不動産投資コラム

仲介手数料0.5ヵ月分判決 賃貸業界への影響は?

仲介手数料0.5ヵ月分判決 賃貸業界への影響は?

このほど東京高裁で、不動産会社大手の東急リバブルが賃借人から受け取った仲介手数料1ヵ月分のうち半月分を返還するようにとの注目の判決が出ました。

そこで本記事では、今回の判決がもたらす意味と、今後の賃貸業界、不動産業界に与える影響と対策について詳しく解説します。

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いったい何が起こったのか

まずは、今回の裁判の内容をダイジェストで解説します。
原告側の賃借人(入居者)は、東急リバブルの仲介で物件を決めて仲介手数料として家賃の1ヵ月分を支払いました。

その後賃借人が「法律で定められている仲介手数料の上限は半月分だ」と主張し、差額の半月分の返還請求を東京簡易裁判所に提訴したのです。

一審では請求を棄却されましたが、二審の地方裁判所の判決で賃借人である原告が勝訴、被告である東急リバブルは上告しましたが、高裁は二審と同じ判決を下し、東急リバブルに半月分約12万円を原告に返還するよう命じたのです。

注目すべき3つの争点とは

さて、今回の裁判において注目すべきポイントは以下の2つです。

  • 法律で決められている仲介手数料の上限はいくらなのか
  • 原告が被告に媒介の依頼をしたのは法的にいつなのか

では、順番に解説していきます。

仲介手数料の条件の法的根拠

原告は仲介手数料の上限が半月分だと主張していますが、ではその根拠はどこにあるのか解説します。
仲介手数料の上限については、宅建業法において次のように規定されています。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

宅建業法 第46条

見ての通り、実は宅建業法では仲介手数料の上限を直接規定しておらず「国土交通大臣の定めるところ」となっています
国土交通大臣の定めるところとは、旧建設省が告示した下記内容です。

【貸借の媒介に関する報酬の額】
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(中略)の一月分に相当する金額以内とする。

この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の二分の一に相当する金額以内とする。
国土交通省ホームページ

上記をわかりやすく箇条書きにすると次の通りです。

  • 不動産業者が賃貸の仲介で、貸主、借主双方から受領できる報酬の合計額は、家賃の1ヵ月分が上限である。
  • 貸主、借主の一方から受領できる金額は、家賃の半月分が上限である。
  • 媒介の依頼を受ける際に承諾を得ていれば、一方から半月分以上を受領してもよい。

図にするとこんな感じです。

仲介手数料

不動産業界で仕事をしている人は大体知っていると思いますが、一般の方がこの記事を読むと、
「そうなの?」
と感じるのではないでしょうか。

借主に対して家賃の1ヵ月分を仲介手数料として請求することが慣習化していることもあり、本来は半月分までが上限で、例外的に承諾があればMAXで1ヵ月分まで請求できるはずが、一般の方の認識では原則と例外が逆転してしまっています。

以上のような背景から、原告は被告東急リバブルに対し半月分の返還を訴えたのです。

最も注目すべき裁判の争点

今回の事例を「細かい客がいたもんだ」ということで終わりにしてはいけません。

裁判の一番の争点は、仲介手数料の上限金額ではなく、「いつ」借主に承諾を得たのか、そして「媒介の依頼を受けるに当たって」とはいつのことなのかが真っ向から食い違っていたことです。

ここからは、自分だったらいつが承諾を取るべきタイミングなのか考えながら読んでみてください。

裁判の争点

原告の主張

原告は2012年12月28日に入居申込書を東急リバブルに提出し、その後2013年1月8日に契約の意思を東急リバブルの担当者に伝えました。
その後1月10日に担当者から「1月20日に契約を締結する」と連絡がありました。

以上のような流れから、賃借人は担当者から契約締結日の連絡があった1月10日の時点を「媒介の依頼を受けるに当たって」にあたる媒介依頼成立日と主張し、その日までに1ヵ月分の承諾をしていないので不当だとして半月分の返還を求めたのです。

東急リバブル裁判

被告東急リバブルの主張

東急リバブルが媒介依頼成立日として主張した日付は数日後になります。
1月10日に契約締結日の連絡があり、その後1月15日に1ヵ月分の仲介手数料が記載されている明細書を原告に交付しました。

そして1月20日に予定通り重要事項説明をして賃貸借契約が締結され、仲介手数料1ヵ月分と記載されている入居申込書に記名押印したのです。

以上の流れから東急リバブルは賃貸借契約を締結した1月20日が媒介依頼成立日であり、その5日前である15日の段階で明細書を確認させて承諾しているのだから1ヵ月分の仲介手数料を取ることに問題は無いと主張しました。

不動産関係の会社にお勤めの方であれば、東急リバブルの主張をベースに契約のスキームを組んでいるところが多いと思います。
さて、皆さんはどっちが正しいと感じましたか?

原告勝訴で半月分返還命令

裁判所の判決では、原告の主張である「契約日の設定」をした1月10日が媒介依頼成立日であり、その時点での承諾が得られていないとして半月分の返還を命じたのです。

ではこれを受けて不動産会社はどんな対策が迫られるのでしょうか。

承諾のタイミングを早くする

仲介手数料1ヵ月分を請求している不動産会社は、重要事項説明もしくは賃貸借契約を締結する際に仲介手数料についても承諾を取っているケースが多いでしょう。

例えば、重要事項説明書の最後の署名捺印欄に「上記仲介手数料を支払うことを承諾します」といった文言を差し込んで一緒に署名捺印してもらうようなパターンです。

今回の判決で、媒介依頼成立日がもっと前に認定される可能性が出てきたので上記のような運用をしている会社は極めて危険な状態ということになります。

ベストなのは「入居申込書」に一文加えて承諾を得るのが安全かと思われます。

まとめ

今回の裁判例は、表面だけ読むと「1ヵ月分の承諾をちゃんと得てないから返せって言われたんでしょ」と思うかもしれませんが、よく確認してみると東急リバブルの「承諾を得なければならない日」の認識が違っていたという重要な要素が隠れていました。

今後判例を知った借主から同じような主張をされる可能性がありますので、承諾のタイミングはできるだけ入居申込書を記入する段階で得ておいた方がよいでしょう。

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棚田 健大郎
棚田 健大郎

棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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