入居者に「謝礼金」を払いたい。経費にできる?
2年以上続けて住んでくれた入居者の方に、感謝の意味で謝礼金をお渡ししようと思っています。
この謝礼金は、経費として落とすことができるのでしょうか。
また、入居者へのキャッシュバックのようにも見えますが、法律上、何か問題はないでしょうか。
条件を明確にすれば必要経費に計上可能!「現金・全員支給」なら景品表示法もクリアできます。
1.必要経費になるか?
結論から言うと、必要経費にできます。
長く住み続けてもらうことは、裏を返せば「退去を防ぐ」ということです。
退去が出れば、空室期間の家賃損失に加え、原状回復費、次の入居者を見つけるための仲介手数料や広告料(AD)がかかります。
謝礼金 → 退去を防ぐ → 空室・原状回復・募集費の削減 → 家賃収入の維持という流れで、賃貸収入を守るための支出と説明できます。
必要経費とは、収入を得るために直接必要な費用や、その業務について生じた費用のことです。
長期入居の謝礼金は、この考え方にあてはめて経費にできるわけです。
勘定科目は「交際費」「広告宣伝費」や「販売促進費」あたりで処理します。
ただし「贈与」に見えないようにすることがポイントです。
単なる「お礼」「お気持ち」として渡してしまうと、見返りのない贈与(寄附金)と見られ、経費を否認されるおそれがあります。
避けるためには、「入居を続けてもらうためのインセンティブ」という業務上の目的をはっきりさせておくことです。
おすすめしたいのが、契約書・合意書での明確化です。
・支給条件(例:2年以上続けて入居した方)
・金額、支払時期、現金で支払うこと
・途中解約・家賃滞納・契約違反があった場合は不支給とすること
これらを、賃貸借契約書の特約や覚書として書面に残しておきます。
こうしておけば、税務調査で「目的」と「条件」を客観的に示すことができ、贈与ではなく業務上の支出だと説明できます。
また、金額も大切です。
社会通念上、相当な範囲、つまり再募集にかかるコスト(募集費+空室期間の家賃+原状回復費)と比べて合理的な金額に収めておけば、否認リスクは下がります。
2.「キャッシュバック」に該当するの?
「これはキャッシュバックでは? 景品表示法に引っかからないか」と心配される方もいます。
まず、景品表示法では「謝礼」「お礼」「キャッシュバック」といった名前では判断されません。
中身で判断されます。
そのうえで、現金のキャッシュバック(事後的な割戻し)は、原則として「値引き」として扱われ、景品規制の対象外です。
ですので、
・現金で
・条件を満たす入居者全員に(抽選ではなく)
・支払った賃料の総額を下回る額で
渡す限り、これは実質的な「値引き(割戻し)」であり、景品規制はかかりません。
逆に、次のようなやり方をすると「値引き」と認められず、景品扱い(規制対象)になってしまうので注意してください。
・抽選やくじで対象者を決める → 懸賞景品(不動産では限度額10万円)
・QUOカードや商品券など現物で渡す → 使途が限られ、総付景品になりうる
・賃料総額を超える額を割り戻す → そもそも値引きと認められない
なお、自分の物件を貸す大家さんは宅建業者ではないため、不動産業界の景品規約の直接の対象ではありません。
ただし、一般の景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)における「事業者」は「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」と定義されており、賃貸業を営む個人大家も景品表示法の「事業者」として同法の適用を受ける可能性があります。
それでも、上記の「現金・全員・賃料総額の範囲内」を守っておけば問題ありません。
3.受け取った入居者側はどうなる?
もらった入居者側の謝礼金は、入居者の方にとっては「一時所得」になる可能性があります。
ただし一時所得には50万円の特別控除があるため、少額であれば税金が出ないことがほとんどです。
また、この種の謝礼金は源泉徴収の対象にもなりませんので、大家さん側で天引きをする必要はありません。
2026/10/02
東京に仕事を求めてやってくる単身者増加中…不動産投資は、立地で決まる
回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士