料(AD)とは

みなさんは不動産業界における広告料(AD)についてご存知でしょうか。

賃貸経営をされている方、またこれから始めようとしている方はご存知かと思いますが、「AD」とは不動産広告料のことです。

賃貸募集をするにあたり、「AD」はとても重要な要素であり、空室対策や家賃設定にも影響するため、不動産投資家として正しい知識を持ち合わせておく必要があるでしょう。

そこで今回は、賃貸募集においてポイントとなる「AD」について詳しく解説します。

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不動産広告料(AD)とは

ADとは「advertisement(アドヴァタイズメント)」の略称で、不動産業界においては賃貸募集をする際の「広告料」という意味合いで用いられています。

仲介手数料では補いきれない、特別な広告などを行った場合にかかる費用について、大家や賃貸管理会社が仲介業者に対して支払う金額です。
また実質的な側面として、空室物件の早期客付を促進するために、大家や賃貸管理会社が仲介業者に対して支払う、一種の「インセンティブ」のような位置づけとなりつつあります。

ADは誰が支払う?

基本的にADは空室を抱えている大家が、物件を紹介してくれる仲介業者に対して支払います。ただし、賃貸管理会社とサブリース契約を結んでいる場合などについては、賃貸管理会社が仲介業者に支払うこともあるようです。

仲介業者は原則として賃貸借契約が成約に至った場合、下記を上限として報酬(仲介手数料)を得ることができます

大家:賃料の0.5ヶ月以内
借主:賃料の0.5ヶ月以内
※依頼者の承諾がある場合については、いずれか一方から賃料の1ヶ月分を受け取ることも可能です。ただし、両者から受け取る仲介手数料の合計は賃料の1ヶ月分以内でなければなりません。

このように、ADがなくても仲介業者としては合計で賃料の1ヶ月分を成功報酬として受け取ることができるので、ADは仲介業者にとってプラスアルファの「インセンティブ」のようなものなのです。

ADの相場とは?

ADの相場は、賃貸募集をする時期によって大きく上下します
そもそもADは空室を早期に客付してもらうことを目的として支出するものなので、人が動きやすい1~3月の不動産繁忙期については、ADを出す大家はあまりいません

一方で、夏場などの不動産閑散期については、なかなか空室が決まらないため、都内近郊であれば、おおむね賃料の1~2ヶ月分のADをつけて募集に出すケースが多いといえるでしょう。

ADの表記について

ADを出す場合は、AD付きの物件であることを仲介業者に知ってもらうことが重要です。そこで、AD付きの物件の場合、賃貸の募集図面(マイソク)に以下のように表記することで、仲介業者に対してAD付き物件であることをアピールします。

マイソクのなかのADの見方

AD「100」で家賃1か月分という意味。

仲介業者は大家や賃貸管理会社からマイソクを受け取ると、真っ先に右下にADの表記があるかどうか確認するため、ADを出す場合は、必ずマイソクにAD表記をするようにしましょう。

競争の激しい東京圏におけるAD事情

本来、ADは立地や設備などの条件が劣る「人気の低い物件」を早期に客付するための手法として、大家の間で用いられてきましたが、近年では賃貸物件の供給過多によって、都内でも空室が増加傾向にあるため、ADを出す大家がとても増えています。

特に大家が不動産会社だったりすると、ADを積極的に出して早期に空室を埋めようとする傾向が強いため、ADを知らない個人大家の空室だけが取り残される傾向にあるのです。

地方エリアはADが必須?

ADの事情がより深刻なのが、地方エリアの賃貸物件です。
地方の中でも、比較的都市部についてはよいのですが、郊外のアパートとなると空室が長期化する傾向があります。

そのため、ADについては出すと効果があるというよりは、出さないと決めてもらえない、というくらいの状況になりつつあるようです。
これには、賃貸需要の問題だけでなく、「賃料額」の問題も関連しています。

都心部のワンルームマンションであれば、7~8万円程度でも借り手がつきますが、地方になると賃料相場が一気に下がり、3~4万円程度かそれ以下になってしまうことも少なくありません。

仲介業者の報酬である仲介手数料は、賃料をベースに計算されるため、地方の仲介業者は都心部の仲介業者と同じ仕事をしたとしても、仲介手数料は半額くらいになってしまうのです。

このように、地方の仲介業者は仲介手数料による報酬自体が低いため、ADが出る物件を優先的に紹介する傾向がより強くなるのです。

ADってどのくらい効果があるの?

