不動産投資コラム

REITから2021年の宿泊事業を占う(前編)

行政書士石井くるみ
REITから2021年の宿泊事業を占う(前編)

新年明けましておめでとうございます。
民泊・旅館業など宿泊事業に携わるみなさまにとって、2021年が明るく希望に満ちた1年となりますようにお祈り申し上げます。

幕を閉じた2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、予定していた東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、国内外の旅行ニーズは大きく落ち込み、観光産業は大きな打撃を受けました
ソーシャルディスタンスの確保が求められ、在宅勤務やリモートワークが広がり、医療従事者やリモートワークの場として客室の提供を試みるホテルも現れ、また、経済制策として政府によるGOTOトラベル事業が始まり一定の効果を上げたものの、年末にかけての新型コロナウイルスの感染再拡大の影響で急遽中止を余儀なくされるなど、観光産業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

激動の中にある2021年の宿泊事業を占うため、まずは2020年のREIT(リート)市場を振り返ってみましょう。
「REIT市場動向が、宿泊事業とどのようなつながりがあるのだろう?」と疑問に感じる読者もいらっしゃるかもしれません。
しかし、REIT市場動向からは、ホテルを含む不動産全般の経営戦略を練るための有益なヒントがたくさん隠されているのです。

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【REITの仕組み】

そもそもREITとは、どういうものか、まず、REITの仕組みを説明しましょう。
REITとは、「投資法人」という不動産投資を専業で行う法人が、投資者から集めた資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃貸料収入や不動産の売買益を原資として投資者に配当する金融商品(不動産小口化商品)で、一般的に「不動産投資信託」とよばれています。
投資者は、REITを通じて間接的に様々な不動産のオーナーになり、不動産のプロ(投資法人の運用業務の委託先であるアセットマネージャー)による運用の成果を享受することができます。

東京証券取引所(東証)に上場されているREITは「J-REIT」と呼ばれます。
J-REITの投資持分(投資口)は上場株式と同様にマーケット(東証)で売買されるため、上場株式と同様に高い流動性を備えています。
なお、投資口が東証に上場していない「私募REIT」と呼ばれるREITも存在しますが、私募REITは銀行や保険会社といった一部のプロ投資家しか投資できないものであるため、詳細な説明は割愛します。

【J-REITの類型…アセットクラス別の分類】

2020年12月現在、東証には62銘柄のJ-REITが上場されていますが、各銘柄は、その投資対象とする不動産の種別(アセットクラス)により、1つのアセットクラスにのみ投資を行う「単一用途特化型」と、2つ以上のアセットクラスに投資を行う「複数用途型」の2つに大別されます。
「単一用途特化型」は、特化するアセットクラス別に更に次の6つに細分化されます。

単一用途特化型REIT
オフィスビル特化型REIT(代表例:日本ビルファンド投資法人)
商業施設特化型REIT(代表例:日本リテールファンド投資法人)
住居特化型REIT(代表例:アドバンス・レジデンス投資法人)
ホテル特化型REIT(代表例:ジャパン・ホテル・リート投資法人)
物流施設特化型REIT(代表例:日本プロロジスリート投資法人)
ヘルスケア施設特化型REIT(代表例:ヘルスケア&メディカル投資法人)
複数用途型REIT(代表例:野村不動産マスターファンド投資法人)

次回以降の連載では、ホテル投資に特化したホテル特化型REITを詳しく見ながら、2020年の宿泊事業を振り返っていきましょう。

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石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

石井 くるみ

行政書士・宅地建物取引士

日本橋くるみ行政書士事務所代表。東京都行政書士会中央支部理事。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。著書「民泊のすべて」(大成出版社、2017年度日本不動産学会著作賞(実務部門)受賞)

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