不動産投資は個人所有と法人所有のどちらが有利か
はじめまして。
当事務所は、不動産オーナー様に特化した事務所です。顧問先のほとんどが地主系といわれる大家さんまたは投資家である大家さんです。通常は、こうした顧問先様の不動産賃貸に関する税務・税務相談業務を中心に行っておりますが、地主である大家さんの相続税対策、又は、投資家である大家さんのさらなる資産形成を目的として、不動産の購入に関する相談やアドバイスも行っています。
さて、不動産投資は、不動産賃貸「事業」であるため、不動産投資を成功させるためには、適切な収益用不動産の選択・購入はもとより、購入後の賃貸経営における不動産知識・税務知識は欠かせないといえると思います。
私自身は税理士であり不動産鑑定士でもあるため、税務と不動産の専門家ではありますが、昨今、顧問先様にとってさらに役立てて頂けるアドバイスができないかと思い、自分の資産形成も兼ねて、自分自身も大家さんの立場となり、大家業を実践・体験することとしました。
現在は、全部で11棟・190室を所有しております。また、さらに木造アパート3階建、2棟・31室を建築中であり、今年の12月に竣工・引渡予定です。
こうした賃貸経営にあたって、実際に大家として賃借人の夜逃げや、家賃の滞納による立退き訴訟、空室対策、問題のある賃借人対策、犯人不明の共用部玄関ドアの破損、想定外の多額の修繕費の発生など等を体験し、大家業は世間一般では「不労所得」と言われてはおりますが、実際はそう甘くないことを、身をもって感じております。
このコラムでは、不動産投資をすでに行っている方、これから不動産投資を始めたいとお考えの方を対象に、不動産投資は不労所得ではなく苦労所得とならないよう、不動産・税務の専門家であり、大家でもある立場からの実体験もふまえ、不動産投資にとってのお役に立てるものをご提供できれば幸いです。
今回と次回は、よくご質問を頂く
「不動産投資は個人所有と法人所有のどちらが有利か」
を税金面で解説したいと思います。
読者の皆さまは、どのような目的で不動産投資をお考えでしょうか?
大半の方は、勤務先の給与以外の収入が欲しい、または、本業の事業以外に安定した収入源を確保したい、と考えていらっしゃるのではないでしょうか。そして、できれば1棟、2棟、3棟・・・と順調に棟数を増やし、不動産投資からの収入を安定させていきたい、とお考えではないでしょうか。
不動産賃貸収入を増やすことを目的とする場合、注目すべき金額は、税引き前の手残りではなく、所得税等などの各種税金を支払った後のいわゆる税引き後の手取り額であると思います。不動産投資は、仮に同じ家賃収入、経費、返済条件であったとしても、個人所有で行う場合と法人所有で行う場合とでは、「税引き後」の手残り額が大きく異なる場合があります。また、不動産投資を行う多くの方は、税引き後の手残り額を最大化し、次の投資物件の頭金にしたいと思われていることと考えますので、よりその重要性が増すものと思います。
この問いかけに対し、結論から申しますと、不動産投資は個人所有で行っていく場合よりも法人所有の方が税引き後の手残りの額が大きく「有利」と考えることができます。それでは、なぜ、同じ収益物件で、同じ収入・経費を生じるにもかかわらず、また、仮に融資条件も同じとした場合に、個人所有にする場合と法人所有にする場合とで、税引き後の手取り額が異なるのでしょうか。それは、個人と法人の所得に対する税率構造の違いから生じてきます。
日本では、個人の所得に対する税金の課し方と法人の所得に対する税金の課し方が異なります。
まず、個人から申し上げますと、個人の所得税の税率構造は、「超過累進税率」といい、個人の所得が高くなればなるほど税率も高く上昇していきます。次の通りです。
個人の所得税等の税率構造
個人で物件を所有し、家賃収入としての所得金額が増えれば、給与所得との合算になり所得税率があがることで、手残り額が減ってしまうのです。
では、法人所有だと税率はどうなるのでしょうか?
次回は、個人所有と法人所有のそれぞれの具体例をもとに、詳しく解説いたします。
関連記事:個人所有と法人所有のそれぞれの具体例
関連記事:不動産投資で法人所有のメリット・デメリット
不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは
第1回:不動産投資は個人所有と法人所有のどちらが有利か
- 第2回:個人所有と法人所有のそれぞれの具体例
- 第3回:不動産投資で法人所有のメリット・デメリット