実際に、賃貸募集をする際にADを出した場合、具体的にどのような効果があるのでしょうか。

紹介頻度が上がる

仲介業者は、来店したお客さんから希望を聞いたうえで物件を探し、条件に合ったマイソクをお客さんに見せて紹介します。この際に、仲介業者は多くの場合、まずADが出る物件から優先的にお客さんに見せていき、その中で決められるよう営業をするのが定石です。

ADが出ない物件は、ADが出る物件の二の次となるため、ADを出すことで、とにかくお客さんの目に入れることができるため、必然的に成約に繋がるチャンスが増えます

成約率が上がる

仲介業者の営業マンの多くは、固定給のほかに売上に応じたインセンティブがもらえる給与体系になっているため、同じ1契約でもADが出る契約の方が俄然力が入ります
これにより、迷っているお客さんを多少強引にでも成約に結び付けてくれる可能性が高まるでしょう。

また、ADが出る物件の場合は、お客さんとの交渉の幅が広がるという利点もあります。

例えば、仲介業者がお客さんから「仲介手数料0.5ヶ月分から値引きしてくれたら契約する」と交渉されたとします。

通常であれば、ほとんどの仲介業者は仲介手数料の値引きには応じないため、契約に至らない場面ですが、AD付きの物件であれば、例え仲介手数料を多少値引きしたとしても、その分はADでカバーすることが可能です。

そのため、成約になることを優先して仲介手数料を値引きするという柔軟な対応がとれます。

ADは出すべき?その他の空室対策

フリーレントも
ADを出すべきかどうかは一概には言えませんが、少なくとも出すことで上記のようなメリットがあることは確かです。
ADを出すうえで重要なことは、「金額の決め方」「事前の準備」にあります。

適切なADの決め方

ADを出すとして、何ヶ月分を出すのかについては、非常に慎重な判断が求められます。
ADという経費を出費する以上は、必ず「費用対効果」が伴わなければ意味がありません

そこで、ADの金額を決める際には「ADを出さなかった場合に予想される空室期間」を判断の基準にします

空室期間を予測することは簡単ではありませんが、過去の空室履歴をデータとして蓄積しておけば、より精度の高い予測が可能です。

例えば、夏場に空室になってしまい、過去に2ヶ月以上空室になったことがあるような場合であれば、ADの設定を賃料の2ヶ月分以内に抑えれば、実質的な費用対効果が出ることになるでしょう。

事前の準備

ADを出すからには、早期に入居者が決まらないと、ただ支出が増えるだけになってしまいます。かと言って、単にADを出せば決まるというほど、賃貸募集は単純なものではありません。

ADを出すのであれば、事前に現状の「家賃設定」が間違っていないか、必ず確認することがとても重要です。せっかくADを出しても、相場よりも割高な家賃では、結局早期成約に至らず、損をしてしまう可能性があります。

そのため、まずはADを出す決断をする前に、現在の家賃設定が相場と合致しているのか、仲介業者の意見も聞きながら必ず確認しましょう。

MEMO
ワンポイントマメ知識:フリーレントも効果的

ADはあくまで仲介業者に対するアピールのため、さらに早期の客付を目指す場合は、入居者に対してアピールできる要素も必要になってきます。

とはいえ、「家賃や敷金、礼金を値下げすることは避けたい」というのが本音でしょう。

そこで、おすすめしたい対策が「フリーレント」です。

フリーレントとは、契約後の賃料を一定期間無料にするというサービスのことで、早期客付に一定の効果があります。

特に、賃貸から賃貸への住み替えを考えている人にとっては、フリーレントがあることで、既存の賃料と新居の賃料の重複を回避できるため、より成約に結びつきやすくなるのです。

ADをすすめてくる仲介業者のココに注意!

ADは早期客付に対して一定の効果があることは間違いありませんが、安易に決めることはあまりおすすめできません。

先程もお伝えしたとおり、ADを出す場合は、ADの設定金額と、事前の準備を徹底しなければ、思ったような費用対効果は期待できないでしょう。

にも関わらず、仲介業者の担当者の中には、単にADをたくさん出すことだけをすすめてくるケースがあるため注意しなければなりません

ADはただ出せばよいというものではなく、あくまで「戦略的」に行うことで「費用対効果」が得られるものです。

仲介業者にADを出すよう迫られたとしても、安易に決めず、まずは費用対効果について慎重に検討してから決めたほうがよいでしょう。

ADを出す場合の注意点について

冒頭箇所でもお話しした通り、仲介業者の仲介による報酬は、原則として仲介手数料の上限までで、それ以上の金額を仲介業者が受け取ることは、宅建業法違反になります。

ADはあくまで、通常の仲介業務を超えた業務や広告、コンサルティングなどに対する費用として支払うものなので、ADを仲介業者に出す場合は、必ず個別に業務委託契約、広告宣伝契約、コンサルティング契約などを忘れずに締結する必要があるのです。

特別な広告やコンサルティングなどの実態がないのに、仲介業者がADをもらうと、宅建業法違反になる恐れがあるため、ADを出す側である不動産投資家もその点について注意しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
不動産投資において経費は抑えたいところではありますが、戦略性をもってADを出せば、費用対効果の面でプラスになる可能性は十分あります。

ADは空室対策としてとても有効ですが、安易に出すのではなく、今回解説したことを思い出していただき、金額の妥当性を十分検討した上で実施することをおすすめします。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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