不動産投資コラム

知らないと損をする不動産投資の‟勘違い節税”

税理士・司法書士渡邊 浩滋
知らないと損をする不動産投資の‟勘違い節税”

今回は、不動産投資で節税になっていると勘違いしている残念なパターンをお伝えします。

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1.不動産投資は経費計上を多くして赤字にできるという勘違い

「なんでも経費」の勘違い

不動産投資は、経費計上できるから節税になるという方がいらっしゃいます。
サラリーマンからすると、経費で落とすということができない(特定支出控除という制度はありますが、利用してメリットになる人は少ないです)ことから、不動産投資で経費を使うことに憧れを抱く方もいらっしゃいます。

しかし、何でも経費にできるということではありません。
経費にできるのは、事業に利用したものだけです。

・家族との食事代、旅行代
・友人との飲み代
・勤め先でも使用できるスーツ代、かばん代

など事業に関係のない支出は経費にすることはできません。

自宅の一部を事業で使用しているのであれば、水道光熱費、家賃などを一部経費にすることは可能ですが、事業で使用していることが明確となる部分のみが経費として認められます。

生活費も含めてなんでもかんでも経費に計上して、税務調査で修正させられた事例がありますので、注意をしてください。

「無理やり経費」の勘違い

事業にかかわる経費であれば、金額に上限はありません。
だからといって、無理に経費を計上しようと、がんばって支出をする方がいらっしゃいます。
確かに税金は減って、還付を受けられるかもしれません。

しかし、還付を受けたからといって、得をしているかどうかは別問題です。

100万円経費を使った場合に、節税になる税金はいくらでしょうか?

100万円ではありません。
税率分をかけた分だけ税金が減るのです。

所得税の税率は超過累進税率です。
所得が大きくなれば大きくなるほど、高い税率で課税されるということです。
ただし、全体に対して高い税率が課税されるということではなく、一定の金額を超えると、超えた部分にだけ高い税率がかかるというものになります。

例えば、所得税と住民税(一律10%)合わせて30%で税率がかかるのであれば、
100万円×30%=30万円が税金。つまり節税になる金額です。

100万円使って、30万円の税金が減るのです。
逆を言えば、70万円の支出は生じるということです。

つまり、税率分だけ税金が減ることから、最大でも55%(所得税45%+住民税10%)の税金を減らせることに留まり、確実に節税額よりも支出の金額の方が多くなるのです。

この事実を知らずに、経費になるからとやみくもに支出をして、手残りまで無くしている方がいらっしゃいます。

これでは何のために不動産投資をしているかわからないでしょう。

けっして経費を使うなと言っているわけではありません。必要な経費は使うべきです。
しかし、無駄な経費は徹底的に削減することが、キャッシュフロー上も経営上も良いことに間違いありません。

2.減価償却を多く取りすぎの勘違い


不動産投資は、減価償却があるから節税になるという方がいらっしゃいます。
「減価償却は支出のない経費」と謳っているようです。

これは正確ではありません。
正しくは、「減価償却は支出がある経費。ただし、支出と経費のタイミングをズラすことができるもの。」です。
現金で不動産を購入すれば、支出のタイミングが先で、減価償却となる経費が後になります。

ローンで不動産を購入すれば、支出のタイミングが後になり、減価償却となる経費が先になることが多いです。

いずれも支出は伴うのです。
減価償却の耐用年数によって、経費のタイミングを先にもってきたり、後ろにもってきたりできるため、「支出のない経費」と勘違いされてしまうのです。

たしかに減価償却で大きく赤字を作ることが可能です。
しかし、不動産所得については、赤字になった場合には「土地取得にかかる借入金の利子については、損益通算の対象にはならない」という規定があることは前回お伝えしました。

減価償却を大きくして赤字を作ったところで、土地に係る利息分までは、赤字が切り捨てられてしまうのです。

黒字であれば経費として利用できた減価償却費を、赤字にしたばかりに捨ててしまっているのです。

築年数が古い建物であれば、短い年数で償却することが可能です。
それによって1年あたりの減価償却費を大きくすることができるのですが、土地負債利子とのバランスを考えるべきです。
土地負債利子で、あまりにも切り捨てられてしまう減価償却費が大きいのであれば、短い年数で償却しない方がよいという選択を考えるべきでしょう(中古の耐用年数を簡便法ではなく、見積法を使うことで、耐用年数を長めにとることが可能です)。

3.まとめ

前回も伝えましたが、不動産所得が節税に使われてきた背景から、節税を規制する制度になっています。
赤字を作れるというところから不動産投資を始めると、節税になっていなかったり、手残りが残らない経営になってしまっているケースがあります。

不動産投資が節税にならないわけではありません。しかし、ルールを知らないと痛い目を見ます。
損をしないためにも税制や会計の知識はある程度持つべきなのです。

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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