不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

建物の償却年数を自分で決めることはできる?

中古アパートを購入しました。築25年の木造の建物です。

次の融資を考え、黒字にしたいと考えています。
また、将来の売却も見据えて、あまり減価償却を大きく計上したくないと考えています。

しかし、築25年の木造だと4年償却になると聞きました。
この建物の減価償却を4年以上で償却をしたいのですが、問題ないでしょうか?

勝手に償却年数を決めるのはリスクがあります。

簡便法以外の方法による年数も認められています。

1.簡便法

中古の耐用年数を計算するときによく使われるのは、下記の簡便法と呼ばれる算式です。

中古の耐用年数 = 法定耐用年数 -(経過年数 × 0.8)…… (注)

(注1)計算結果が1年未満の端数が出た場合には、1年未満切り捨て
(注2)税法の規定では「中古の耐用年数 =(法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数× 0.2」となっていますが、計算結果は同じになります。
(注3)経過年数が法定耐用年数を超えている場合には、次の算式になります。
法定耐用年数 × 0.2 = 耐用年数(1年未満切捨)

具体例

築30年の鉄筋コンクリートの居住用マンション

47年 -( 30年 × 0.8 )= 23年
∴23年で償却

築25年の木造の居住用アパート…… 22年(法定耐用年数)< 25年(経過年数)

22年 × 0.2 = 4年(1年未満切捨)
∴4年で償却

築年数が経っていれば短い期間で償却することが可能になります。
しかし、短い期間で償却すると償却が終わった途端に大きく所得が出てしまい、税金が課税されることになります。

また、将来売却する際に、譲渡所得の計算上、減価償却によって経費にした金額は、取得費(売却金額から控除されるもの)から除かれるため、譲渡の税金が高くなることがあります。

減価償却は早く償却すればよいというわけではなく、出口戦略を見据えて短く償却した方がよいのか、長く償却を取った方がよいのか判断しなければなりません。

2.簡便法以外の方法

(1)法定耐用年数を使う

「中古の固定資産を取得した場合には、その資産の法定耐用年数によらずに、購入した中古資産の取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができる」とされています。

つまり、中古の耐用年数を使うことが「できる」のであって、原則は、法定耐用年数を使用します。

したがって、中古であっても法定耐用年数を使用することには問題はありません。
しかし、法定耐用年数では、償却期間が長すぎることもあります。

(2)見積法を使う

中古の耐用年数は、使用可能期間として見積もられる年数を使うのが原則です。
見積もるのが難しい場合には、例外的に簡便法を使用できることになります。
大抵は、見積もることが難しいので、簡便法による算式を使うのが一般的になっています。

したがって、使用可能期間として見積もれるのであれば、2年でも5年でも10年でも償却することができます。

しかし、後から税務署に否認されないように根拠ある年数でなければいけません。勝手に決めることはリスクがあります。
できれば不動産鑑定士やホームインスペクターの鑑定書や意見書などの証拠があることが望ましいです。

2019/03/31

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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