不動産投資コラム

アパート経営の「大規模修繕」タイミングと費用は

行政書士棚田 健大郎
アパート経営の「大規模修繕」タイミングと費用は

不動産投資でアパートやマンションを購入したあと、長期にわたって物件の価値を維持していくためには、「大規模修繕」について計画しておく必要があります。

前回は一棟アパート経営において大規模修繕が必要な理由、また「長期修繕計画の立て方」の最初のステップなどをご紹介しました。
今回は工事のタイミングや費用の目安についてお話しします。

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長期修繕計画における工事項目ごとの「タイミング」と「費用の目安」

大規模修繕は、非常に多くの工事項目を含んでいるため、長期修繕計画書を作成するにあたっては、大規模修繕工事の項目を部門ごとに分けて考えると、スムーズに作成することができます。

ここでは、長期修繕計画における工事項目の分け方と、タイミング、費用の目安について解説します。

建築部分に関する修繕項目

建物の建築部分にかかる修繕項目で、具体的には以下の2つに分類することができます。

防水関係

屋上や部屋のなかのバルコニー、廊下や階段などの防水に関する項目です。
防水については、修繕が遅れると雨漏りの原因に直結するため、早めに修繕工事を実施する必要があります。

修繕周期の目安:12年
修繕費用の目安:5,000円/㎥

外壁関係

建物の外装部分にあたる修繕で、外壁塗装やタイルの張替え、鉄部塗装、シーリングの打ち替えなどがあります。

修繕周期の目安:外壁12年 鉄部塗装4~6年 シーリング12年
修繕費用の目安:外壁塗装5,000円/㎥ 外壁タイル(下地パネル含む)30,000円/㎥ 鉄部塗装30万円/鉄階段10段程度

なお、外壁工事については施工にあたって足場を組む場合もあるため、別途足場設置費用や養生費用などが発生します。

設備に関する修繕項目

アパートの設備部分に関する修繕項目で、以下の3つに分類することができます。

給排水設備

アパートの給排水管に関係する修繕項目で、給水ポンプ、排水ポンプ、貯水槽改修、給水管更新、排水管更新などがあります。

修繕周期の目安:給排水管15年 給排水ポンプ8年 貯水槽25年
修繕費用の目安:設置状況によって異なる

給排水設備については、設置状況によって費用は大きく変わってきますので、実際に水道業者に見積もりを取ってもらうことをおすすめします。
およそ15,000円/mくらいが目安になりますが、別途技術料や施工費用などが必要です。

電気設備

アパートの主な電気設備としては、エントランスや廊下などの共用部分の電気、インターホン、テレビ視聴設備などがあります。

修繕周期の目安:10~15年
修繕費用の目安:50万円程度

アパートの場合はマンションとは違い、エレベーターや機械式駐車場など、高額になりやすい設備が少ないため、修繕費用としてはそこまで負担にはならないでしょう。
最近では、共用部分の電球をすべてLEDにして、修繕費用を削減するケースが多いようです。

その他の設備

その他の設備としては、空調や換気設備、ガス管などの改修工事があります。

修繕周期の目安:15~30年
修繕費用の目安:50~100万円程度

このように部門ごとに分けてみると、いつ、どの程度の費用が必要になってくるのか予想できるようになります。

大規模修繕とはいえ、すべてを一度に行う必要はないため、修繕周期と実際の劣化状況を見ながら、修繕時期を分散させることで負担を軽減させることも可能です。

では、次項では、実際にかかる修繕費用についてシミュレーションしてみたいと思います。

実際の修繕費用をシミュレーションしてみよう

では、前項までの情報をもとに、実際の修繕費用についてシミュレーションしてみたいと思います。

シミュレーション

14戸(1部屋20㎥)3階建て・築15年の木造アパートの場合

築15年目で施工が必要となる可能性がある項目と費用は以下のとおりです。

・屋上防水
屋上面積が90㎥と仮定すると、90㎥×5,000円=450,000円

・外壁塗装
外壁面積が200㎥と仮定すると、200㎥×5,000円=1,000,000円
ただし、高さによっては足場を組む必要性も出てくるため、費用については1,500,000円前後を予定しておくほうがよいでしょう。

このように、築15年が経過すると、屋上防水と外壁塗装だけでおよそ200万円の修繕費用が必要になる可能性があります。

何の準備もしていないと、重い負担となってしまいますので、事前に長期修繕計画を立てて、その計画に沿って必要な費用を積み立てていくことが大切です。

まとめ

今回は、2回に渡ってアパート経営における大規模修繕のタイミングと費用について解説してきました。
前編・後編で重要なポイントをまとめると、以下のとおりです。

マンションとは違い、アパート一棟を所有している場合は、自分自身で長期修繕計画を立てる必要がある。

中古アパートの場合は、長期修繕計画を立てる前に、建物診断を実施して、アパートの劣化状況を正しく把握することが重要。

長期修繕計画に沿って、必要となる修繕費用を毎月積み立てていくことで、必要なときに余裕を持って工事をすることができる。

適切な時期に必要な修繕工事を実施していくことは、アパートの資産価値を維持するためにもとても大切なことです。

まだ、長期修繕計画を立てていない方は、ぜひ今回の記事を参考にして、長期修繕計画書を作成してみましょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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