不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

自宅を法人に売却して社宅にしたい。相続税の影響は?

個人所有する自宅を法人に売却して、社宅にすることで減価償却費の経費を法人に計上したいと考えています。

この場合の個人側の相続税にもメリットはありますか?

法人売却は節税より相続税負担増に注意

相続税のメリットはほぼ期待できないどころか、相続税が上がる可能性があります。

(1)不動産の評価減が失われる

個人所有の不動産は、相続税評価額が時価より低くなることが一般的です(路線価方式や固定資産税評価額が適用されるため)。

一方、法人に売却して現金化すると、現金は常に額面通り100%の評価となります。そのため、相続税評価額が実質的に増加し、結果的に相続税が高くなるリスクがあります。

不動産を売却して得た現金は評価減がない資産であり、相続税の課税対象額を押し上げる要因となります。

相続税対策からすると、「評価の低い不動産」から「評価の高い現金」に替える行為になります。
通常の相続税対策とは逆の対策になっているということです。

(2)小規模宅地等の特例が使えなくなる

個人所有の自宅であれば、相続時に「小規模宅地等の特例」を適用し、土地の評価額を大幅に減額(最大80%減額)することが可能です。

しかし、自宅を法人に売却すると所有者が法人になるため、この特例は適用できなくなります。
これにより、相続税評価額が大幅に増加する可能性があります。

(3)法人株式の評価増加のリスク

法人に売却した不動産は法人の資産となり、オーナーが保有する法人株式の評価額が上がり、相続税の課税対象額が増える可能性があります。

とくに法人が不動産を取得後3年以内は不動産は時価で評価されるため、短期的には評価額が増加するリスクが高いです。

また、会社が保有する土地比率が上がることで「特定土地保有会社」に該当する可能性があります。
「特定土地保有会社」に該当すると、株価評価において類似業種比準価額が使えなくなることになり、大幅に株価評価が高くなることがあります。

(4)まとめ

このスキームは、相続税対策としての効果を期待するのではなく、法人側の節税効果(減価償却費の計上など)を期待したものです。

法人税の減額効果と相続税の影響を踏まえて、実行するかどうかの判断をするようにしてください。

2025/10/17

不動産投資は、立地で決まる。人口動向や賃貸需要に合わせた「新築一棟投資法」とは

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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