不動産鑑定士が解説する不動産投資の基礎知識
不動産鑑定士として、不動産投資をすでに行っている方、これから不動産投資を始めたいとお考えの方を対象に、鑑定士の目線から不動産の見分け方などを2回に分けてお話させていただきます。
まず第1回目は、不動産鑑定士という仕事についてご紹介させていただきます。
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そもそも不動産鑑定士とは?
この記事をお読みになられている多くの方が、「そもそも不動産鑑定士って何?」と思っておられるのではないでしょうか?2018年9月現在、日本国内にいる不動産鑑定士は1万人に満たない人数しか存在していません。なので、不動産鑑定士を知らなくても全然珍しくありません、むしろ知っている方のほうがレアなのかもしれませんね。
では、そんな不動産鑑定士の仕事とはどのようなものでしょうか?
一言で言えば、不動産鑑定士の仕事とは、不動産の適正な価格を求めることです。
でもどうして不動産の適正な価格を求める仕事が必要なのでしょうか。
それは不動産の適正な価格は一般の人には非常に把握が困難だからです。
例えば、缶ジュースの定価は?と聞かれれば、一部の商品を除き、定価130円と迷わずに回答できると思いますが、皆さんがお住まいのご自宅の定価はいくら?と聞かれると、答えに困ってしまうのではないかと思います。
これは不動産に関する情報が少なく、一般の人には不動産の適正な価格を把握することは困難であることが原因です。そういった情報のミスマッチを解消するため、不動産鑑定士が不動産の適正な価格を求めるという必要性が生じてくるのです。
皆さんにとって身近なものとしては、「地価公示」や「都道府県地価調査」というものがあります。
新聞やテレビのニュース番組で不動産の価格が上昇した、住宅地は下落した等の報道を一度は目にしたり、聞いたりしたことがあると思います。
これは年に2回不動産鑑定士が行う、全国の決められた場所での土地の評価を反映して報道されています。どなたでもインターネットで検索すれば見ることができますので、「地価公示」と検索してみてください。
皆さんのお住まいのエリアの近隣の土地価格を調べることができます。
関連記事:2018年都道府県地価調査:全国基準地価が27年ぶりの上昇
不動産の価格の求め方
前述したとおり、不動産鑑定士は不動産の適正な価格を求めることが主な仕事ですが、どうやって不動産の価格を求めるのでしょうか。
不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行う場合には基本的に、
1.原価法、2.取引事例比較法、3.収益還元法
という3つの手法を併用して、価格を求めることが原則です。
原価法:不動産の費用性に着目した手法です。
したがってまず、対象不動産を新たに作ってみたら、いくらぐらいの費用がかかるのか(再調達原価)を求めます。次にその不動産が古くなっていること等による価値の減少分(減価額)を再調達減価から控除します。残った価格が対象不動産の現在の価格ですね、というのが原価法のイメージです。
取引事例比較法:不動産の市場性に着目した手法です。
対象不動産と類似の不動産の実際の取引価格から対象不動産の価格にアプローチする考え方です。簡単に言えば、「隣の土地が〇〇〇〇円で売れたのだから、うちの土地は△△△△円くらいかな」というイメージです。
収益還元法:不動産投資の視点から、不動産の収益性に着目した手法です。
投資用不動産の評価ではこの手法の考え方がメインになるケースが多くなります。
具体的な求め方はまず対象不動産の純収益(賃料収入等の収入から、修繕費・税金等の不動産の維持に必要な経費を控除したもの)を求めます。次にこの純収益を還元利回り(不動産の収益率)で還元する(割る)ことにより求められます。
上記3つの手法により求めた価格には開差が生ずることが多々あるため、最終的にそれぞれの手法によって求めた価格の特性等を踏まえた上で、最終的な不動産の価格を決定するといった流れになります。
不動産鑑定士の資格について
最後に不動産鑑定士試験についてお話させていただきます。
試験方式 | 短答式試験(五肢択一)、合格者のみ論文式試験 |
---|---|
試験日 | 短答式試験:5月、論文式試験:8月 |
合格率 | 短答式試験:30%、論文式試験:15% |
学習に必要な期間 ※講義などを除く |
約1,500~2,000時間 |
不動産鑑定士試験は2段階選抜方式の試験です。まず5月の短答式試験(五肢択一)を受験し、これに合格した方が8月の論文式試験を受験することができます。
なお、試験科目は短答式試験が鑑定理論及び行政法規、論文式試験が鑑定理論・民法・経済学及び会計学です。
合格率は短答式試験が30%程度、論文式試験が15%程度となっております。ここ数年合格率は上昇傾向にあるので、不動産鑑定士を目指すには良いかもしれません。
合格までの学習時間の目安は、講義等を除く自習時間で概ね1,500時間から2,000時間程度ではないでしょうか。
不動産系最高峰の資格と呼ばれているだけに、それ相応の努力は必要になってきますが、出題傾向として基礎的な知識を問う問題が増えていることから、比較的努力が報われやすい試験ではあります。
なお、私が講師を務めているTACでは無料体験講義もやっておりますので、興味のある方は是非一度見学に来て下さい。
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