不動産投資コラム

コロナウイルスの影響が賃貸経営にも!対処法とは

行政書士棚田 健大郎
コロナウイルスの影響が賃貸経営にも!対処法とは

中国の武漢に端を発したコロナウイルス問題は、わずか1ヵ月足らずの間に世界規模の国際問題にまで発展しました。

もちろん日本も例外ではなく、国内感染者が2020年3月26日時点で1,300人を超え、マスク不足、イベント自粛、学校一斉休校、株価暴落、買いだめ、さらには東京オリンピック延期が決まりました。

そんななか、コロナウイルスの影響が賃貸経営にも出始めています。
今回は、すでに確認されている影響や今後予想されるトラブルについて緊急でまとめてみました。

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賃貸経営はコロナウイルスに強い

コロナウイルスの影響について触れる前にまずお伝えしておきたいことは、このような非常事態においても、賃貸経営の受けるダメージはほかの業種や投資と比較すると格段に低いということです。

例えば株式投資についてはすでにご存じの通り、長い期間かけて積み重ねてきた日経平均が2万円をあっさり割り込みました
ニューヨーク株式市場ダウ平均株価についても2万ドルを下回ってしまい、2017年1月のトランプ大統領就任時以下の株価に逆戻りしています。

経済においてはイベント関連、飲食関連、観光関連を中心に自粛ムードによる大幅な売り上げ減が発生しており、事業の存亡が危ぶまれている企業も少なくありません。

そんななか賃貸経営はというと、株価につられて不動産価格が暴落することはなくコロナウイルス前後で目立った変化はありません。

今後東京オリンピック開催の動向次第で動く可能性はありますが、少なくとも現時点ではコロナウイルスがもたらすマイナスの影響は少ないといえるでしょう。

コロナウイルスが賃貸経営にもたらす影響

このように賃貸経営自体のコロナウイルスによるダメージは現時点では少ないといえますが、それでもまったく影響がないわけではありません。
ここからは管理会社の方から聞いた話をもとに、現時点で起こっている影響について解説したいと思います。

設備交換が間に合わない

室内設備であるエアコンや給湯器などの設備機器について故障が発生した場合、貸主は速やかに交換や修理などの手配をとらなければなりません。

ところが、長引くコロナウイルスの影響で発注を受ける業者側の在庫が不足気味になっていて、修理や交換までに時間がかかっていることがあるようなのです。

コロナによる設備納期遅れ

設備機器のなかには部品を中国で生産しているケースも多く、コロナウイルスの影響で工場が稼働できず日本への納品がストップしているものもあるとのこと。

小規模な下請け業者の場合、自社でできるだけ在庫を抱えないよう工事を受注してから発注しているケースが多いため、在庫がなくなると工事が受けられません。

タイミングが悪いことに、ちょうど3月前後は引越しシーズンで入退去が発生して設備を交換することが多く、本来であれば新しく交換したいところが間に合わないまま引き渡しになっているケースが発生しています。

間に合わない場合の対処法

どうしても修理や交換が遅れてしまう場合は、事情を賃借人(入居者)に説明したうえで、場合によっては一時的な賃料減額なども視野に入れて検討する必要が出てきます。

なお、設備故障が発生した場合における減額割合としては、日本賃貸住宅管理協会から次のような目安が示されています。

賃料減額
日本賃貸住宅管理協会

物件が完成しない

アパートやマンションを新築している方のなかには、建設自体がストップしてしまっている人も出てきているようです。
住宅設備の一部には、建材を中国で生産しているものがあり、工場が止まったことで納品の目途が立っていないのです。

通常、新築物件の完了検査では基本的にすべての設備が整っていなければ検査済証は発行されないため、当然入居もできないという状況に陥ります。

そこで国交省はコロナウイルスによる影響に鑑みて、完了検査の際に柔軟な対応をするよう通知を出しました。

新型ウイルスの影響でトイレ、システムキッチン、ユニットバス、ドアなどの設備や建材の供給が遅れていることから、今後これらが未設置のまま完了検査の申請がなされた場合、次のことに留意することとしています。

  • 軽微な変更に該当する場合は、完了検査申請書の第三面に変更内容が記載されていることを確認の上、完了検査を速やかに実施する
  • 軽微な変更に該当しない場合は、計画変更が必要になるため申請者に対して時間的余裕をもって申請するよう周知する
  • 住宅の建築工事の場合、確認済証の交付を受けた内容から一部の設備等がないことを以て「住宅」として工事が完了していないといった扱いをせず柔軟に対応する

レオパレス問題で完了検査に対する意識が高まっていたところですが、コロナウイルスの影響を受けて、一時的に柔軟な対応をするよう国交省が通知を出したのです。

内定取り消しによる入居のキャンセルなど

このほかにも今後は内定取り消しによる入居の取りやめなどのトラブルが出てくる可能性も予想されていますが、2020年3月18日時点で厚労省が把握している人数としては13社21人とまだそこまでの影響は確認されていません。

ただ、最近の自粛要請を鑑みると今後増えてくる可能性は十分考えられるでしょう。

今後内定取り消し者が増加した場合、

  • 内定取り消しによる入居の辞退
  • 内定を前提に入居審査を通過していた人の取り扱い

このあたりが争点になりそうです。

基本的に引き渡しが終わっていなければ、白紙にして再募集することになります
問題は内定取り消しでも住みたいとなった場合については、本人の就職先や家賃を支払うあてなどについて再度確認する必要があるでしょう。

まとめ

コロナウイルスによって賃貸経営が影響を受けるケースは今のところ非常に限定的ですが、建物を新築している人については完成が遅れるなどの深刻な問題も発生しているようです。

ただ、少なくとも株式のようにすぐに手放して損切しないとならないような状況ではなく、今のところ相場自体は安定しているとみてよいでしょう。

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棚田 健大郎

行政書士

棚田 健大郎

行政書士

大手人材派遣会社、不動産関連上場会社でのトップセールスマン・管理職を経て独立。棚田行政書士リーガル法務事務所を設立。現在に至る。

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