不動産投資コラム

不動産価格が下落する?2019年問題で儲けるには

2019/04/01
行政書士棚田 健大郎
不動産価格が下落する?2019年問題で儲けるには

突然ですが、最近、不動産会社からの営業電話やダイレクトメールが増えたと感じたことはありませんか?
投資用のマンションやアパートを所有している投資家をターゲットに
「2019年以降価格が下がる可能性があるので、今のうちに物件を売りませんか?」
という売却斡旋電話が増えているようです。

実はこの動きは、不動産業界がかかえる「2019年問題」が大きく影響しています。
「2019年問題」を理解できれば、不動産投資家がこれから取るべき対策が見えてきます。

そこで今回は、来年に迫っている「2019年問題」にスポットをあてて解説したいと思います。

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「2019年問題」とは

2019年問題とは、複数の事情によって2019年に不動産市場が「大きな転換期」を迎える可能性があるという問題です。
さらに具体的に言うと、東京都心部を中心に不動産価格が下落する複数の要因が、2019年に同時発生することが予想されているのです。

では、不動産価格が下落する可能性がある複数の要因とは具体的に何なのでしょうか。

「2019年問題」で不動産価格が下落するかもしれない3つの要因

「2019年問題」と言われている要因は、大きく分けて次の3つがあります。

1.日本の世帯総数のピークアウト

不動産市場の動向に影響を与える要因の1つが「世帯数」です。
日本の人口が減少傾向であることはすでに周知の事実ですが、不動産市場に与える影響が大きいのは人口よりも「世帯数」の推移です。
単純に1世帯が1つの物件に住んでいると考えれば、世帯数の減少はすなわち不動産需要の減少ということになります。

「国立社会保障・人口問題研究所」の予測データによれば、日本の世帯総数は2019年に5,307万世帯となり、以降はピークアウトして減少の一途をたどるとの予測がされています。
世帯数の減少によって不動産の需給バランスが崩れ始めることが予想されるため、これに伴う不動産価格が下がるのでは、と見られているのです。

2.2020年東京オリンピック開催の前年である

2013年に東京オリンピック開催が決定して以降、東京都心部を中心に日本の不動産が世界の投資家から注目され、中国人を中心に多くの外国人が日本の不動産に投資しました。
ただ、過去のオリンピックでは、オリンピック開催決定による期待値で上昇した不動産価格は、オリンピック開催の前年くらいからピークアウトする傾向があります。
つまり、オリンピック開催を待たずして、外国人投資家の利益確定のための売却が進む可能性があるのです。

すでに都心部では、東京オリンピック開催決定直後のときほど、東京都心部の物件を高額で購入する外国人投資家が減っているようです。

東京オリンピック開催の前年である2019年から、東京都心部を中心に不動産の売り傾向が強まり、その結果不動産価格が下落する可能性が考えられます。

3.長期譲渡所得が売却傾向に拍車をかける

3つめの要因は、一言で言うと「税金」の問題です。
不動産を売買して生じた利益、つまり譲渡所得については、いわゆる「譲渡所得税」が課税されます。

譲渡所得税については、不動産を保有していた期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類があり、それぞれ次のように税率が異なります。

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年以下の場合:短期譲渡所得

所得税:30%
復興特別所得税:2.1%
住民税:9%

譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える場合:長期譲渡所得

所得税:15%
復興特別所得税:2.1%
住民税:5%

このように、不動産の所有期間が1月1日の時点で5年を超えているかどうかによって、所得税と住民税の税率はおよそ2倍も違うのです。

仮に不動産を売却して4,000万円の譲渡所得が発生したとした場合、

短期譲渡所得:所得税1,200万円・住民税360万円

長期譲渡所得:所得税600万円・住民税200万円

このように課税される税金が大幅に変わってくるのです。
では、なぜ譲渡所得の問題が2019年問題と関係するのでしょうか。

東京オリンピック開催が決定したのが、2013年9月に開かれたIOC総会の時です。そこから、外国人投資家が東京の不動産に対して、本格的に投資を始めました。

2013年9月に購入した不動産が長期譲渡所得扱いになるのは、1月1日時点で5年を超える「2019年」からなのです。
ちなみに、譲渡所得税については、日本国外に居住している外国人投資家についても課税されます(※譲渡対価の10%が源泉徴収、その後確定申告が必要)。

現時点ですでに東京の不動産価格はピークと言える状態のため、長期保有を前提としている日本人投資家は別として、オリンピック特需で儲けて売り抜けようと考えているような外国人投資家の中には、この譲渡所得の関係で、売りたくても2019年まで我慢している可能性があるのです。
2013年9月に購入した場合は、2019年を超えれば譲渡所得税が半分になるため、そこから一気に売却が進んで不動産価格変動が生じる可能性が考えられます。

不動産投資家は不動産を買うべきか、売るべきか

東京都政策企画局:「2060年までの東京の人口推計」より

さて、ここからが本題です。
このように2019年には不動産価格が下落する可能性がある要因が3つも重なるため、それによって不動産市場が大きな転換期を迎えると予想されます。

ただ、日本人投資家は決して慌てる必要はありません。

なぜなら、不動産価格の下落があったとしても、それは外国人投資家の動きによる「一時的」なものに留まる可能性が考えられるからです。

特に東京圏に関しては、東京都政策企画局が作成した「2060年までの東京の人口推計」というデータによれば、不動産投資のターゲットとなる東京の単身者世帯は、今後も2035年をめどにさらに増加するとのことです。

その後緩やかに減少するようですが、それでも2055年の時点でも2015年とほぼ同じ単身者世帯が存在すると予想されています。日本全体としては世帯数が減少傾向であるものの、東京圏に関して言えばその影響はほとんどなく、むしろプラスととらえてもよい状況です。

ですから、たとえ「2019年問題」による心理的な影響で不動産価格が変動したとしても、早い段階でもとに戻る可能性が高いのです。
このような状況の中、不動産投資家が取るべき対策は、「売り」ではなく「買い」です。

おわりに:東京圏の物件は「買い」である

不動産価格の下落と聞くと、無意識のうちにネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、これは大きな間違いです。
不動産価格が下がるということは、「安く仕入れるチャンス」と捉えるのが、成功する不動産投資家のマインドなのです。

世帯数の減少傾向は地方が中心で「東京圏」では当面の間、影響はない

東京オリンピックによる価格変動は「限定的」で「一時的」なものに留まる可能性が高い

以上の2つの理由から、できる限り「東京圏」の物件(なかでもできる限り都心部の物件)を購入することが得策であると考えられます。

都心部の物件は、東京オリンピックに関わらず安定した需要があるため、「2019年問題」を利用して安く仕入れることができるとすれば、将来的に大きな利益を出せる可能性があるでしょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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