不動産投資コラム

法人化すると有利?知っておきたい種類と手続き

2018/05/18
司法書士宮﨑 辰也
法人化すると有利?知っておきたい種類と手続き

不動産投資の事業を始める方は、法人化するべきかどうか考えたことがあると思います。

そもそも、なぜ不動産事業を法人化するのでしょうか?

それは個人で購入・運営するよりも、税金面での優遇を得ることができ、合法的に納税額を最小限に抑えられるからなのです。

キャッシュをより多く残すことができるという最大のメリットがあるのです。

最初から法人化してスタートする方、ある程度運用してみて感触をつかんでから法人化したいという方もいらっしゃると思いますので、

ここでは、法人化するタイミングの見定め方、法人化にはどのような選択肢があるのかなどを具体的にご説明していきます。

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法人化のタイミング

不動産事業法人化のタイミング

あらかじめ法人を設立したほうがいいのか、それともある程度の家賃収入が得られるようになってからのほうがいいのか、法人化するタイミングはまさに人それぞれによって変わってきます。

例えば、家賃収入があったとしても、修繕費や管理費等に多くの経費がかかり、あまり収益が見込めない場合には、法人化するメリットはありません。

では、どのようなときに法人化すべきかといいますと、ひとつの判断基準としては、個人と法人の税率の違いになります。

つまり、双方の税率を比較し、個人より法人の税率が低くなるタイミングで法人化すれば税制の面でメリットがあります。

個人の所得税の税率は、所得が高い人ほど税率が高くなる超過累進税率が採用されています。

そして、税制改正により、課税所得が900万円を超えると33%、1800万円を超えると40%にもなります。

これに対し、法人の場合は、課税所得が増えても、基本税率は変わりません

一般的に、課税所得が900万円を超えると個人の所得税率が法人の税率を上回るので、このタイミングで法人化するほうがいいといわれています。

ただし、サラリーマンと兼業で不動産投資をしている場合は、もともとの給与所得があるため、現在の年収においてどのくらいの税率が課されているのかを把握する必要があります。

また、不動産経営を行う法人は中小企業であることが多く、この場合税制が優遇されており、その税率も、課税所得が800万円以下であれば、22%~25%程度になります。

そのため、サラリーマンとしてある程度の年収がある方であれば、法人化してから不動産投資を始めたほうがメリットがありますし、安定した家賃収入を得られるようになって初めて法人化のメリットを受けられる方もいらっしゃいますので、よく検討することが必要です。

設立する法人の種類を選ぶ

設立する法人の種類

法人化することを決めたら、次にどのような法人を設立するかを決めます。

以前であれば、多くの方が、有限会社もしくは株式会社を設立していました。

しかし、法律の改正により、現在では有限会社を新規で設立することはできなくなりました。

そこで、一般的には、株式会社・合同会社・一般社団法人を設立する場面が多いかと思います。

株式会社

株式会社とは、株式を発行することで出資者を募り、取締役等の役員が事業活動を行っていく形態の会社のことを指します。

以前は、株式会社を設立するためには、資本金について最低額の制限があったり、役員は3人以上いなければ設立できないなどの制限がありましたが、法律の改正後、役員は取締役1人でよく、資本金も1円から設立できるようになりました。

そのため、株式会社も設立しやすくなったため、設立される法人のなかで、一番多く利用されるのが、株式会社になります。

合同会社

法律の改正により、株式会社に対して持分会社といわれる形態の会社を設立することができるようになりました。

持分会社は、合名会社・合資会社・合同会社のことを指しますが、このなかで最も選ばれるのが、合同会社になります。

合同会社は、法人格を有する点では株式会社と同じですが、株式会社と異なり、法人設立の際の公証人による定款認証が不要だったり、役員の任期に関する定めがなかったりしますので、初期コスト低く抑えることができます。

一般社団法人

一般社団法人とは、営利性を目的としない法人で、2人以上の社員から設立することができます。

ただし、営利性を目的としないといっても、利益を追求してはいけないというわけではなく、利益が出たとしても利益配分(株式会社でいうところの株主配当)が行えないだけであって、活動の範囲は、株式会社とほぼ同じです。

