不動産投資コラム

なるほど!人気がある物件の秘訣

2018/05/11
構造一級建築士野口 文寿
なるほど!人気がある物件の秘訣

職業柄、たくさんの投資用の物件を見る機会があります。

もちろん仕事として投資物件を作り出すこともあるわけですが、見るときも作るときも、一番心がけていることはやはり、どうしたら人気物件になるかということです。

これから大家さんになろうと研究されている皆さんにとっても、すでに大家さんとして活動している皆さんにとっても、いつも満室で、家賃も下落しにくい物件、こんな人気物件こそ投資意欲がそそられる物件なのだと思います。

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1.人気物件の条件とは

物件の案内をする不動産営業担当者

それでは、人気物件の条件を整理してみましょう。

新築、綺麗、お洒落、駅近、バストイレ別、豊富な収納、最上階、角部屋、日当たり良好…
まだまだ色々な条件があると思いますが、条件が良くなれば良くなるほど、当然初期投資のコストが高くなり、家賃設定も高くしなくてはなりません。

一方で、人気がない物件の条件はどうでしょうか。

古い、汚い、狭い、駅から遠い…などなど、まだまだたくさんの要因があります。

こちらも当然ですが、条件が悪くなればなるほど、初期投資費用が低くなり、家賃設定も低く抑えることできます。

でも、本当にそうなのでしょうか?

古くても狭くても、駅から遠くても、満室の物件はたくさんあります。

逆に駅から近くても、お洒落でも、長い期間空室になっている物件もあります。

家賃とのバランスなのでしょうが、投資物件は本当に奥が深いです。

『人気』とは、色々な要因があるのでしょうが、作り手側からの目線で見ると、重要なポイントとしては『ニーズ』『個性』が挙げられます。

利回りや立地などさまざまな角度から検討をしていても、このニーズと個性の面からの検討がおろそかになっている場合が多いのではないかと感じます。

1-1.人気物件事例その1

駅から徒歩16分と12分の物件

例えばですが、こんな事例を目の当たりにして、なるほど!と感心させられたことがありました。

駅から徒歩12分の物件と、徒歩16分の物件がありました。

どちらも駅からは少々微妙な距離ですが、家賃や築年数、広さが同じ感じであれば、どう考えても少しでも駅から近い徒歩12分の物件のほうが良さそうに見えます。

ところが実態は、駅から遠いほうの徒歩16分の物件が満室で、徒歩12分の物件は空室が数戸発生しているのです。

家賃などの条件は、ほとんどいっしょにもかかわらずです。

2つの物件をよくよく比較してみると、なるほど!これだ!ありました。違いが。

それは、駐輪場、自転車置場に違いがあったのです。

満室の物件は全室分の駐輪場が綺麗に整備されており、もう一方は建物の隙間に無理やり乱雑に駐輪されているのです。

あくまでも一例ですが、この地域では自転車を利用される方が多く、ニーズが駐輪場にも重きを置かれているということが分かります。

そしてこのニーズに対し綺麗に整備した駐輪場で応え、この部分を個性として強調した物件が、多くの方に受け入れられていたわけです。
 
周辺のニーズにはどのようなものがあるか。そのニーズに対応しているか。それを個性として強調しているか。

こんな、いつもとは違った角度で物件を探してみてはいかがでしょうか。

さらに、物件を探すときにももちろんですが、保有してからも、時代のニーズにマッチしているかの検討は大切なことだと思います。

お住まいになられる方のニーズは、年々変化していきます。

保有してからも、研究を怠らず、ニーズの変化に対応してゆくことが、成功につながっていくのではないかと思います。

1-2.人気物件事例その2

シェアハウス

シェアハウスや民泊も、なるほど!と感心させられることが多いのですが、これもある意味、世の中のニーズをとらえ、個性を強調した物件といえます。

古い物件を古民家風にアレンジすることも、ニーズを敏感に察知し、弱みを強みに変え、個性をアピールしているわけです。

シェアハウスや古民家風アレンジだと、大掛かりで大変です。
自分でやるとなると、ちょっと手が出ません。

しかし少しの手間や費用で、個性を打ち出す方法もたくさん見かけました。

個人の大家さんの工夫で、なるほど!と感じた一番印象に残っている例をご紹介します。

その大家さんの物件は、某大学の近くで、学生向けワンルームでした。

近隣にどんどん新築物件が増えて、築年数が古いその物件は空室が目立ち、苦戦を強いられていました。

そこで色々考えた大家さんは思い切って、ペット(猫)可にすることにしたそうです。

既に住んでいた学生さんの一人ひとりに了解を得て、比較的スムーズにできたそうです。

このことだけでも、かなり積極的な大家さんなのですが、さらに、そこからの工夫に感心させられました。

キャットウォーク

その大家さん、猫の飼育についてたくさんの本を購入して、猛烈に勉強したそうです。

そしてその勉強の結果として、空室の部屋にホームセンターで購入したアンテーク風の棚受金物と、スノコ板で壁にキャットウォークを取付けたのです。

ちなみに、1部屋当りの費用は、2000円だったそうです。

結果は、大成功だったそうです。

口コミで広がり、募集する前に空き部屋がでたら知らせてほしいという人も現れるくらいになったそうです。

この大家さんの例を整理してみると、ペット(猫)可物件への変換、これがニーズの調査と対応策の検討です。

そして、キャットウォークの取付け、これが、個性の強調ということになるのではないでしょうか。

この事例に、私は、なるほど!と目からウロコで、感心させられたのは言うまでもありませんが、同時に反省もさせられました。

個性の強調となると、職業柄、最新式の設備やお洒落な壁紙や奇抜な照明器具など、コストが高くなってしまうものに目が行きがちです。

この大家さんの事例は、私のバイブルとなりました。

まとめ

ほかにも、なるほど!と感心する事例がたくさんありましたが、このような事例を見てきて、物件探しに楽しさが増すようになりました。

掘り出し物というのは、表面だけをさっと見ていただけでは、見つけることができません。

築年数が古くても、駅から遠くても、そこにニーズにマッチした個性があれば、逆に特徴のある素敵な物件に見えてくることもあります。

さらに、この物件にこんな付加価値を付けてみたらなどと想像を膨らませることが物件を見る目を高めることにもつながっていき、大家さんとしての腕も磨かれるのかもしれません。

投資の世界は、底で買って天井で売る!が醍醐味だとよく聞きます。

大家さん業の不動産投資の場合は、安く買って高利回りで運用することが醍醐味の1つでしょう。

利回りや立地、間取りに設備、投資物件を検討するときには確認すべきことがたくさんありますが、その検討項目の1つに、ニーズと個性も加えていただければ、同じ物件でも違った角度で見えてくるものや、掘り出し物があるかもしれません。

今後も、なるほど!と思ってもらえるような物件を、みなさんとご一緒に探し出したり、作り出したりしていきたいと思います。

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

野口 文寿

一級建築士・構造一級建築士

野口 文寿

一級建築士・構造一級建築士

株式会社 エヌ・エフ・シー の代表取締役として、主に都内の意匠設計・構造設計を行う。

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