レオパレスのアパート界壁不備、一級建築士に取材
賃貸アパート大手の株式会社レオパレス21は、同社が1996年~2009年に施工したアパートで界壁工事の不備が見つかったことを受け、アパートの全棟調査を行うと2018年5月29日に発表しました。
界壁がないとどのような影響があるのか、都内で複数のアパートを設計している一級建築士に取材しました。
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界壁とは?すべてのアパートに必要なもの?
「界壁は防火と防音のために、すべてのアパートに絶対に必要です。
建築基準法第30条及び建築基準法施行令第114条第1項に違反となりますね。
界壁は中心部分のグラスウールで音を吸収し、その周りに硬質ボードと石膏ボードを張ることで、延焼防止となっていますね」
▼取材した会社がアパートに利用している界壁について
界壁は延焼防止、遮音にどの程度影響がある?
(1) 延焼防止について
「界壁は万が一、火災発生した時に隣の部屋への延焼を防ぎ、人命救助のための時間をつくります。また建物を全焼しにくくする役割もありますね」
(2) 遮音について
「界壁がないと壁に穴があいているような状態ですね。TVの音や洗濯などの生活音、小さい物音も隣の部屋に筒抜けとなる可能性がありますよ」
建物の引き渡し時にチェックされない?
「まず、建築確認申請の時に界壁があるかを図面でチェックされますね。
その後、中間、完了検査の際にも確認されますが、中間検査の時には、まだ界壁を作る前で実際には確認できないのです。
完了検査の際は、建物が出来上がっているため、天井があるので実際に目視することはできません。その代わりに、施工時に界壁の工事写真を撮っておいて、写真で確認してもらいますね。
ただ、随分前はアパート施工時の界壁の写真チェックを行わない民間の審査機関もあると聞きましたが、今は、消防検査で必ず界壁の写真をチェックするようになりました。なので、今回のレオパレス社のアパートも2009年以前に建築されたアパートだけですね」
オーナーが自分でチェックする方法はある?
「アパート建築中であれば、界壁作成時に確認させてほしいと施工会社に伝えておけば、確認できるでしょう。ただ、建物が完成している場合、天井を外しての確認になるので、難しいと思いますよ。
なので、施工会社がアパート建築中に撮影した界壁の写真を見せてもらうのが現実的だと思いますね」
界壁を後から付けることはできる?
「後から付けることはもちろんできますよ。ただ、工事工程は簡単ではありませんね。
まず、工事を始める前に傷がつかないように養生をして、天井を一部壊し、建材や人が入れるようにします。そして界壁の下地を作り、石膏ボード張り、界壁の仕上げを行います。
その後、天井を復旧して、天井を仕上げ、養生を外して、クリーニングとなります。
簡単な工事ではないので、1日で終わる工事ではないと思いますよ。
また、界壁は両面張りなので、隣の部屋でも同工程を行うことになりますね」
現在では必ず界壁のチェックはされている
今回、アパートを実際に設計している一級建築士に話しを聞きましたが、以前は建築確認では確認されないままアパート引き渡しとなってしまうこともあったようですが、近年では必ず界壁の写真チェックがはいっているとのことです。
レオパレスは1996年~2009年に施工した全アパートの界壁を調査すると発表しましたが、すべてのアパートの天井を一部壊して、天井裏を確認するとなると工事は大きくなり、入居者への影響も大きいと思われます。
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