法人化のメリットとデメリットを教えて
不動産貸付個人事業主ですが法人にする場合のメリット、デメリットはどんなものでしょう
以前の税務相談で「年収1,000万円位では個人の方が良い」と言われたのですが、実際はどうなのでしょうか?
所得800万円以上なら法人化の節税効果が期待大。ただし運営コストや社会保険の負担に注意。
1.法人化によるメリット
(1)税率が低い
法人の税率は実効税率で 800万円以下:23%前後/800万円超:34%前後。
個人は 所得330万円超で30%超になるため、所得が増えるほど法人が有利です。
(2)家族や本人に給与を支払える
法人は役員報酬や家族への給与を経費計上でき、給与を受け取った側は給与所得控除が受けられます。
(3)赤字の繰越が長い
個人:3年、法人:10年まで赤字の繰越が可能です。
(4)経費にできる範囲が広がる
法人では業務関連の支出は原則すべて経費に。個人では家事費とされやすい支出も含まれる場合があります。
(5)相続税対策になる
法人に収益を移すことで、個人に現預金が集中するのを防ぎ、相続税の対象資産を抑えることができます。
(6)認知症対策にも有効
法人に賃貸物件を移せば、本人に代わって代表者を変更することで賃貸経営を継続可能。将来の判断能力低下に備えられます。
2.法人化によるデメリット
(1)赤字でも税金がかかる
法人は赤字でも住民税の均等割(年7万円程度)が必ず発生します(地域により異なる)。
(2)運営コストがかかる
法人税の申告は税理士への依頼が一般的で、費用も発生。ただしプロの助言が得られる点はメリットでもあります。
(3)社会保険への加入が義務
法人代表は原則社会保険加入が必須。
給与の支払い設計により保険加入義務を回避することも可能ですが、国保より保険料が抑えられる場合もあります。
▼ 法人化を検討する際のポイント
- 課税所得が800万円以上あるなら、節税効果が大きくなる傾向
- 相続・認知症対策としての法人化も有効
- 目的を明確にし、コストとのバランスを考えることが重要
2025/08/08
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回答者渡邊 浩滋
税理士・司法書士