不動産投資コラム

賃貸併用住宅VSワンルーム投資 比較と注意点

2018/12/12
行政書士棚田 健大郎
賃貸併用住宅VSワンルーム投資 比較と注意点

さて、前編では賃貸併用住宅の特徴やメリット、デメリットについて触れてきました。

前編はこちら

自宅と賃貸物件を同時に手に入れる…賃貸併用住宅

後編では、実際に賃貸併用住宅で賃貸経営する際の注意点や、通常のワンルーム投資と比べた場合の収支の違いについて解説していきたいと思います。

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1.賃貸部分の管理はどうすべき?

1棟もののアパートやマンションについては、賃貸管理をプロである不動産会社に委託するケースが多いですが、賃貸併用住宅の場合はどうなのでしょうか。

近いからこそ管理会社に委託すべき

賃貸併用住宅の場合、自分自身が同じ建物内に住んでいることから、管理会社に管理を委託せずに自主管理を想定される方が多くいます。

ですが、よほど経験のある方は別として、入居者募集から入居者対応までを大家自身がすべて行うことは、決して簡単なことではありません。24時間対応ができるような、専門の業者などのパイプがある管理会社を利用することをおすすめいたします。
入居者対応が遅れると入居者の満足度が下がり、更新率の低下や退去率が上がるなどといった収入の損失につながります

また、家賃督促についても隣に住んでいると、つい対応が甘くなってしまったり、強く言いにくい状況になることも考えられます。

すぐ近くに住んでいるからこそ、管理会社を上手に活用して、賃借人とある程度の距離を置きながら管理サービスを提供していくことが、賃貸併用住宅をストレスなく円滑に経営していくポイントです。

できることは自分でやる

先ほどのような、賃借人と直接折衝することが多い賃貸管理面については、管理会社に委託することをおすすめしますが、それ以外の簡単なことについては、できる限り自分自身で対応して経費を抑えた方がよいでしょう。

特に、建物共用部分(共用廊下、エントランスなど)の日常清掃などについては、業者に依頼するのではなく、自分の家の庭を掃除する感覚で対応することで、余分な経費を削減することができます。

2.ワンルームマンション投資と賃貸併用住宅、どっちが効率的?

賃貸併用とワンルームマンション投資
実際に、マイホーム購入と不動産投資の両方を実現しようとした場合、賃貸併用住宅を活用するかどうかによって、収支にどのような違いが出るのでしょうか。

ここでは、自己居住部分と賃貸部分を同じ価格に設定した場合に、どのような違いが出るのか、実際に比較してみたいと思います。

マイホーム+ワンルームマンション投資の場合

マイホームの価格:4,000万円 
住宅ローン金利:0.695% 35年ローン
ワンルームマンション投資:2,000万円 ×2戸=4,000万円
不動産投資ローン 2.5% 35年ローン

上記条件で、元利均等方式でフルローンを組んだ場合の毎月の返済額は以下の通りです。

マイホームの毎月の返済額:107,318円
ワンルームマンション投資の毎月の返済額:142,998円

仮に、家賃収入が毎月80,000円だと仮定すると、単純計算で毎月のローン返済負担は以下の通りです。

160,000円−107,318円−142,998円=-90,316円

さらに、ワンルームマンション投資の場合、マンションの管理費や修繕積立金を毎月支払わなければならないため、さらに2~3万円程度の出費が考えられます。

賃貸併用住宅の場合

では、同じ価格条件のもと賃貸併用住宅を活用した場合、毎月の収支はどのように変わってくるのでしょうか。

賃貸併用住宅:8,000万円 
住宅ローン金利:0.695% 35年ローン

※フラット35を使う場合は、自宅部分にしか住宅ローン金利が使えないため注意。

先ほどと同じく、元利均等方式でフルローンを組んだ場合の毎月の返済額は以下の通りです。

賃貸併用住宅の毎月の返済額:214,636円

同じく、家賃収入が80,000円と仮定した場合、毎月のローン返済負担は次の通りです。

160,000円−214,636円=-54,636円

この時点で、すでにワンルームマンション投資との組み合わせに比べ、金利を低く抑えられるため、返済額も低くなります。
さらに、ワンルームマンション投資のように「管理費」や「修繕積立金」が、仮に同じだけかかったとしても賃貸併用住宅の方が、キャッシュフローの面から比較しても、より余裕が持てると言えるでしょう。

このように、賃貸併用住宅を活用すれば、マイホームと不動産投資を別々に行うよりも、合理的かつ効率的であるといえます。

3.賃貸併用住宅は「立地」に注意

賃貸併用住宅・立地
マイホームを購入する際については、自分や家族の希望に合わせて立地を選定していくことになりますが、賃貸併用住宅を選択肢に入れる場合については、ちょっと変わってきます。

賃貸併用住宅は、あくまで賃貸部分から安定した家賃収入を得られることを前提にローンを組むため、周辺地域の「賃貸需要」や「家賃相場」にも気を配って立地を選定する必要があるのです。

例えば、家族の間では駅から遠くても、子供の学校や病院などから近ければ問題ないと思っていても、一般的な賃貸需要からしたら、そのような立地では入居者が決まりにくく、家賃設定が低くなってしまう恐れが出てきます。

そのため、賃貸併用住宅を検討する場合については、自分たちの希望と合わせて「賃貸需要」や周辺の「家賃相場」も必ず加味して立地を選定しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
賃貸併用住宅は、マイホームと不動産投資を1度に実現できるという非常に大きなメリットがあります。

ただし、マイホームの一部を他人に賃貸して共に暮らすことになるため、音や振動に神経質な人や、アパート暮らしなど賃貸物件を借りた経験のない人は、慎重に検討したほうがよいでしょう。

不動産投資の場合は、自分1人で決断することもあるかと思いますが、賃貸併用住宅はあくまでマイホーム部分がメインとなるため、家族とも今回ご紹介したメリット、デメリットをよく話し合ってから決めることがとても重要です。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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