老後困らないために必要な資金と退職金の基礎知識
定年退職したときに受け取ることができる退職金。
老後の重要な生活資金ともなり得る退職金ですが、会社員なら必ず支給されるのでしょうか。
また、退職金が支給されたら、どんな使い道があるのでしょうか。
そこで今回は、老後を安定的に送るために必要な退職金の基礎知識と、老後に備えて準備すべきお金、退職金の使い道などについて全2回に分けて解説します。
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あなたは退職金もらえますか?
退職金は退職後の老後資金としてとても重要な意味合いがありますが、そもそも誰にでも支給されるものなのでしょうか。
退職金の支払い義務はない?
実は、労働基準法では雇用主である会社側に対して退職金の支払いを義務化していません。よって、退職金が支払われるかどうかについては、原則として会社の「就業規則」に従って判断されることとなります。
大手企業については、社内で退職金を積み立てているケースもありますが、中小企業の場合は独自の退職金制度ではなく、中小企業退職金共済制度(中退共)に加入して掛金を支出することで退職金を積み立てているケースもあります。
※小規模な会社や個人事業主についても、小規模企業共済制度を利用して退職金を積み立てることが可能です。
勤務先の規模に限らず、退職金制度を導入している会社は増えてきていますので、自分自身が退職した際に退職金が支給されるのか、この機会に就業規則で確認してみましょう。
退職金はいくらもらえるのか
支給される退職金の金額については、退職金規程に従って支払われるため、会社ごとに金額は異なります。
厚生労働省が調査した退職金給付の支給実態によると、平成29年1年間における勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に対して支給、または支給額が確定した退職金の平均給付額を見てみると、次のような結果が分かりました。
定年退職した場合の平均退職給付額
大卒・大学院卒の場合:1,983万円
高卒(管理・事務・技術職)の場合:1,618万円
高卒(現業職)の場合:1,159万円
また、会社都合や早期優遇制度を利用して退職した場合については、次のように退職金が増額される傾向にあるようです。
会社都合で退職した場合
大卒・大学院卒の場合:2,156万円
高卒(管理・事務・技術職)の場合:1,969万円
高卒(現業職)の場合:1,118万円
早期優遇で退職した場合
大卒・大学院卒の場合:2,326万円
高卒(管理・事務・技術職)の場合:2,094万円
高卒(現業職)の場合:1,459万円
このように退職金は毎月の給与やボーナスなどとは比較にならないくらいのまとまった金額が一度に支給されるため、その後の使い道、運用については、老後の生活も考えて慎重に検討する必要があります。
老後生活にはいくら必要?
退職金の金額だけ見ると、非常に高額な印象がありますが、果たして退職金だけで老後生活は成り立つのでしょうか。
総務省の調査データをもとに考えてみたいと思います。
老後の収入と支出はいくら?
老後生活の貴重な収入源となるのが、公的年金などの社会保障給付です。
総務省の家計調査報告における高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヵ月あたりの給付額は約19万円です。
対して、支出については家計調査によると約27万円であり、差し引き毎月8万円が不足することがわかります。よって、年間で約100万円が足りない計算になるのです。
仮に65歳で退職した場合、85歳までの20年間で2,000万円、90歳までで2,500万円が足りません。
ただ、高齢になると医療費は思った以上にかかるため、一般的には3,000万円くらいが老後資金として必要だといわれています。
そう考えると、先ほどの退職金を受け取ったとしても、そのままの金額では安定した老後資金としてはやや不足するといえるでしょう。
家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)Ⅱ世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)/総務省
まとめ
退職金は一度に高額な金額を手にすることができますが、老後資金を冷静に計算すると、退職金をそのまま貯蓄していても不足する可能性があることがお分かりいただけたでしょうか。
後編 では、退職金の使い道と、それぞれのメリット、デメリットについて見ていきたいと思います。
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