不動産を購入するときに、買主が源泉徴収しなければならない場合とは?
中古マンションの購入を検討しています。
売主が外国人の場合、買主である私が源泉徴収をしなければならないケースがあると聞きました。
どのような場合に源泉徴収が必要になるのでしょうか?
売主が非居住者・外国法人の場合は買主に源泉徴収義務あり。投資用は1億円以下でも例外なく対象です。
1.源泉徴収が必要な場合
売主が「非居住者」(海外に生活の拠点がある個人)または「外国法人」に該当する場合、買主は売買代金の支払い時に、原則として支払金額の10.21%を源泉徴収し、翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。
この制度は、非居住者が不動産の売却代金を国外に持ち出し、確定申告をしないまま出国してしまうリスクに対応するため、平成2年に導入されたものです。
買主が「徴収義務者」として、売主に代わって税を前納する仕組みになっています。
ただし、次の要件をすべて満たす場合に限り、源泉徴収は不要になります。
(1)売買金額が1億円以下であること
(2)買主が個人であること
(3)買主が自己または親族の居住用として購入すること
つまり、大家さんが投資用・賃貸用として不動産を購入する場合は、たとえ売買金額が1億円以下であっても、売主が非居住者であれば源泉徴収義務が生じます。
ここが大家さんにとって特に注意が必要なポイントです。
2.源泉徴収を忘れた場合
源泉徴収せずに売買代金の全額を売主に支払ってしまった場合でも、買主の徴収義務は消えません。
税務署から納税告知処分を受け、本税に加えて不納付加算税(原則10%)が課されることになります。
売主に支払った代金を取り戻すのは現実的に非常に困難であるため、買主が自腹で納付せざるを得ないケースがほとんどです。
最近の裁決事例では、売買契約書の売主欄が「内国法人」でも源泉徴収義務が認められたケースがありました。
《国税不服審判所の非公開裁決(令和6年11月21日付)》
事案の概要:
買主(請求人)が国内のマンションを購入した際、売買契約書の売主欄には国内法人の記名押印がありました。
そこで買主は「売主は内国法人だから源泉徴収義務はない」と主張しました。
しかし実際には、マンションの登記名義人は台湾在住の非居住者(外国人個人)であり、その国内法人は非居住者から売買に関する一切の代理権を委任されていたに過ぎませんでした。
審判所の判断のポイント:
審判所は、民法の代理に関する規定(第99条・第100条)に基づき、次の2点を検討しました。
(1)代理権の有無:委任状の存在や関係者の申述から、国内法人は非居住者から代理権を授与されていたと認定。
(2)買主の認識:契約締結時に、仲介業者から委任状を示され、「売主は台湾在住の非居住者であり、来日できないため法人が代わりに手続を行う」旨の説明を再三受けていたこと、登記簿で所有者が非居住者であることを確認していたことなどから、買主は法人が非居住者のために契約を締結していることを知っていたと認定。
その結果、売買契約書の売主欄に法人名が書かれていたとしても、契約の効力は真の所有者である非居住者に帰属するため、買主には源泉徴収義務があると判断されました。
3.まとめ
(1)売主の居住ステータスを必ず確認する
売買契約前に、売主が居住者か非居住者かを仲介業者に確認しましょう。
登記簿の所有者名義と売買契約書の売主名が異なる場合は特に要注意です。
(2)「法人が売主」でも安心しない
上記裁決のように、法人が非居住者の代理人に過ぎない場合は、真の売主は非居住者です。
契約の実態を見極める必要があります。
(3)投資用物件は例外なし
居住用の例外規定(1億円以下かつ自己居住用)は、賃貸用・投資用物件には適用されません。
大家さんが物件を買う場合は、金額にかかわらず源泉徴収の要否を検討してください。
(4)源泉徴収額の計算と手続き
源泉徴収税率は10.21%です。売買代金からこの金額を差し引いて売主に支払い、翌月10日までに所轄税務署へ納付します。
固定資産税の精算金も譲渡対価に含まれる点にご注意ください。
2026/08/07
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士