不動産投資コラム

黒字化したい!融資を受けやすい確定申告とは

2020/02/16
税理士・司法書士渡邊 浩滋
黒字化したい!融資を受けやすい確定申告とは

いよいよ確定申告。
大家さんの確定申告のお手伝いをしていて、意外に多い要望は、銀行融資につながるように「黒字にしたい」ということ。

最近は、不動産に対する融資が厳しくなってきています。
1円でも多く融資を受けたいところなのでしょう。

赤字にして節税するよりも、融資を受けて次の物件を購入しやすいように黒字にしておきたいという要望が多いのです。

そこで今回は、融資を受けやすくするための確定申告書の作り方を解説していきます。

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1.赤字を回避するための対策

銀行融資を受けるためには、確定申告書を黒字にしておいた方がよいでしょう。

赤字では絶対に融資が受けられないということはありませんが、赤字では、賃貸経営が上手くいっていないという印象を持たれて、融資に後ろ向きになることが考えられます。

赤字にしないために経費を削るのは簡単なこと。
しかし、せっかく支出した経費を削るのも抵抗があると思います。

では、経費を削らずに赤字にならないようにする方法があるのでしょうか。

それは経費ではなく資産計上して、来年以降の経費にできるものがないか探ることです。

(1)少額の備品などを資産計上する

10万円未満の固定資産であれば、一括の経費にすることができます。
また、青色申告者であれば、30万円未満の固定資産であれば、一括の経費にすることが可能です(総額300万円まで)。

これを、あえて固定資産に計上して減価償却すれば、今年経費になる分を抑えられ、翌年以降も(少額ですが)経費に計上することができます。

(2)固定資産税や不動産取得税の未払金を立てない

固定資産税や不動産取得税などの未払金を立てないことです。
固定資産税など、行政側が税額を決定する税金( 賦課税 )の場合は、次のいずれかで計上することができます。

  1. 賦課課税通知を受けた日
  2. それぞれの納期の開始の日( 第1期の納期の開始の日 )
  3. 実際に納付した日

固定資産税の4期分は、翌年2月の支払いになるため、確定申告では未払金として計上することになります。しかし、実際に納付した日を基準にすると、未払金を計上しなくてもよいことになります。

どちらの基準で計上してもよいことになっていますので、未払金を計上しないで、翌年の経費に計上するという調整をすることができます。

(3)中古の減価償却の耐用年数を延ばす

「新規物件購入費」などの科目
中古の賃貸物件を購入した場合には、耐用年数を短くすることが可能です。
一般的には、次の算式により耐用年数を計算します。

中古の耐用年数 = 法定耐用年数 -( 経過年数 × 0.8 )

(注1)計算結果が1年未満の端数が出た場合には、1年未満切り捨て
(注2)税法の規定では、「中古の耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2」となっていますが、計算結果は同じになります。
(注3)経過年数が法定耐用年数を超えている場合には、次の算式になります。
法定耐用年数 × 0.2 = 耐用年数( 1年未満切捨 )

具体例

築30年の鉄筋コンクリートの居住用マンション

47年 ‐ ( 30年 × 0.8 ) = 23年

築25年の木造の居住用アパート

22年 ( 法定耐用年数 ) < 25年( 経過年数 )
22年 × 0.2=4年 ( 1年未満切捨 )

この算式に当てはめると耐用年数がかなり短くなる場合があります。

それによって赤字になるケースはよく見受けられます。

では、中古の耐用年数を伸ばす方法はあるのでしょうか?

①法定耐用年数を使う

「中古の固定資産を取得した場合には、その資産の法定耐用年数によらずに、購入した中古資産の取得の時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とすることができる」
と規定されています。

中古の耐用年数を使うことが「できる」となっているため、使わなくてもよい。
つまり、法定耐用年数を使ってもよいことになります。

しかし、木造なら22年、鉄筋コンクリートなら47年と非常に長くなるデメリットがあります。

もう少し短い耐用年数を使うには・・・

②見積法を使う

上記で紹介した算式は、簡便法という「例外」の規定です。

中古の耐用年数は、使用可能期間として見積もられる年数を使うのが原則になっています。
見積もるのが難しい場合には、例外的に、簡便法を使用できることになっています。

通常、年数を見積ることが困難なため、簡便法の算式を使っているということになります。

というのも、納税者が勝手に見積もってよいわけではなく、根拠ある年数として見積もらないと、後で税務署から否認されるリスクがあるからです。

私がよく提案するのが、動産鑑定士さんに見積り年数を出してもらうことです。
不動産鑑定士さんであれば、費用はかかってしまいますが、きちんと根拠ある年数を出してくれます

2.赤字でも見栄え良くする申告書にする

確定申告で最終的な利益が赤字でも、それが理由のある赤字であれば、銀行の評価は悪くなりません

つまり、毎年発生する赤字であれば、評価は悪くなりますが、今年だけ単発の赤字ということが明確にできればよいのです。

賃貸物件を購入した年は、諸費用が多くかかります。

個人事業者の場合、購入にかかる登録免許税や不動産取得税は必要経費にしなければなりません(法人の場合には、必要経費か資産計上かを選択できます)。

このような購入した年に特別にかかった費用を、科目上わかりやすくしてあげればよいのです。

勘定科目は、明らかに間違いでない限り、自由に決められます。
例えば「新規物件購入費」などの科目にしてあげればよいのです。

このように確定申告書にひと工夫することで、銀行融資を受けやすくする確定申告書は作成することができます

税理士に確定申告書をお願いする際にも、この点を相談してみるとよいでしょう。

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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