役員報酬は月6万円がよいの?それとも0円がよいの?
法人で賃貸物件を購入しようと思い、会社を設立しました。
代表者の役員報酬は0円とするべきなのでしょうか?
月6万円がお得という情報もあります。
下記にて説明します。
社会保険の加入
法人を設立すると、代表者が1名だけであっても社会保険の強制加入となります。
社会保険料の負担は、健康保険と厚生年金と合わせて、給与金額の約30%になります。
例えば、年収が500万円の場合の社会保険は、約150万円になります。
この保険料は、会社と従業員(役員)の折半で払うことになります。
社会保険に加入すると、金銭的な負担が大きくなってしまう可能性があります。
月6万円の方がよい場合
勤め先もなく、どこの社会保険にも加入しない(扶養にもならない)となると、国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険料の計算は、自治体によって若干変わりますが、前年度の合計所得金額から基礎控除を引いた金額を基準に算定されます。
配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などの所得控除は考慮されないのです。
つまり、所得税は低くても、国民健康保険料は高く計算されることがあるのです。
国民健康保険料は、世帯で計算され、上限額もあるため一概に高くなるとは言えませんが、社会保険料(厚生年金保険料を含む)の最低額(東京の場合)は、月額給与63,000円未満であれば、個人法人合わせて約28万円です。
給与支給額を少なくして、健康保険料を抑えることが可能です。
0円の方がよい場合
サラリーマン投資家など、代表者がすでに別の会社にお勤めしている場合。
勤務先の会社と、自身の会社で社会保険の加入になると、社会保険料の算定は、それぞれ払われた給与の合計金額によって行われます。
算定された保険料を、それぞれの給与額で按分して、負担することになります。
例えば、勤務先の会社がA社で月64万円給与をもらい、自身の会社B社で6万円給与をもらうとすると、64万円+6万円=70万円にかかる保険料が算定されます。
そして、A社で、保険料×(64万円/70万円)が徴収され、B社で、保険料×(6万円/70万円)が徴収されることになります。
社会保険料を払わない方法として簡単なのは、給与を支給しないことです。
役員報酬は、最低賃金の規制などの適用はありません。
経営戦略その他の理由により役員報酬を出さない会社は現実的にあります。
無報酬が株主総会や取締役会よって正当に決議されたものであれば、その決議の効力が生じるときに、被保険者資格が喪失となります。
『労務を提供しているものの、「労務の対償として報酬を受けている者、又はその対価としてその報酬を受ける関係にあるもの」であるとは解すことができず、「その事業所に使用されなくなったとき」と解するとして、資格喪失する』としています。
したがって、役員報酬を無報酬と決議していれば、社会保険の被保険者にはならず、加入の義務がないことになります。
支払わなければ、社会保険に加入する必要はありません。負担もゼロです。
給与を支払わないと、会社に利益が残ることになるため、法人税等がかかります。
しかし、資本金1億円以下の中小法人であれば、法人税の実効税率が低いため(課税所得800万円以下であれば、約24%)、社会保険に加入するよりも負担は少なくなります。
したがって、サラリーマンなどで勤務先の社会保険に加入している場合には、あえて給与を支給しない方がよいでしょう。
2024/11/15
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士