ホームインスペクターが指摘する危ない建築収支計画
個人で収益物件を建てる際に取得する建物の建築見積。
しかし見積もりに含まれていない項目があると、想定していた収支が期待できなくなってしまいます。
ホームインスペクターが建築収支計画について、実際にあった事例をもとに注意点をお伝えします。
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最初の建築見積から金額が跳ね上がる事例3つ
1.古屋付きの土地を購入する際、構造種別をチェックしましょう
収益物件の重要ポイントの1つとしては、建物の立地条件があります。
人気の沿線、駅からの距離、周辺環境などですね。立地条件が良く、収益性が期待できる土地が見つかった場合、購入検討を始めると思いますが、その土地が更地であるケースばかりではありません。
古屋付き土地の場合、注意点としては古屋の構造種別を確認することが大切です。
建築物は、1:木造 2:鉄骨造 3:鉄筋コンクリート造が一般的ですが、数字が上がるほど解体費用が上がっていきます。
特に、鉄筋コンクリート造は、建築物自体に重量がありますので基礎下に杭が施工されているのが一般的です。杭の種類がコンクリート杭の場合、杭の解体費用がかなりの金額になりますので見積もりをきちんととった計画であるかが重要です。
写真の例では既存古屋がRC(鉄筋コンクリート造)でした。当初の見積もりよりも1mほど基礎が深く入っていた為、追加の解体費用が700万ほどかかった現場です。
こういったケースもありますので、見えない部分の見積もりは注意が必要になります。
2.道路状況によっては工事費用が上がります
土地を購入する際に、現地に行かないで契約することはないと思います。
その際に確認しておかないと、後で工事費用が跳ね上がることがあります。
もっとも重要なのは道路ですので、まず道路の幅を確認することが重要です。
道路の幅によって侵入できる工事用車両が変わってきます。4t車、7t車、10t車…と大きさはさまざまですが、侵入できる車両の大きさによって金額が変わってきます。
例えば、基礎工事の残土搬出(基礎工事の際にでる土を捨てる)も、運べる土量は車両の大きさに反映されますから、大きい車のほうが台数は少なくて済む=かかる費用が安くなります。
3.仮設工事費用はきちんとチェックしなければいけません
仮設工事の費用には当然ながら、仮設工事計画が必要となります。
仮設工事計画の前に、建築用語「仮設」の説明をしなくてはいけませんね。
「仮設」とは建物完成時には不要になるもの(例えば足場など)です。
つまり仮設工事計画とは、実際の敷地条件にあてはめ、足場の計画などを立案することになります。その計画の精度は、仮設工事見積もりとリンクしていますので、計画をないがしろにしては正しい見積もりが出ないということが大前提ですね。
この中で、特に計画立案による差額発生が出やすい項目は、「山留費用」です。
前段の敷地と道路に高低差があった場合には、敷地から土がこぼれないように土をせき止める山留と言ったものが計画されます。
基礎工事の際にも、土を深く掘るので土をせき止める工程が必要です。このような仮設工事の計上漏れや、少なく見積もっていた場合には、大幅に金額がアップします。
写真は敷地裏側が高いので、山留を実施している様子です。
高低差・山留の全長・地盤によっての山留親杭の深さなどなど、検討が甘いと山留工事の費用は一気に跳ね上がることもあります。
見積金額の大きなギャップを埋めるのは工務店
設計事務所がいうVE案ってなに?
実は、建築の工事費用を正確に把握している設計者は数多くいないのが現状です。
特に、これまで本記事で書いてきたような「解体工事」や「仮設工事」費用などは全く分からないのが事実です。
ざっくりとした坪単価●●円、だから総額▲▲円・・というどんぶり勘定な建築計画を進めていくと、当初の予算を超えてしまうことが多いのです。
予算オーバーの時に設計者から、決まってでるセリフは「VE案を出させます」というものです。
VE案とは、バリューエンジニアリングといい、「設計や工法を見直し機能を低下させることなく代替案を検討する」というのが本当の意味ですが、実際には工務店に強引な値引き要求をすることとなります。
値引きを要求された工務店は事業規模が大きい案件であれば値引きを受け入れ受注を考える方向になりますが、結果は推して知るべし。無理な値引きは品質を下げる結果に直結します。
安すぎる見積もり金額で判断をしないために
相見積もりの重要性
見積もり金額の相場は一般の方にはわからないものです。
本来であれば、建築の知識を持っている第三者で、かつプロジェクトと利害関係のない専門家に相談をするのが間違いありません。
ただし、調査や検査を専門に業務をしていない設計事務所などに相談した場合、プランや収支にダメ出しをし、自分の仕事として振替受注する輩もいますので注意が必要です。
大前提として、「1社に企画立案させる」のは心配です。複数社に計画の打診をし、相見積もりを取ることは必須です。
A社の計画に入っていてB社にはないもの。B社には計上されているが、A社の見積もりには見当たらないもの。そのようなものをピックアップし一覧表にすることがわかりやすいでしょう。
釈迦に説法ですが、収益物件の建築オーナーは事業主です。
ぱっと見の収支ばかりに目を向けず、1つずつ不明点を確認していく地道な作業が予期せぬ金額アップなどの事態を避けることになります。
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