不動産投資コラム

【民泊】マンションでの旅館業許可取得のポイント

行政書士石井くるみ
【民泊】マンションでの旅館業許可取得のポイント

前回 に続き、旅館業許可取得の実務について解説します。

かかわる法規制は、旅館業、建築基準法、消防法の3つの法律で前回の戸建住宅とも共通していますが、今回は特にマンションでの旅館業許可取得のポイントをお伝えしていきます。

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(1)旅館業法

アパートやマンションなどの共同住宅を宿泊施設とするには、旅館業法上の「旅館・ホテル営業」での申請を行います

旅館・ホテル営業では、玄関帳場の設置が義務付けられているため、受付がある管理人室が設けられている共同住宅では管理人室を、管理人室がない共同住宅では居室の1室を玄関帳場として利用するのが一般的です。

2018年6月の旅館業法施行令の改正により、厚生労働省令で定める基準を満たす設備(ビデオカメラによる顔認証による本人確認機能等のICT設備等)が、玄関帳場等に代替する機能を有する設備として認められるようになりました

加えて、緊急時に迅速(概ね10分以内)に駆けつける体制を確保しましょう。

ただし、条例により建物に旅館業施設とほかの用途(住宅)が混在する場合、動線の区画が求められるなど、自治体により細かいルールが設けられている可能性があるので、建物全体の使用状況も併せて管轄の保健所に相談しましょう。

(2)建築基準法

共同住宅において旅館業法の許可を得る場合、まず確認すべき項目は容積率です。

共同住宅には共用の廊下や階段に対する容積率の緩和措置が適用されますが、共同住宅をホテル等に用途変更すると、当該容積率の緩和措置を受けられなくなります

特に、都市部では土地の有効活用のため容積率限界で建築されている共同住宅が多く、容積率の制約によりホテル等に用途変更できない事例が見られます。

しかし、共同住宅とホテル等には共通して適用される建築ルールも多いため、容積率の問題さえクリアできれば、共同住宅からホテル等への用途変更は比較的容易に行うことができます。

(3)消防法(共同住宅の全部を宿泊施設化する場合)

消防法令上、共同住宅は消防法施行令・別表第一5項ロの防火対象物として、一定の消防基準への適合が要求されています

しかし、共同住宅の全部で旅館・ホテル営業の許可を受けると、消防法施行令・別表第一5項イの防火対象物となり、5項ロよりもさらに厳しい消防基準が適用されます。

既存の共同住宅における旅館業申請の実務上、特に注意を要するのは、自動火災報知設備が設置されていない延べ面積300㎡以上の共同住宅と、11階建以上の共同住宅の2つです。

延べ面積が500㎡未満の共同住宅であれば、申請部分を10%以下とすることで自動火災報知設備の全部設置は免除されますが、申請できる範囲は大きく制限されてしまいます。

また、11階以上の共同住宅の10%以上又は300㎡以上の部分を宿泊施設とする場合は、建物全体にスプリンクラー設備の設置が必要になります(平成30年6月の消防法令の改正で一定の要件を満たす場合は緩和規定あり)。

さらに、共同住宅を旅館業施設として使用することにより、防火管理体制についても影響があります。
具体的には防火管理者の選任、消防計画の作成、消防訓練の実施頻度等、建物における防火管理関係の基準が厳しくなります。

共同住宅の一部で特定認定を受けた場合の防火管理関係の影響
防火管理関係
大阪府健康医療部環境衛生課「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関するガイドライン」

収容定員は、宿泊施設だけではなく他の部屋の人数も合計して計算するため、ほかの部屋の使用状況も併せて確認することが必要です。

また、消防法令及び各自治体の条例・規則には、より詳細な消防用設備の設置基準が定められているため、旅館業の申請にあたっては、消防署との事前協議をしっかり行いましょう

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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