不動産投資コラム

2035年までの不動産投資を予測。今は売り時?

2020/02/16
行政書士棚田 健大郎
2035年までの不動産投資を予測。今は売り時?

いよいよ2020年東京オリンピック・パラリンピックが来年に迫っていますが、2019年から五輪終了後以降にかけて不動産投資はどうなっていくのでしょうか。

今回は、全2回に分けて、2019年から五輪終了後に起こり得る、不動産投資市況に係る問題について解説いたします。

1回目となる今回は、直近2019年から2020年東京オリンピック終了までにおける不動産市場の動向について、スポットを当てたいと思います。

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2020年東京五輪終了前後で大きな変革の可能性あり

東京オリンピック開催が決定した2013年以降、東京都を中心に全国のマンション価格の水準は右肩上がりで上昇してきました。

国土交通省が発表している「不動産価格指数(住宅)」の下記データによると、東京オリンピック開催決定以降から現在にかけて、区分所有のマンションについては約40%も価格が高騰していることがわかります。

不動産価格指数(住宅)/平成30年9月分▼
不動産価格指数
不動産価格指数(平成30年9月・第3四半期分)の公表/国土交通省

ちなみに、一戸建て等についてはほぼ横ばいであることから、不動産投資の対象となりやすいマンションだけが飛び抜けて注目を集めているといえるでしょう。マンション価格が高騰した理由を探ることで、今後の不動産投資の動向が見えてくるのです。

東京五輪決定から不動産価格が値上がりした2つの理由

東京オリンピック開催が決定した2013年をきっかけとして、マンション価格が高騰したのには、大きく次の2つの理由があります。

外国人投資家の増加

東京オリンピック開催決定により、今後の価格上昇を予想した外国人投資家が、こぞって東京の不動産を買い求めたことが、価格上昇の起爆剤となったのです。

特に、中国や台湾人の投資家については、日本人がインカムゲイン(家賃収入)をメインとして考えるのに対し、キャピタルゲイン(売却益)狙いでマンションを買い付けたため、日本人では買わないような高価格、低利回りの物件についても、立地さえよければ購入して行きました。

こういった一連のマンションの爆買い効果もあり、東京を中心にマンション価格はどんどん上昇していったのです。

異次元の金融緩和政策

東京オリンピック開催決定とほぼ同じ時期から始まったのが、日銀の黒田総裁による「異次元の金融緩和政策」です。

これにより、市場は超低金利状態となり、以前は不動産投資向けローンであれば3~4%程度の金利だったのが、内容次第では1%前後も可能になったため、不動産価格の高騰に拍車を掛けました。

金利が下がるということは、その分不動産投資家の総支払額が下がるため、不動産価格が高くてもローンが組みやすくなるのです。

また、本来は企業の設備投資への融資を狙っていましたが、実際の需要はほとんどなかったため、貸出先に困った銀行が安定した貸付先である不動産投資家に対してどんどん融資したことも、マンション価格高騰の追い風となりました。

2019年マンション価格は下落する!?

不動産価格の動向を探るうえでポイントとなるのが、中古マンション価格の動向です。

中古マンションは売主が個人であることから、不動産会社が売主となる新築マンション価格よりも、経済状況や社会不安などに敏感に反応して値下げが始まるため、不動産市場の先行指標と言われています。

「東日本不動産流通機構」の下記データによると、首都圏において2018年1月から12月にかけて成約価格が前月比で2%以上下落することはなかったのですが、2019年1月のデータを見てみると、本来引越し需要に後押しされて上昇する時期にも関わらず、2.5%も下落していることがわかります。

中古マンションレポート 成約状況/月例速報 2019(平成31)年01月度 Market Watch▼
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REINS TOWER

また、前年比で見てもここ1年間ずっとプラスだったのが、初めて前年比-1.9%と下落に転じたのです。これは、上がりすぎたマンション価格が転換期に来ている可能性を示唆していると言えます。

2019年にマンション価格が下落することは、以下のような要因からも推察できます。

2019年から長期譲渡所得

東京オリンピックが決まった2013年に不動産投資をした人は、2019年から売却した際の所得が短期譲渡所得から長期譲渡所得になります。

これにより、売却した際の所得税率が30%から15%と半分になるため、東京オリンピック前のこの時期に利益を確定させて売り抜けようとする人が増える可能性が高いのです。

融資引き締め

2018年より融資の引き締めがあり、この影響で、地銀、信金といった不動産投資で頻繁に利用される金融機関についても軒並み審査が厳しくなり、個人投資家が買いにくい状況が発生しているのです。

融資が厳しくなるということは、借入上限額が下がるということでもあります。
不動産会社は融資が通るギリギリのラインで不動産を売却しようとしますので、借入限度額が下がれば、それに合わせて不動産価格も下げざるを得ないでしょう。

消費税増税の影響も

増税

不動産価格下落に拍車をかけそうなのが、今年10月に予定されている消費税10%への増税です。予想では、上記2つの影響から、今年10月直前の段階では、既に不動産価格が緩やかに下降している可能性が考えられます。

そんな中、消費税が10%に増税されるとなると、売りたい気持ちに急速に拍車がかかる可能性があるのです。

不動産会社に支払う仲介手数料や司法書士報酬などについては、消費税の影響を受けるため、「どうせ売却するなら10月までに売ってしまおう」という心理が働いて、駆け込み需要が増大して売り物件が増える可能性が考えられます。

まとめ

このように、2019年から2020年にかけては、これまで上昇曲線を描いてきた不動産価格は転換期を迎え、一転して下落に転じる可能性が予想されます。

裏を返せば、今現在がリーマンショック以降最も高い価格となっているわけですから、ここ数年以内に売却を検討している物件がある方は、できるだけ早めに売却して利益を確定させたほうがよいかもしれません。

ここまでは、2019年から2020年東京オリンピック後にかけての大まかな不動産市場の動向について予想してきました。

次回 は、不動産市場に影響を与える可能性がある、入管法の改正や生産緑地等の問題にも触れながら、2020年以降の不動産市場について予想していきたいと思います。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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