不動産投資のQA

これって経費になるの、ならないの?確定申告する場合の項目はなに?そんな疑問に大家専門の税理士がお答えします。

法人設立。自宅の一部を法人事務所に利用。経費にできる?

法人を設立して不動産を購入しました。
自宅の一部を法人の事務所として使用させる場合、自宅の一部を経費にすることは可能でしょうか?
自宅は住宅ローンが残っていて、住宅ローン控除を受けています。

住宅ローンが残っているため、金融機関に対して良いか悪いかは別として自宅の一部を法人の事務所に使用させることは可能です。

この場合、法人に賃貸して、その賃料を個人が受け取るということになります。

個人は、家賃収入を計上し、賃貸している部分に対応する減価償却、利息、固定資産税などの経費を計上し、利益を不動産所得として課税を受けることになります。

個人の税率が高い方はメリットがない可能性があります。

家賃を低く設定すれば、個人の不動産所得を低くすることは可能ですが、個人の経費としてのメリットはありません。

法人は支払った家賃収入を経費計上することが可能です。

つまり、個人に家賃収入を支払うということは、法人の節税になるのであり、個人の節税にはならないということになります。
(法人から個人に資金を移動したいなどの場合には有効です)

一方、住宅ローン控除を適用しているとのことですが、住宅ローン控除は自宅に使用していることから控除が受けられるものになります。

自宅の一部を賃貸にすることで、住宅ローン控除が賃貸にする部分の金額が削られることになります。

具体的には次の通り計算します。
(対価の額or残債)×居住割合(※)=控除額(上限あり)

※居住割合90%以上の場合は100%してよいため、賃貸部分を10%以下にすれば影響ないが、効果も低く、申告の手間が増える。

つまり、『法人の経費による節税』『個人の住宅ローン控除による節税』を比較しての有利不利で判断する必要があります。

法人の税率は利益800万円以下であれば、約24%程度なので、住宅ローン控除を取った方がよいケースが多いと思われます。

なお、住宅ローンの残債がローン控除の上限額を上回っているなど、ローン控除がされていない部分があれば、一部賃貸してもローン控除に影響しない可能性があります。

また、自宅の一部を賃貸することによって、売却した場合の3,000万円控除が一部適用されないなどの弊害も考えられます。
(居住割合90%以上なら影響なし)

以上から、自宅の一部を賃貸することは慎重に考えられた方がよいでしょう。

2023/07/21

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渡邊 浩滋

税理士・司法書士

渡邊 浩滋

税理士・司法書士

経営難だった実家のアパート経営を大きく改善し、大家さん専門の税理士事務所を設立。北海道から沖縄まで幅広く相談を受ける。セミナー、出版、連載など多方面で活躍。専門税理士ネットワーク『knees』メンバー。

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