2027年リニア開業で中部圏のインバウンド増加か
前回 は「スーパー・メガリージョン構想」について、働き方や住宅の選択など、中部圏に住む人々の暮らしへの直接的な影響についてお話しました。
今回は増加しつづけているインバウンド需要に関する中部圏への影響などについて、引き続き不動産鑑定士目線で考えてみたいと思います。
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インバウンド需要の更なる取り込み
「スーパー・メガリージョン構想」が中部の市場に及ぼす影響のひとつとして、インバウンド需要の増加が挙げられます。
下のグラフは、訪日外国人旅行者がどの地域に宿泊したかというデータですが、現状では、中部地方は、関東及び近畿地方と比べると圧倒的に宿泊者数が少なく、九州や北海道にも及んでいません。
平成30年1月~12月 外国人実宿泊者数▼
観光庁「宿泊旅行統計調査」をもとに作成
中部地方が観光地としてまだまだ需要を取り込めていないということですが、日本にリピートする外国人観光客の影響が地方圏にも及んできている昨今の事情を考えると、今後伸びる余地はあると思われます。
中部地方の空の玄関口の需要も拡大中
事実、中部地方の空の玄関口である中部国際空港(セントレア)の利用者数は徐々に伸びつつあります。
同空港では、増加するインバウンドの利便性を高めるために、今年9月に、LCC専用の旅客ターミナルをオープンすると発表しています。
さらにこのほど、中部3県(愛知、岐阜、三重)と名古屋市などは、リニア中央新幹線が開業する2027年には発着回数が現在の1.5倍に増えると試算し、2本目滑走路の早期実現などを求める要望書を国交相に提出しています。リニア開業までの実現を求めており、政府との調整が本格化しつつあります。
中部国際空港 航空旅客数▼
中部国際空港株式会社のプレスリリース
また、中部国際空港の国際線航空機1回あたりの着陸料は、羽田空港や関西国際空港と比べると安いというのも就航路線を増やす際のメリットになると考えられます。
これまで、成田空港、羽田空港、関西国際空港から入国して、国内を観光するということが定番でしたが、リニアによる巨大都市圏の誕生で、中部国際空港から入国して、「名古屋」駅を拠点として、各地に向かうという流れもできてくると思われます。
中部国際空港から入国する訪日観光客を、中部圏の観光地に誘導したり、首都圏や関西圏に比べ宿泊料が割安なこの地域のホテルに宿泊させたりという流れをうまく作り上げることができれば、中部圏の経済活性化にもつながっていくものと思われます。
名古屋市内では、ビジネスホテルの部屋数は著しく増えていますが、家族旅行者など大人数が宿泊できるような施設はまだまだ少ないように思われます。
民泊も含めてですが、投資目線でそのような宿泊施設に焦点を当てるのは面白いのではないでしょうか。
リニア中間駅や在来新幹線の停車駅周辺
「スーパー・メガリージョン構想」は、大都市がさらに巨大化するというイメージを持たれるかもしれませんが、圏域内のその他の地域にも影響が広がっていくと思われます。
まず、リニア中央新幹線の中間駅の周辺では再開発が行われ、街が整備されていくでしょう。
そこから、各地域に接続する交通網が発達していきます。
せっかくリニアで都心から短時間でアクセスできたとしても、接続がスムーズでなければ意味がありません。
そのため、観光地や地域の主要都市への鉄道網、道路網が新たに整備されていくことが考えられます。
例えば、「(仮称)岐阜県駅」の周辺では、中央自動車道(中津川市)と、東海北陸自動車道(郡上市)を結ぶ、「濃飛横断自動車道」の整備が進められています。
国内屈指の温泉街「下呂温泉」を経由する地域高規格道路で、この道路の整備によって利便性が一気に向上します。
また、この地域では、東海環状自動車道と中央自動車道の沿線を「東濃クロスエリア」と称し、大規模な企業誘致も展開しています。
リニア開通により、三大都市圏からのアクセスが良くなることをアピールしていて、今後どれほどの企業を誘致できるのかが注目されるところです。
このように、リニア中央新幹線の開通によって、東京、大阪、名古屋などの大都市だけでなく、地域内の観光や産業などに影響を与えていくようになると思います。
中間駅周辺ではすでに地価などにも影響が出てきていますが、この効果がどの範囲まで及ぶかは見極めていかなければなりません。
まとめ
これまで公表されているニュースをもとに、私なりの予想を書いてきました。
リニアが走るというニュースを聞いたときは、遠い未来のことだと感じていましたが、「品川-名古屋」間の開業でいえば、約8年後と徐々に現実的な話になりつつあります。
「スーパー・メガリージョン構想」の実現により、日本全体が活性化され、少しでも明るい未来になれば良いなと願うばかりです
今後、より具体的な計画が発表されていくと思いますが、注意深く観察していきたいと思います。
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