一般社団法人につきましては、法人設立の際の公証人による定款認証は必要ですが、登記申請の際の登録免許税が、株式会社より安いため、こちらも初期コストを低く抑えることができます。

また、一般社団法人は、節税対策として利用されることもあります。

相続対策として一般社団法人を設立し、収益不動産や同族会社の株式を移転し、ご子息が一般社団法人等の理事に就任することによって資産の管理をするというものです。

一般社団法人には、株式会社のような出資金とか持分という概念がないため、社員(株式会社でいう株主)に相続が発生しても、相続税は課されないといわれているためです。

株式会社を設立するために必要な手続き

株式会社を設立するために必要な手続き

法人化することを決め、さらに設立する法人の種類を決めたら、いよいよ法人を設立する手続きに入ります。

ここでは、実際に株式会社を例に取り、設立する際にどのような手続きが必要になるか、簡単にご説明していきます。

MEMO
株式会社設立に必要な手続き

① 会社設立事項の決定
株式会社を設立するためには、商号、本店所在地、資本金、事業目的、役員構成などの基本事項を決めなければなりません。
会社の基礎となる事項ですので、しっかり考えながら決めましょう。

② 定款・設立関係書類の作成
設立する株式会社の基本事項が決まりましたら、定款や役員の就任承諾書等を作成します。
特に、定款は会社の根本規則となるものですので、後で困らないように会社設立後のことも考えて、慎重に決める必要があります。

③ 出資の履行(資本金の払込み)
株式会社を設立するまでに、当初決めた資本金を払い込まなければなりません。
設立する段階では、まだ法人名義の口座を作ることができませんので、発起人個人の銀行口座に資本金を払い込む方法で行います。

④公証人による定款認証
株式会社を設立する場合は、定款について必ず公証人による認証を受けなければなりません。
定款認証をする際、電子定款認証サービスを利用すれば、定款に貼付する印紙4万円が不要になります。
この公証人による定款認証は、一般社団法人を設立する場合も必要ですが、合同会社を設立する場合は不要です。

④ 会社設立の登記申請
株式会社は設立の登記申請をした日が、設立日になります。
そして、登記申請は、法務局が空いている平日しか行えません。
例えば、1月1日は休日になりますので、設立日にすることができません。
そして、登記の申請から完了まで1週間程かかりますので、時間に余裕をもって手続きを進めてください。

途中から法人化し、不動産を法人名義にする際の注意点

途中から法人化し、不動産を法人名義にする際の注意点

不動産投資を始めて、途中から法人を設立し、今後は法人名義で不動産経営を継続していきたいと考えた場合には、既に所有している不動産の名義を法人名義に変更する必要があります。

ただし、不動産の名義を変更する場合には、「登録免許税」、「不動産取得税」という税金を納めなければなりません

そして、当初個人の名義で不動産を購入したときにかかった税金が、法人名義にするときにさらにかかってしまいます

不動産の価額が大きくなれなるほど、それに比例してかかる税金の金額も大きくなります。

さらに、不動産の名義を変更する場合には、必ず変更する「原因」が必要になります。

この場合の「原因」は、主に「売買」「贈与」になります。

原因が「売買」になれば、売買代金が発生しますので、法人から個人への売買代金の移動が必要になります。

また、「贈与」を原因とした場合には、別途法人側に贈与税がかかることになります。

このように、途中から法人化することで、予想もしなかった費用が後になってかかってくることになり、法人化してから不動産投資を始めたほうが結果的にコストを抑えられる場面もあるため、法人化の際には注意が必要です。

まとめ

法人化は、所得税率が下がるだけでなく、経費計上や、家族を法人の役員とすることで、給与所得控除や所得分散という方法で節税が可能になる等のメリットがありキャッシュフローが良くなります。

それだけでなく対外的な信用が上がることから、今後不動産を買い増しして投資を広げて行きたい人にとっては、必ず視野に入れるべきでしょう。

不動産と今の給料を合わせた収入額を見ながら、将来的に投資をどうしてゆきたいのかの希望含めて、法人化を検討していくとよいでしょう。

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宮﨑 辰也

司法書士

宮﨑 辰也

司法書士

平成28年、フロンティア司法書士事務所を開設。不動産に関する登記から家族信託、相続手続き、会社登記に至るまで幅広い分野に迅速丁寧に対応。

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