不動産投資コラム

不動産賃貸業と民泊ビジネスの違い/民泊のはじめ方

2020/02/16
行政書士石井くるみ
不動産賃貸業と民泊ビジネスの違い/民泊のはじめ方

Airbnbを始めとする民泊仲介サイトの登場と宿泊法規制の緩和を受け、ビジネスパーソンの副業・兼業として注目される「民泊」。

今回は、セカンドビジネスの定番である不動産投資(大家業)との比較の観点から、民泊ビジネスの魅力と留意点を解説します。
「民泊に興味があるけれど、どうやって始めたらよいか分からない」という方は、参考にして下さい。

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大家(賃貸)業と民泊の違い

事業者の立場から見て、大家業と民泊のいちばんの違いとは何でしょうか?

それは、民泊については、営業にあたり、行政(保健所)の許可が必要になることです。

「住宅」を1ヵ月以上の中長期間にわたり自ら賃貸する大家業は、賃貸可能な物件があれば、行政の許可を受けることなく手軽に始めることができます。

他方、住宅を1ヵ月未満短期間で宿泊者に貸し出す民泊には、ホテル事業者等を規律する「旅館業法」の規制がかかり、原則として営業前に行政の許可を受けることが必要です。
無許可営業は旅館業法違反であり、罰則として100万円以下の罰金や6ヵ月以下の懲役またはその併科となります。

大家業も民泊も、住宅を利用者に提供する点では同じですが、施設の利用期間が1ヵ月未満となる営業(例:民泊、ウィークリーマンション)は、不特定多数の者が頻繁に出入りすることとなるため、施設の衛生維持の管理責任が営業者側に求められ、公衆衛生の観点から旅館業法などの規制対象になるとされています。

許可なしで営める大家業に比べ、旅館業法等の規制対象となる民泊を営むには、より高いコンプライアンス意識が必要になることを念頭にいれておきましょう。

民泊で広がる新しい不動産運用の選択肢

前回 までの連載で解説したとおり、特区民泊、住宅宿泊事業、又は旅館業のいずれかの民泊制度により、適法に民泊を営むことができます。

インバウンド需要が拡大する中、これらの民泊制度を活用した新しい不動産の運用方法として、(1)ゲストハウス、(2)ホテル併用住宅、(3)マンションホテルの3つを紹介します。

(1) 戸建住宅を「ゲストハウス」に

ゲストハウス
戸建住宅を利用した一棟貸しタイプの宿泊施設を「ゲストハウス」と呼びます。

ゲストハウスは、広い戸建住宅を丸ごと利用して、大人数が一緒に滞在できるため、家族・親戚や友人グループに人気で、民泊としては最もポピュラーな形態と言えます。

民泊制度の活用により、賃貸住宅はもちろん、相続して空き家になっている住宅、年に数回しか利用しない別荘、子供が独立して部屋に余りがある自宅等を、ゲストハウスとして運用することができます。

(2) 賃貸併用住宅を「ホテル併用住宅」に

賃貸併用住宅の賃貸部分や2世帯住宅の別世帯をホテルとして提供することが可能です。

詳細は割愛しますが、併用住宅でホテル部分の床面積を一定以下に抑えるなどの条件を満たせば、旅館業法の許可などを受けることができます
詳細については専門の建築士や行政書士に相談しましょう。

同じ建物内にあるホテル部分を家族で運営すれば、管理会社に委託する場合に比べ経費を抑えることができます。また、景気や為替の変動等により宿泊ニーズが低下した場合や、家族の事情等でホテル運用が困難となった場合には、ホテルから賃貸に再転用することも可能です。

(3) 賃貸マンションを「マンションホテル」に

賃貸マンションの全部、または一部で旅館業法の許可等を受けたものを「マンションホテル」又は「アパートメントホテル」と呼びます。

普通のマンション同様、キッチンや洗濯機が設置されているため、少し長めの滞在に人気です。賃貸マンションへの再転用も容易なため、将来の景気悪化等にも柔軟に対応することができます。

民泊・宿泊用の建物の取得について

このように既存の住宅やアパート、マンションを民泊として活用することができます。

しかし、住宅と宿泊用の建物は、建築基準法や消防法上の取り扱いが異なるため、営業許可を取得するために、一定のリフォーム工事、消防設備工事が必要になることがほとんどです。

なかには、物理的に許可取得が不可能なケースもあります。民泊を始める目的で購入した物件で許可が取れない、ということになったら非常に困ります。

次回は、民泊物件選定のポイントについて解説します。

手間をかけずに将来に備えた資産をつくる…空室リスクが低い不動産投資とは?

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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